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ざまぁの前哨戦

11-5 勝利条件

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    イマルが寄越してくれた山の様な資料と格闘して半日。そこから議論を重ねること約二日。徹夜明けは頭の回転が悪くなると、最終日は早めに就寝したけど。
    ……うん。大学受験なんて修羅場の内に入らないね!
    ――なんて言いたくなるくらいにはハードな日々でした。ケントは最後の方とかもうマジ泣きで「すいません、すいません」しか言えなくなってた。
    無理もないと思う。日本で高校程度の教育を受けた私でも一杯一杯なのに、ケントはつい先日ダクーラで初等教育程度――日本で言えば小学校の低~中学年程度の知識をさらっと教わった程度なんだから。
    むしろよく投げ出さずに最後まで食いついてきたものだと感心こそすれ馬鹿になんか出来ない。
    ……そのくらい、マリーの鬼気迫る様子は凄かった。
    突然自分勝手な理由で異世界に拐われてきて、なのに身ぐるみ剥がされ何のサポートも無いまま棄てられた私だって憤りは大きいはずだったのに。
    だから。比喩で無しに、今王城へ向かう馬車に乗り込むマリーが、戦場に赴く兵士のように見えて。
    「あのっ、……一番戦力になりそうにない俺がこんなこと言っても……って思うけど。でも――」
    そんなマリーにケントもまた決死の覚悟で紐無しバンジーに挑む人みたいな顔して声をかける。
    「この三日でやれる事は全部やって準備したんです。なら、その範囲でやれるだけやって、それで得られる成果で満足しましょう。……難しい事は分からないけど、冒険者として考えたなら。必要な対策もせずに強敵に挑んで痛い目にあうのは自業自得ですが。万全な準備を整え挑んでも、それを越えた成果を望めば痛いしっぺ返しがあるものと相場は決まってますから」
    少し固くて不自然な、不器用な笑みを浮かべて見せて。
    「マリー、今回の件で一番に通したい案件はなんですか?」
    「……今回の件に関わった連中に公にその罪を晒してその首を総取っえする事よ!」
    「ヒカルは?」
    「王様や、あの時私を見捨てた連中をぶん殴――っても私の手が痛むだけだし。ちょっと魔法でお仕置きしたい。……必要なら、聖女としても働くよ」
    「うん、だったらまずはその条件を勝ち取ろう。あとはおまけが付いてくればラッキーと思おう」
    「ケントは……宜しいんですの?」
    「俺は二人に比べれば個人的な因縁だし、むしろ下手すれば勇者パーティーより俺の故郷の村の人間のが問題だった気もするし。第一職業は無職でも第二職は――なんて俺みたいなパターンの救済とかは今回の件とはまた別件だろ?」
    だから、ヒカルに便乗してアイツをぶん殴れればそれでいい、と。今度はへらっと軽く笑った。
    ――そうして馬車に揺られることしばらく。
    私達は、いつもとは趣の違うある種の戦場へ足を踏み入れた。
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