上 下
115 / 192
ざまぁの前哨戦

11-13 前途多難?

しおりを挟む
    「え、ちょ、イマル!?」
    いつも飄々としている人なのに。突然こんな……。それもタイミングが……私の血を口にした直後にコレとか……何、私の血は毒物ですか!?
    「騒ぐな。覚悟はしていたつもりだったが……。思った以上にキツいな、これは」
    強がりを多分に含んだ自嘲の笑みを浮かべたイマルが呻く。
    「……俺が人間の血を口にしたのはコレが初めてだ。吸血鬼にとって人間の血は強い酒や興奮剤みたいなもんだ。……耐性の低い〝モドキ〟の身体でこれを抑え耐えきるには苦痛を伴う。……話には聞いていたんだがな」
    ……つまり自分の許容量を越えて酔っぱらってるみたいなもん、て事?
    「え、それ大丈夫なの?」
    例えばアルコール中毒のような明らかな健康被害とかあったら大変だ。
    「……問題ない」
    何か凄い苦しそうなんだけど……本当に大丈夫なんだろうか?
    けど、イマルはゆっくり寝台から身を起こし、立ち上がる。
     「戻るぞ」
    寝室を出て続きの間を突っ切り執務室へ戻れば、皆揃って優雅にお茶を飲んでいた。
    「……戻ったか。キツそうだな?」
    「まぁ、分かっていた事ですから。この程度の苦痛、あの外道から受けた仕打ちを思えばどうって事ありませんよ」
    「でも、求愛の段階でこれでは……。本番は大丈夫ですの?」
    「何、その本番で大丈夫なように求愛するのだからな、……回数は必要だろうが大丈夫だろ」
    「……え?」
    「今回の場合嫁候補が人間だからイマルが一方的に求愛してるが、本来なら双方で求愛し合うもんだ。そうして互いの血に慣れるって意味合いもあるのさ」
    ……飲んで慣れろの理論がアルハラ扱いされる様になったばかりの日本出身の私的には少しだけ「それってどうなの」と思うところもあるけど。
    毒に耐性付ける、ってまぁ無い話じゃないか。
    「あれ、でも私……人間のままでいいの?」
    「んー、そうだなぁ。政略的には別に人間のままでも聖女は価値があるからな。しかし王としての意見としては子を作って次代に政略を繋ぐなら同胞となってからが望ましいと考える」
     「……それは、どのタイミングで?」
     「この様子じゃぁまだしばらくかかりそうだしな。ヘルナイト王国の一件が片付いてからで良いだろ」
    と、王様は軽~く言ってくれちゃってるけど。
    ……当分はイマルのが大変そうだけど。私にとっても一大事だよ!
    でも流石にこれだけ具合の悪そうなイマルを捕まえて追及も出来なくて。
    「今はそれより先に国際会議に向けて対策練ろうや」
    ……具合悪いなら寝てろって言いたいけど、王様がそんな無茶振りするもんだから、イマルは執務机に向かい資料の山を手に仕事を始めてしまう。
    これは……。早々に吸血鬼のあれやこれやについて学ぶ必要がありそうだ。
   「王様、この城に書庫は?」
   「勿論あるぞ」
   「では、入室と閲覧の許可を下さい」
   「構わないが、あまり一人で城内を歩き回るのは危険だ。必ず都度イマルの承認を受けてから行け」
  「ありがとうございます」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【第一部完結】無能呼ばわりされてパーティーを追放された俺だが、《神の力》解放により、《無敵の大魔導師》になっちゃいました。

