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急転直下の激震

6-1 年末年始

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    ふと。いい加減見慣れたはずの風景に違和感を覚えた。
    それは、魔道具作りの研修を終えて買い出しの為に広場の市場を彷徨いていて、その光景に感じたものだった。
    元々いつでも人が多くて混雑している場所だけど、今日は尚多く。
    そして陳列されている品にも変化が見られた。
    いつもはバリエーションに満ちた品々を取り揃える店の殆どが、似たような品を取り扱っているのだ。
    「ああ、そう言えばそろそろ年末年始ですものね。今年ももう終わり、雨期が終わればまた夏が来るわ」
    「ああ。そろそろ次を決めるべき時期だな」
    ――ああ。だから既視感があったんだ。似てたんだよね、年末年始の東京上野のアメ横に。
    「この世界で年末年始って何か決まったものを食べる習慣とか、何かするとかそういう風習みたいなのってあるんですか?」
    「いえ?    まあお祝い事ではあるから身の丈にあった贅沢を楽しむ方は多いですけど……」
    「あはは、俺みたいな貧乏村じゃせいぜい秋に作り貯めた漬け物肉の残りの片付けパーティーがせいぜいでしたよ」
    「……この冬はそれなりに稼げたし――ちょっと奮発して良い店に行くか?」
    「やっ、流石にそれはちょっと畏れ多いな~と……」
    「むしろ私は少々庶民的な雰囲気を楽しみたいですわ。ねぇケント、その日は私にお付き合い下さらないかしら?」
   「へ!?    ええっ?」
   「イマルはヒカルを連れて行けば良いのですわ!    この冬、ヒカルさんの成長ぶりは目を見張るものがありましたもの、ご褒美はあって然るべきだと思いますのよ?」
    ふぇ!?    ちょっと不思議に思った事を聞いただけのつもりが!    何でこんな話の流れになった!? 
    「ふふふ、店の選択を誤らないようお気を付けなさいませね?」
    「……忠告、有り難く受け取っておこう」
    あー、これは行くので決定の流れだね……。
    イマルと二人でディナー?
    しかも今回はたまたま小腹が空いたからとかでなく?
    ……それって。今度こそ本当に、マジにアレ――なのでは……?
    ちょ、ケントも何ハッと期待するような目で私を見るの!
    「さあ、ケント!    私達も早速お店のリサーチに参りましょう!」
    「ひぇッ!」
    マリーさんの張り切りように、一転怯えた顔をするケントが強制的に引きずられていく。
    ああ、ドナドナのBGMの幻聴が……。それをイイ笑顔で見送るイマル。
    うん。最近実はそんなに紳士的でもないかもしれないリアクションを度々目撃する瞬間が増えた気がする。
    ちょっと大人気ないと言うか……。
    勿論冒険者としては相変わらず完璧なんだけどね。
    プライベートな部分を見せられるくらいに私達に気を許してくれてるのかもしれないけど。
    何だか……ギャップが……ねぇ……?
    このイマルと二人っきりでディナーとか。私……色々大丈夫かしら……?
    
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