上 下
109 / 192
ざまぁの前哨戦

11-7 対価は

しおりを挟む
    「――ヒカル殿、でしたかな。いかが致しました?」
    「はい、私に発言のお許しを下さいませんか?」
    私を指した議長はその是非を問うように上を見上げ、宰相――果ては王を見上げた。
    「……無論だ。そなたこそがこの議題における一番の当事者なのだからな。言いたい事の一つや二つあって当然であろう。しかし、我が国の国益を損ねるような発言をすれば我らはそなたを拘束し罰せねばならん。それを踏まえて発言をするが良い」
    「はい。――ありがとうございます」
    王の許可に深く頭を下げ、マナー通りに礼を述べ。
    ちら、とマリーに援護射撃を要請しつつ、会場をぐるりと見渡し、口を開いた。
     「先程申し上げました通り、私はヘルナイト王国に召喚されてきた異世界人です。私が生まれた世界で、特に不自由もなく暮らしていたところを、突然予告も意思確認もなく拐われる様にしてこの世界に呼び出されたのです」
    先日も先程もさらりと流していた「召喚された」事実を詳しく述べ。
    「ですが、私と共にもう一人、私と同じ年頃の女の子が一緒に召喚されました」
    そのもう一人と言うのが今ヘルナイト王国で勇者パーティーと言われる一行と同行している聖女だとも。
    「この世界は、私が元居た世界とは文明レベルも常識も違います。……不思議な事に言語について不自由することはありませんでしたが、当然言葉も文字も私が元居た世界とは違う。何もかも違う、何も分からない世界に一人放り出された私を、あの人達はもう忘れ去っているかもしれない」
    あの日。たまたま声をかけたケントが良い人だったから良かったようなものの。ケントに出会うまでのあの、今から思えば短い、けれどあの最中の心細い時間に感じたあの感覚は――もう二度と味わいたくない。
    そんな思いをさせた連中に、思い知らせてやりたいと思うのは当然ではないだろうか? 
    「――私は。あの後でイマル〝様〟の好意で鑑定を受けさせて貰い、私もまた聖女であり、賢者の職能を持つことを知り、今日まで賢者の能力を活かして冒険者として食べてきました。……この願いが、国益という観点から見れば個人的な我が儘になりかねないことも承知で、だからこそ私自身を対価としても、蚊帳の外に放り出さないで欲しいのです」
    私は必死に訴える。
    ひたすら冷静に、論理的になれと自分に言い聞かせないと、必死になりすぎて感情的に訴えかけるばかりになっては良くないと自制しながら言葉を紡ぐのはとても大変で苦しかった。
    ……正直マリーの援護射撃がなければいつ暴走しててもおかしくなかったと思ってる。
    「――まだ、その件に関しては我が国での草案作りにとどまる案件だ。正式には外交会議で決まる事故な。そちら、その会議への同行を許すから、そこで改めてその願いを各国代表に訴えかけると良い。……その件で我らが求める対価は一つ」
    王が、愉快そうに笑みを浮かべ。
    予想通りの条件を提示した。
    「イマル候と婚姻し、我が国に仕えよ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

『完結』孤児で平民の私を嫌う王子が異世界から聖女を召還しましたが…何故か私が溺愛されています?

灰銀猫
恋愛
孤児のルネは聖女の力があると神殿に引き取られ、15歳で聖女の任に付く。それから3年間、国を護る結界のために力を使ってきた。 しかし、彼女の婚約者である第二王子はプライドが無駄に高く、平民で地味なルネを蔑み、よりよい相手を得ようと国王に無断で聖女召喚の儀を行ってしまう。 高貴で美しく強い力を持つ聖女を期待していた王子たちの前に現れたのは、確かに高貴な雰囲気と強い力を持つ美しい方だったが、その方が選んだのは王子ではなくルネで… 平民故に周囲から虐げられながらも、身を削って国のために働いていた少女が、溺愛されて幸せになるお話です。 世界観は独自&色々緩くなっております。 R15は保険です。 他サイトでも掲載しています。

【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました

鈴宮ソラ
ファンタジー
 オラルト伯爵家に生まれたレイは、水色の髪と瞳という非凡な容姿をしていた。あまりに両親に似ていないため両親は彼女を幼い頃から不気味だと虐待しつづける。  レイは考える事をやめた。辛いだけだから、苦しいだけだから。心を閉ざしてしまった。    十数年後。法官として勤めるエメリック公爵によって伯爵の罪は暴かれた。そして公爵はレイの並外れた才能を見抜き、言うのだった。 「私の娘になってください。」 と。  養女として迎えられたレイは家族のあたたかさを知り、貴族の世界で成長していく。 前題 公爵家の養子になりました~最強の氷魔法まで授かっていたようです~

聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】

青緑
ファンタジー
 聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。 ——————————————— 物語内のノーラとデイジーは同一人物です。 王都の小話は追記予定。 修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。

追放された聖女の悠々自適な側室ライフ

白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」 平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。 そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。 そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。 「王太子殿下の仰せに従います」 (やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや) 表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。 今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。 マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃 聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。

聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。 「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」 と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。

処理中です...