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ざまぁの前哨戦

11-15 ゴーサインが出ました。

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    その会場に足を踏み入れて。
    そこに居並ぶ面子を前に私が思ったことは。
     ――ああ、本当に異世界なんだなぁ、と。そのバラエティーに富んだ人々を見て思う。
     とうに理解していたはずの事実。
     だけど、沢山ある国の内のほんの数ヵ国巡っただけの私の目に今映る光景は、改めてそれを突き付けてくる。
    地球ではあり得ない面々がぐるりと並び、私を見下ろしてくる構図に心臓がキュッとなるけど、それをひた隠し強がって彼らを見返す。一月かけた準備を無駄にしないために。
    私を見下ろす者の中には、私の首筋に残るイマルの牙の痕を見つけて、その意味合いを知るのか不愉快そうな顔になる者と、それを知らないのか哀れみの目を向ける者も居る。――無反応の者も。
    ただ、多くの者が私を「欲しい」と思っている。それが彼らの眼差しに強く表れていて……。
    その欲に満ちた視線を怖い、と感じた。彼らが欲しているのが「私」ではなく「聖女」なのだと分かってしまうから。
    牙の痕の意味を知る者が不愉快そうなのは、既にイマルのものとされていることが不満で、だから彼らは隣に立つイマルに憎々し気な目を向けている。
    ……私、早々に覚悟を決めておいて本当に良かったと思う。イマルとの婚約を拒んでいれば、私はたちまち彼らに食い付かれていただろう。今、イマルからの求愛が私を守る盾になっている。それが分かるから。
    ……あの後、既に三~四回は求愛を受けている。
    二回目からは一回目程では確かに無くなったけど……王様の見立てではまだ足りないらしい。毎回私だけ何ともなくて、イマルにばっかり負担をかけている様で申し訳なくなるんだよ、あれ……。
    でも、以外と私達の参加はあっさり認められた。それより紛糾したのは事後の私の所属と扱いについてだった。
    矢面に立たされたのは、私と婚約したイマル。……と言うか王様、明らかにイマルに丸投げしたよね!?
    「……皆様。私は、自ら望んでこの立場を選んだのです。私は、過去の聖女について学び、彼女達の行く末について知り、その上でこの未来を望んだのです。……私に聖女の仕事を望むなら、無理の無い範囲で出張するのは構いません。ですが、せめて私生活については私の好きにさせていただけないでしょうか」
    だから。
    私は、彼らに訴える。
    「それに、聖女はもう一人いらっしゃいます。この世界に来てまだまともに聖女の役を果たしていない私と違い、ヘルナイト王国の意図とはいえ既に各地で聖女としての実績をあげている彼女。……直接の知り合いではありませんが、同郷の者として、彼女の今後は私も気になります。あなた方が彼女についてどの様な考えを持つのか、差し支えなければ教えていただけないでしょうか?」
    ……そう言ったら。
    話し合いはようやく事後のヘルナイト王国の扱いと合わせてあの子の事についての話に主題が移り。
    最終的に、各国ヘルナイト王国への制裁決議案を可決。ヘルナイト王国と国境を接する国が主に軍を出し、その他の国は資金や物資の援助をする事で貢献し、周辺国は土地を、その他の国は賠償金を得ることで同意。
    王や国の重鎮達は余さず国際裁判にかけ――る前に私達に機会をくれる様だ。
    その面子には勇者パーティーご一行も含まれる。
    ――これで、ざまぁの準備はあらかた整った。
    決行日はまた一月後。
    ……いよいよ、待ち望んだ時が、来る。
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