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ざまぁの前哨戦
11-9 抜け駆け
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「この場は国益について話し合う場だ、それについての議論をするのは良いがな。お前達が今口にしているそれがどう国益に関わってくるか一から説明して貰えるか? 我が国の者ではないとはいえ、この世界の者が犯した罪の被害者を前に議論すべき事とは不勉強な為かそうは思えなくてな」
イマルが高い場所から冷たい笑いをたたえて見下ろす。
「……っ、彼女が聖女だというなら有効に活用すべきだ! お前のような〝モドキ〟に任せられるか!」
「ほう? それでお前達の言うどこぞの余り者と女合わせるのが有効活用だと?」
「本気で有効活用するならこの場で居る現役と女合わせ妾として迎えるのが良かろうが、年頃の合うのがほぼ居ない上妾というのは酷かと譲歩しているのだぞ」
「譲歩……ですか。どうやら貴殿方は何か勘違いをなられているようだ」
「何!?」
「貴殿方は彼女が異世界人であるという事実を理解しきれていない様子。彼女がこちらの常識に疎いからと、貴殿方のよく知る無知な貴族令嬢や無学な平民と同等に考えてやしませんか? 彼女がこちらの常識に疎い以上にこちらは彼女の世界の常識に無知であるというのに」
くつくつと笑い、イマルは彼らを見下す。
「彼女が婚姻の話を受けるのは、本の些細な願いを叶えるためであり、それを叶えるのは別に我が国でなくとも構わないこと、それを失念してやしませんか?」
――そう。私達はイマルが居たからまずこの国を頼った。
突然聖女と言い出しても信用されるかどうか分からなかったし。
けど、一度こうして公にされた以上は話が変わってくる。……召喚こそ禁止されたが、聖女が既に居るなら欲しい国はいくらでもあるのだ。
「我が国より好条件を提示されたら聖女は他国へ流れるぞ。何しろこの娘は無学では無い。あちらの世界で既に相当な教育を受け、この世界の初歩的な常識は既に教えてある。それにこの国に来る前にはダクーラに居たそうだ」
つまらない誤魔化しは利かない、と睨みを効かせたイマルは優雅に立ち上がり、段を一段一段ゆっくり降りて来る。
「――彼女が欲しいなら」
ニヤリと笑って私の前まで降りてきたイマルが懐から何かを取り出し私の前に差し出した。
それは片手のひらにちょこんと乗った小箱……。
「この位は用意するべきだろう?」
その蓋をぱかっと開ければ仲には指輪が――
「婚約指輪だ。……この国にはそういう習慣は無いから虫除けの役には立たないが、まあそれなりの物だし威圧くらいは出来るだろう?」
……こんな話、そう言えば旅の途中の道中に何の気なしに喋ったっけ? ってくらい軽く雑談に紛れて自分でもよく覚えてない事をよく覚えていたな、と驚いていると、ひょいと指輪をつまみ上げ、するりと私の指に嵌めたイマルは満足げな顔で居並ぶ貴族達を見上げて笑う。
「悪いが、彼女はウチが貰うぞ」
イマルが高い場所から冷たい笑いをたたえて見下ろす。
「……っ、彼女が聖女だというなら有効に活用すべきだ! お前のような〝モドキ〟に任せられるか!」
「ほう? それでお前達の言うどこぞの余り者と女合わせるのが有効活用だと?」
「本気で有効活用するならこの場で居る現役と女合わせ妾として迎えるのが良かろうが、年頃の合うのがほぼ居ない上妾というのは酷かと譲歩しているのだぞ」
「譲歩……ですか。どうやら貴殿方は何か勘違いをなられているようだ」
「何!?」
「貴殿方は彼女が異世界人であるという事実を理解しきれていない様子。彼女がこちらの常識に疎いからと、貴殿方のよく知る無知な貴族令嬢や無学な平民と同等に考えてやしませんか? 彼女がこちらの常識に疎い以上にこちらは彼女の世界の常識に無知であるというのに」
くつくつと笑い、イマルは彼らを見下す。
「彼女が婚姻の話を受けるのは、本の些細な願いを叶えるためであり、それを叶えるのは別に我が国でなくとも構わないこと、それを失念してやしませんか?」
――そう。私達はイマルが居たからまずこの国を頼った。
突然聖女と言い出しても信用されるかどうか分からなかったし。
けど、一度こうして公にされた以上は話が変わってくる。……召喚こそ禁止されたが、聖女が既に居るなら欲しい国はいくらでもあるのだ。
「我が国より好条件を提示されたら聖女は他国へ流れるぞ。何しろこの娘は無学では無い。あちらの世界で既に相当な教育を受け、この世界の初歩的な常識は既に教えてある。それにこの国に来る前にはダクーラに居たそうだ」
つまらない誤魔化しは利かない、と睨みを効かせたイマルは優雅に立ち上がり、段を一段一段ゆっくり降りて来る。
「――彼女が欲しいなら」
ニヤリと笑って私の前まで降りてきたイマルが懐から何かを取り出し私の前に差し出した。
それは片手のひらにちょこんと乗った小箱……。
「この位は用意するべきだろう?」
その蓋をぱかっと開ければ仲には指輪が――
「婚約指輪だ。……この国にはそういう習慣は無いから虫除けの役には立たないが、まあそれなりの物だし威圧くらいは出来るだろう?」
……こんな話、そう言えば旅の途中の道中に何の気なしに喋ったっけ? ってくらい軽く雑談に紛れて自分でもよく覚えてない事をよく覚えていたな、と驚いていると、ひょいと指輪をつまみ上げ、するりと私の指に嵌めたイマルは満足げな顔で居並ぶ貴族達を見上げて笑う。
「悪いが、彼女はウチが貰うぞ」
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