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新たな旅立ち

7-5 国境を越えて

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    「う、わぁ……!」
    山間を抜け、既に国境は越えているけど、入国審査を行う砦は山を降りた先にあり、峠を越えた今は、目の前に現れた新たな山をぶち抜くトンネルを抜けた所で。
    誰だっけ、有名な文学作家のトンネルを抜けた先は云々ての。
    けど、山の向こうとこちらでこうも景色が変わるのかと素直に感心した。
    山の向こうはネフシールの穀倉地帯と言うだけあって、まだ冬が終わったばかりと言うのに既に何かの芽が規則正しく並んでピョコピョコ生えていた。
    山の中腹から流れ出すいくつもの川は、ヘルナイト王国との国境になっているあの大河へと合流していく。
    水も土の養分も豊富で、山は早くも花を咲かせ始めた木々が山をカラフルに彩っていたのに。
    こちらに流れる川は少なく、土質も岩が多く農作には適さない、下草が唯一の緑という環境だ。
    たまに羊や山羊を追う犬を操る男たちとすれ違うけれど、関所を兼ねているらしい砦意外に村も町も見当たらない。
    「――冒険者か。お前達もダンジョン目当てか?」
    「そりゃ、ダンジョンでお宝が出たって聞いたら俺も一山……って夢見てこその冒険者でしよ?」
    「さあな。おれは養うべき家族が居るんでね、一攫千金の冒険者より毎月確実に支払われる給料のが大事なんだよ」
    「ま、訳ありだからこその冒険者だからな。で、確認は済んだ?    通って良いかい?」
    「ああ。問題なし、行って良いぞ。まあ死なない程度に頑張れや」
    「サンキュー、にーさん♪」
    砦を過ぎ――普通なら馬車で一日で行ける距離内にはあるはずの村も町も、やっぱり見当たらない。
    「そりゃそうだろ?    だってここは遊牧民の国だぜ?    町なんてそれこそ冒険者の為のダンジョン村か王都くらいのもんだ。他は皆移動式のテント暮らしがデフォだからな。ここじゃダンジョン以外に冒険者の出る幕なんざねぇ。この国で戦えねぇのは乳飲み子と足腰立たなくなったご老体くらいのもんだって」 
    つまり、国土的にはモンゴルみたいな国で……。国民の大半が戦える、と。
    「どうしても食事が肉や乳に片寄るからな、平均寿命は他国に比べると低いが、だからと言って貧しい国ではないんだよな」
    この国で生産される加工肉だって特に腸詰め――所謂ソーセージは冒険者や傭兵に好まれ、これを目当てにダンジョンで稼ぐ冒険者が居るくらいだとか。
    「仕事帰りのエールと腸詰め。一度やったら病みつきになるぜ!」
    「……それはまた聞き捨てなりませんね」
    結局、その噂のダンジョン村へは辿り着いたのはそれから一週間後の事。
    私がこの世界に来てちょうど一年が経つ、そのほんの数日前の事だった。
    
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