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魔族の国
10-2 アルソレス入国
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「ここが……」
「今のイマルの故国……ですのね」
ようやくたどり着いたアルソレスだけど。
「うん。でも、こないだは王都しか行ってないから、まだあまり着いたって気がしないや。まだここから数日はかかるんでしょ、王都までは」
ここはまだアルソレスの国境で、この辺境から王都まではまだしばらくかかる――はず、だったんだけどね。
国境で入国審査的な簡単な質疑応答に応じると。何故か係員が慌てて上の者に確認を……と数人が慌てて中へと駆けていき。
「どうぞ中へ……」
とやけに丁寧に扱われ、武骨な国境警備の砦の中とは思えない、整えられた貴人用の応接室に通されて。
「ど、どういう事?」
「俺たちなんかまずい事したっけ?」
ケントと私でそわそわし、マリーも怪訝な様子でふかふかソファーに腰掛け待つことしばし。
扉をノックされ、答えるとすぐに彼が部屋へと入って来た。
「え、何で?」
「――当然だろう。ここは俺の国だ」
「いや、そりゃそうだけど。でも何でこのタイミングでこの場所に居るのかの答えにはなってないでしょ!?」
相変わらず黒に身を包む彼――イマルの返答に私はたまらず突っ込んだ。
確かにレプレイト国からの入国に使われる道はここが一番よく利用されるけど、道は他にもあるし、ましてや国境を接している国はレプレイトだけじゃない。
と言うか、別に国境警備が彼の職務でもあるまいに、何でこんな場所に居るのかがそも疑問だし。
「――俺は、お前が聖女である事も、お前達が勇者パーティーとの因縁を持つ事も知っている。その状況で、俺が何もせず野放しにする阿呆だとでも思っていたと?」
けど、その突っ込みに対しイマルは嫌味なくらいに悠々と余裕の笑みを浮かべつつ不満そうに尋ね返してきた。
あ、これ答え間違えると地獄のお仕置き特訓行きになるやつだ。わー、懐かしくて涙出そうだよ。
「アハハ、ソウデスネ……」
ケントと二人、顔をひきつらせながら笑って誤魔化そうと必死になったけど。
「ふむ。……魔王陛下との謁見の予定を明後日午後に予定している。馬車は後で俺の部下に回収させるから、お前達だけ王都に連れていく。――明日の夜は野宿になる予定だからな。どれだけ成長したのかじっくり試させて貰おうか」
……はい。イマルの目を誤魔化そうなんて百年早かった様で。
でも。
「――望むところだ」
私達はそれが少しだけ楽しみでもあった。
彼と離れてから一年と少し。私達はどれだけイマルに追い付けたのか、試してみたくて仕方ない。そう思う私はもう、完全に女子高生から冒険者へとジョブチェンジしちゃったんだなぁ、としみじみ思う。
取り敢えず出発は明日だと言われ、砦に部屋を用意された。
「それじゃ今日は明日のためにも訓練するか」
ケントの提案で、私達三人は少し離れた森でいつもより少しだけハードな訓練を開始したのだった。
「今のイマルの故国……ですのね」
ようやくたどり着いたアルソレスだけど。
「うん。でも、こないだは王都しか行ってないから、まだあまり着いたって気がしないや。まだここから数日はかかるんでしょ、王都までは」
ここはまだアルソレスの国境で、この辺境から王都まではまだしばらくかかる――はず、だったんだけどね。
国境で入国審査的な簡単な質疑応答に応じると。何故か係員が慌てて上の者に確認を……と数人が慌てて中へと駆けていき。
「どうぞ中へ……」
とやけに丁寧に扱われ、武骨な国境警備の砦の中とは思えない、整えられた貴人用の応接室に通されて。
「ど、どういう事?」
「俺たちなんかまずい事したっけ?」
ケントと私でそわそわし、マリーも怪訝な様子でふかふかソファーに腰掛け待つことしばし。
扉をノックされ、答えるとすぐに彼が部屋へと入って来た。
「え、何で?」
「――当然だろう。ここは俺の国だ」
「いや、そりゃそうだけど。でも何でこのタイミングでこの場所に居るのかの答えにはなってないでしょ!?」
相変わらず黒に身を包む彼――イマルの返答に私はたまらず突っ込んだ。
確かにレプレイト国からの入国に使われる道はここが一番よく利用されるけど、道は他にもあるし、ましてや国境を接している国はレプレイトだけじゃない。
と言うか、別に国境警備が彼の職務でもあるまいに、何でこんな場所に居るのかがそも疑問だし。
「――俺は、お前が聖女である事も、お前達が勇者パーティーとの因縁を持つ事も知っている。その状況で、俺が何もせず野放しにする阿呆だとでも思っていたと?」
けど、その突っ込みに対しイマルは嫌味なくらいに悠々と余裕の笑みを浮かべつつ不満そうに尋ね返してきた。
あ、これ答え間違えると地獄のお仕置き特訓行きになるやつだ。わー、懐かしくて涙出そうだよ。
「アハハ、ソウデスネ……」
ケントと二人、顔をひきつらせながら笑って誤魔化そうと必死になったけど。
「ふむ。……魔王陛下との謁見の予定を明後日午後に予定している。馬車は後で俺の部下に回収させるから、お前達だけ王都に連れていく。――明日の夜は野宿になる予定だからな。どれだけ成長したのかじっくり試させて貰おうか」
……はい。イマルの目を誤魔化そうなんて百年早かった様で。
でも。
「――望むところだ」
私達はそれが少しだけ楽しみでもあった。
彼と離れてから一年と少し。私達はどれだけイマルに追い付けたのか、試してみたくて仕方ない。そう思う私はもう、完全に女子高生から冒険者へとジョブチェンジしちゃったんだなぁ、としみじみ思う。
取り敢えず出発は明日だと言われ、砦に部屋を用意された。
「それじゃ今日は明日のためにも訓練するか」
ケントの提案で、私達三人は少し離れた森でいつもより少しだけハードな訓練を開始したのだった。
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