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学びを求めて

9-5 世界の現状

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    さて。私がこの世界に来る直前まではごく普通の女子高生だった件についてはもう良いだろう。
   ……とはいえ一口に女子高生と言ってもまあ色々居るよね、ってのは現役女子高生だった私もよく知ってるからね……。
    まあ偏差値の高い進学校でもなければ、名前さえ書けば入れるような底辺校でもない。
    ごく平均的なレベルの公立高校で、だいたい平均より少し上位の成績はキープしていた。
    その程度の頭脳しか持たない私が、分厚く小難しい本とひたすら格闘し続ける。――必要にかられての事でなければ途中で居眠りしたくなる様な作業だった。
    勿論一度読んだ内容がつるっと頭に入ってくる……なんて特殊能力は――持ってない……と思いきや。
    いや、持ってなかったんだよ、女子高生だった頃の私は!    持ってたらもっと上の学校行ってたし!
    でも、冒険者として自分の職能を磨いていく中でその能力の一つとして持っていたアーカイブという能力の使いこなし方を知ってから、私は今一番この能力に感謝している。
    学校の定期テストの全教科の全範囲含めた量と比べるまでもない情報量を、これまで通りの能力で頭に詰めようとしたらどれだけの時間が必要になっただろう。
    けど、この能力はあくまで記憶し必要な時に情報を取り出すだけのもの。目にした文字情報や図面をそっくりそのままコピーし名前を付けて保存し、必要な時に検索をかけてヒットしたファイルを開くだけ。
    記された内容を理解するのはまた別個に自分でやらなきゃいけない作業。
    そして、現段階で私が理解したところによると。
    この世界には普通に人間と魔族が存在し、また魔族と総称される中でも何種か種族が存在すること。
    彼らは人間の亜種とされ、その気になれば子が作れる――即ち例えは悪いけど、人間を狼に例えるなら魔族は犬、犬にも各種犬種が存在し、セントバーナードとチワワ位見た目や得意能力が違っても同じ犬であり、狼に比較的近い種族で子も出来る、と言うような間柄らしい。
    ただしこれは生物学的な理論の話で、現実的には各国それぞれ仲良く付き合う間柄の国もあれば犬猿の仲の国もある。
    それはなにも人間同士の話ではなく、魔族同士でも種族が違えば同じように友好的な付き合いをするところも、小競り合いばかりするところもあり、また時代や君主の力量によってもその関係性は移ろい変わるもの。
    そして今の現状は、歴代を通して見れば比較的平和で落ち着いた関係を保つ国々が多いらしいけど。
    ヘルナイト王国はこれまでのイメージ通り魔族を良く思っていない国らしい……というか、全方面に向けてあまりよろしくない態度で接するお偉方のせいで孤立しかけた本気でヤバい国だった。
    民の方は善良な人も多く、民同士のやり取りは辛うじてあるけど、自国に被害が及ぶとなればそれも無くなるだろう。
    ……早々に国を出ようと連れ出してくれたイマルには改めて感謝しなければ。
    そして、そのイマルにあの晩連れていかれた国の王は。
    全部で七つある魔族の国の国主、魔王を総括する立場にある魔王陛下だったらしい。
    「……ヘルナイト王は自殺願望でもあるのかしら」
   そう思わずにはいられない位ありえない。
    国の面積はオーストラリアとニュージーランドを比べる様なもの。
    ヘルナイト王国も気候や国土的にはそれなりに豊かな国になりうるのに、上が無能でろくな収穫が得られず、そこからさらに貴族が無理な搾取をするものだから国力が酷く低い。
    対して魔王の国――名をアルソレスと言うらしい――は、収穫量は平均的だけれど、きちんと土地に合わせた作物を計画的に作らせ、その作物から作れる加工品を利用して雇用を生み出し利を得て富んでいる。
    単純な戦闘能力は――比べるまでもないでしょ?
    ……だからこそ異世界召喚した聖女なんてものに頼ろうとしたんだろうけど。
    でも、聖女ってそんな御大層なものなの……?
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