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魔族の国

10-4 謁見の前に

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    イマルが同行してくれているお陰で顔パスで通された門。前回はここで馬車が待っていて城まで全て顔パスで魔王の部屋に通されたけど。流石に正式な謁見には正式な手続きが必要で、それには数日かかるらしい。
   「なら、宿を探さないと……。イマル、お勧めの宿を紹介してよ」
    前回はイマルの執務室の続きの間で寝る羽目になったけど、ケントやマリーまで居る上数日かかるらしいとなれば勿論寝床が要る。
    そう考えての発言だったつもり……だったんだけどね。
    「あら、イマルはこの国の貴族で城勤めなのでしょう?    ならば王都に屋敷の一つや二つは当然あるはずですわ。それも侯爵という王族と血縁関係に無い貴族としては最高位の爵位を有しているならば、私達三人を泊める部屋くらい用意できますわよね?」
    マリーは何を言っているのか、と不思議そうにこちらを見ながら、さも当然とばかりにイマルに笑顔で問いかけの体で「泊めろ」と要求する。
    ケントは「え、え?」と戸惑っているから、私の考えが非常識という訳ではないはず……。
    「ああ、寝床と食事だけいただければ私達の事は気にせずともよろしくてよ。あなたに暇があるなら明日にでもヒカルと街歩きでもなさったらいかが?」
    おほほほほ、とわざとらしく笑うマリーは……ちょっとだけ悪役令嬢に見えたよ。後が怖いから言わないけど。
    「……俺の屋敷はここから少し遠い。それに客を迎える支度はしていないからな、今夜は間に合わせの部屋と食事しか用意できないがそれでも良いのか?」
    「まあ、私達は冒険者ですのよ?    それが愚問であるとあなたなら分かっていると思ったのですけど……。冒険者稼業を離れ貴族の生活に慣れすぎましたか?」
    「まさか。……必死に取り繕ってはいても結局俺は元村人の冒険者だ。夜会に行く度に砂漠に連れてこられた蜥蜴人ザルマになった気分になるからな。その点については改めて感心するよ、元伯爵令嬢マリー。生粋のお嬢様が冒険者生活にこうも馴染んでいるんだからな」
    「いえ。生粋の貴族だった私でも、貴族同士の迂遠な腹の探り合いや足の引っ張り合いにはよくうんざりしていましたもの。あなたの心労はお察ししますし同情も致します。そのそもそもの原因があの国にある以上、他人事ではありませんしね。ですが、それはそれ。これはこれですわ。さあ、あなたのお屋敷に案内していただけるかしら?」
    「……だそうだが、ケントはそれで良いのか?    このチームの今のリーダーはお前なんだろう?」
    「うえっ!?    お、俺は宿屋で全然問題ない……ですが、宿代が浮くのは有り難いです……」
    「――分かった。なら辻馬車を拾うぞ」
    そして、門近くの広場の車宿り――日本的に言うなら駅ロータリーのタクシー乗り場に相当する場所で馬車を雇い、三十分程。
    王都の中でも郊外と言えるような街の端にあるイマルの屋敷へ到着した。
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