マツヤマユタカ
ファンタジー
『アイテムコピー』という外れスキル持ちのアリオン=レイスは他には一切魔法が使えず、 14歳という年齢的にも非力であったため、冒険者パーティーには中々入れなかったが、 なんとか受け入れてくれるパーティーに巡り会うことが出来た。 だがそのパーティーリーダー、ゲイスの目的は別にあった。 それはアリオンの『アイテムコピー』の能力を悪用し、金貨や宝石をコピーさせて大もうけしようと いうものであった。 だがアリオンはそれを頑なに拒絶する。そのため日々パーティーの仲間たちにいじめられ続けていた。 だがある時、ついに痺れを切らしたゲイスによって上級ダンジョンに取り残されるアリオン。 絶体絶命の窮地を救ってくれたのは、美しき剣聖レイナ=ベルンと静かなる賢者ネルヴァ=ロキの二人であった。 彼らはたちまちアリオンの身体から流れる強大な神の力を感じ取る。 そしてアリオンの能力を解放するのだった。 それによってアリオンは上位スキル『能力コピー』を手に入れる。 このスキルはどのような魔法や、魔物の能力でさえもコピーしてしまうというとんでもない能力であった。 アリオンは上級ダンジョンをレイナたちと共にクリアしていく過程で、様々な魔物たちの能力を手に入れていく。 そして無敵の大魔導師へと成長を遂げるのであった。 一方アリオンを追放したゲイス一味は、強大な存在となったアリオンによって痛い目に遭わされたにもかかわらず、まったく改心することなく恨みを持ったがために、どんどんと没落していくのであった……。 小説家になろう様でも《『アイテムコピー』という外れスキル持ちでパーティーを追放された俺だが《 神の力》を解放したことで上位スキル『能力コピー』となり、 どんな強大な魔法もコピーしまくり《無敵の大魔導師》になっちゃいました。》というタイトルで投稿し、 ブックマーク登録2000以上、評価ポイント平均4・5をいただいております。 是非とも一度、ご覧ください。

パーティーを追放された落ちこぼれ死霊術士だけど、五百年前に死んだ最強の女勇者(18)に憑依されて最強になった件

九葉ユーキ
ファンタジー
クラウス・アイゼンシュタイン、二十五歳、C級冒険者。滅んだとされる死霊術士の末裔だ。 勇者パーティーに「荷物持ち」として雇われていた彼は、突然パーティーを追放されてしまう。 S級モンスターがうろつく危険な場所に取り残され、途方に暮れるクラウス。 そんな彼に救いの手を差しのべたのは、五百年前の勇者親子の霊魂だった。 五百年前に不慮の死を遂げたという勇者親子の霊は、その地で自分たちの意志を継いでくれる死霊術士を待ち続けていたのだった。 魔王討伐を手伝うという条件で、クラウスは最強の女勇者リリスをその身に憑依させることになる。 S級モンスターを瞬殺できるほどの強さを手に入れたクラウスはどうなってしまうのか!? 「凄いのは俺じゃなくて、リリスなんだけどなぁ」 落ちこぼれ死霊術士と最強の美少女勇者(幽霊)のコンビが織りなす「死霊術」ファンタジー、開幕!

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

え?私、最強なんですか?~チートあるけど自由気ままに過ごしたい~

猫野 狗狼
ファンタジー
神様の手違いで転生してしまう主人公ナナキ、ちょっとボケた神様はステータスすらとんでもないことにしちゃって…!?ナナキの所に神様やら聖獣やら精霊王やら集まってくるけど、周りの人達のおかげで今日も今日とて元気に暮らせます。そして、自分からやらかすナナキだけどほとんど無自覚にやっています。そんな女の子が主人公の話です。 表紙は、左上がハデス、真ん中がナナキ、右上がゼウス、ナナキの隣がアポロ、右下がヘファイストスです。 ド素人な私が描いた絵なので下手だと思いますが、こんな感じのキャラクターなんだとイメージして頂けたら幸いです。他の人達も描きたかったのですが、入りきりませんでした。すいません。 稚拙ですが、楽しんでもらえたら嬉しいです。 お気に入り700人突破!ありがとうございます。

世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する

平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。 しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。 だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。 そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。

ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜

望月かれん
ファンタジー
 中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。 戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。 暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。  疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。 なんと、ぬいぐるみが喋っていた。 しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。     天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。  ※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。

とんでもないモノを招いてしまった~聖女は召喚した世界で遊ぶ~

こもろう
ファンタジー
ストルト王国が国内に発生する瘴気を浄化させるために異世界から聖女を召喚した。 召喚されたのは二人の少女。一人は朗らかな美少女。もう一人は陰気な不細工少女。 美少女にのみ浄化の力があったため、不細工な方の少女は王宮から追い出してしまう。 そして美少女を懐柔しようとするが……

処理中です...