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ざまぁの前哨戦
11-13 前途多難?
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「え、ちょ、イマル!?」
いつも飄々としている人なのに。突然こんな……。それもタイミングが……私の血を口にした直後にコレとか……何、私の血は毒物ですか!?
「騒ぐな。覚悟はしていたつもりだったが……。思った以上にキツいな、これは」
強がりを多分に含んだ自嘲の笑みを浮かべたイマルが呻く。
「……俺が人間の血を口にしたのはコレが初めてだ。吸血鬼にとって人間の血は強い酒や興奮剤みたいなもんだ。……耐性の低い〝モドキ〟の身体でこれを抑え耐えきるには苦痛を伴う。……話には聞いていたんだがな」
……つまり自分の許容量を越えて酔っぱらってるみたいなもん、て事?
「え、それ大丈夫なの?」
例えばアルコール中毒のような明らかな健康被害とかあったら大変だ。
「……問題ない」
何か凄い苦しそうなんだけど……本当に大丈夫なんだろうか?
けど、イマルはゆっくり寝台から身を起こし、立ち上がる。
「戻るぞ」
寝室を出て続きの間を突っ切り執務室へ戻れば、皆揃って優雅にお茶を飲んでいた。
「……戻ったか。キツそうだな?」
「まぁ、分かっていた事ですから。この程度の苦痛、あの外道から受けた仕打ちを思えばどうって事ありませんよ」
「でも、求愛の段階でこれでは……。本番は大丈夫ですの?」
「何、その本番で大丈夫なように求愛するのだからな、……回数は必要だろうが大丈夫だろ」
「……え?」
「今回の場合嫁候補が人間だからイマルが一方的に求愛してるが、本来なら双方で求愛し合うもんだ。そうして互いの血に慣れるって意味合いもあるのさ」
……飲んで慣れろの理論がアルハラ扱いされる様になったばかりの日本出身の私的には少しだけ「それってどうなの」と思うところもあるけど。
毒に耐性付ける、ってまぁ無い話じゃないか。
「あれ、でも私……人間のままでいいの?」
「んー、そうだなぁ。政略的には別に人間のままでも聖女は価値があるからな。しかし王としての意見としては子を作って次代に政略を繋ぐなら同胞となってからが望ましいと考える」
「……それは、どのタイミングで?」
「この様子じゃぁまだしばらくかかりそうだしな。ヘルナイト王国の一件が片付いてからで良いだろ」
と、王様は軽~く言ってくれちゃってるけど。
……当分はイマルのが大変そうだけど。私にとっても一大事だよ!
でも流石にこれだけ具合の悪そうなイマルを捕まえて追及も出来なくて。
「今はそれより先に国際会議に向けて対策練ろうや」
……具合悪いなら寝てろって言いたいけど、王様がそんな無茶振りするもんだから、イマルは執務机に向かい資料の山を手に仕事を始めてしまう。
これは……。早々に吸血鬼のあれやこれやについて学ぶ必要がありそうだ。
「王様、この城に書庫は?」
「勿論あるぞ」
「では、入室と閲覧の許可を下さい」
「構わないが、あまり一人で城内を歩き回るのは危険だ。必ず都度イマルの承認を受けてから行け」
「ありがとうございます」
いつも飄々としている人なのに。突然こんな……。それもタイミングが……私の血を口にした直後にコレとか……何、私の血は毒物ですか!?
「騒ぐな。覚悟はしていたつもりだったが……。思った以上にキツいな、これは」
強がりを多分に含んだ自嘲の笑みを浮かべたイマルが呻く。
「……俺が人間の血を口にしたのはコレが初めてだ。吸血鬼にとって人間の血は強い酒や興奮剤みたいなもんだ。……耐性の低い〝モドキ〟の身体でこれを抑え耐えきるには苦痛を伴う。……話には聞いていたんだがな」
……つまり自分の許容量を越えて酔っぱらってるみたいなもん、て事?
「え、それ大丈夫なの?」
例えばアルコール中毒のような明らかな健康被害とかあったら大変だ。
「……問題ない」
何か凄い苦しそうなんだけど……本当に大丈夫なんだろうか?
けど、イマルはゆっくり寝台から身を起こし、立ち上がる。
「戻るぞ」
寝室を出て続きの間を突っ切り執務室へ戻れば、皆揃って優雅にお茶を飲んでいた。
「……戻ったか。キツそうだな?」
「まぁ、分かっていた事ですから。この程度の苦痛、あの外道から受けた仕打ちを思えばどうって事ありませんよ」
「でも、求愛の段階でこれでは……。本番は大丈夫ですの?」
「何、その本番で大丈夫なように求愛するのだからな、……回数は必要だろうが大丈夫だろ」
「……え?」
「今回の場合嫁候補が人間だからイマルが一方的に求愛してるが、本来なら双方で求愛し合うもんだ。そうして互いの血に慣れるって意味合いもあるのさ」
……飲んで慣れろの理論がアルハラ扱いされる様になったばかりの日本出身の私的には少しだけ「それってどうなの」と思うところもあるけど。
毒に耐性付ける、ってまぁ無い話じゃないか。
「あれ、でも私……人間のままでいいの?」
「んー、そうだなぁ。政略的には別に人間のままでも聖女は価値があるからな。しかし王としての意見としては子を作って次代に政略を繋ぐなら同胞となってからが望ましいと考える」
「……それは、どのタイミングで?」
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……当分はイマルのが大変そうだけど。私にとっても一大事だよ!
でも流石にこれだけ具合の悪そうなイマルを捕まえて追及も出来なくて。
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「王様、この城に書庫は?」
「勿論あるぞ」
「では、入室と閲覧の許可を下さい」
「構わないが、あまり一人で城内を歩き回るのは危険だ。必ず都度イマルの承認を受けてから行け」
「ありがとうございます」
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