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勇者Side - Spin off - ②
β-2 冒険者生活
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王都を旅立つ日。
また大勢の人達が集まって見送りに来てくれている。
私達パーティーの為に特別に誂えられた大型の綺麗な馬車と、それを引く馬と。
滅多に開かない街の大門を開いてまでの盛大な出立だ。
持て囃されて機嫌も調子も良いパーティーメンバーは大盤振る舞いでファンサービスに励んでいたけど。
そこに居るのが民ばかりで、王は勿論貴族やその関係者すら姿を見せないその見送りが、私には使い捨てられる一発屋芸人みたいに見えて……。
不安が倍増して押し寄せてくる。
「大丈夫ですよ、聖女様! 御身は私共が責任持ってお守り致します故!」
次の町までは丸1日かかるそうで。
スプリングも利いていない、辛うじてソファーの座面は柔らかいけど、すぐにお尻の痛くなる馬車の中、紅一点状態ではそんな不調を訴え出られず……。
道中は魔物も出ず無事今夜の宿に着けたのは不幸中の幸いで。
「明日は冒険者ギルドに参りましょう。民の困り事を解決するのも勇者の務めにございます!」
――と。
翌日、ギルドで沢山の依頼を受け、毎日それを消化する。
依頼がなくなったら次の町へ。
そんな毎日が日常になるまでそう時間はかからなかった。
……でも。これって本当に民の為になっているのかしら?
だって冒険者ギルドに入るだけで迷惑そうに睨まれるのよ? 皆は、これに気付いてないの?
ギルドを出れば確かに少し空気は和らぐけど……。
日を追うごと、町を回るごとに少しずつ冷たくなっていく人々の目。
何が彼らの不興を買っているのか分からない。分からないから、一度聞いてみようとした事があった。
――けど。
パーティーメンバーは、私が彼ら以外と交流を持つ事を快く思わないようで、未だに回答を得られていない。
彼らは私をちやほやしてくれるけど、私はそれだけで舞い上がる程お子ちゃまじゃない。
でも、相変わらずここ以外で生きていける当てなんか無くて。
……だってどの町も王都より遥かに貧しくて、下手すると日本の江戸時代にも劣る環境で一人で暮らせなんて無理だわ!
……本当に、お金だけ持たされて追い出された子はどうしてるんだろう? まだ王都に居るのかな?
まさか王都まで追い出されたなんて事……無いよね?
私が願えば、彼女を探して、雑用係にくらいはして貰えるかもしれないのに。
――私はその提案をできなかった。
もし彼女が私より器用にこの世界に適応していたら。本当に、聖女の肩書きでしか私を見てくれなくなって、彼女をちやほやしかねない男達が信用しきれなくて。
私はそっと彼女が無事に生きている事だけ願って、勇者の旅を続けていた。
また大勢の人達が集まって見送りに来てくれている。
私達パーティーの為に特別に誂えられた大型の綺麗な馬車と、それを引く馬と。
滅多に開かない街の大門を開いてまでの盛大な出立だ。
持て囃されて機嫌も調子も良いパーティーメンバーは大盤振る舞いでファンサービスに励んでいたけど。
そこに居るのが民ばかりで、王は勿論貴族やその関係者すら姿を見せないその見送りが、私には使い捨てられる一発屋芸人みたいに見えて……。
不安が倍増して押し寄せてくる。
「大丈夫ですよ、聖女様! 御身は私共が責任持ってお守り致します故!」
次の町までは丸1日かかるそうで。
スプリングも利いていない、辛うじてソファーの座面は柔らかいけど、すぐにお尻の痛くなる馬車の中、紅一点状態ではそんな不調を訴え出られず……。
道中は魔物も出ず無事今夜の宿に着けたのは不幸中の幸いで。
「明日は冒険者ギルドに参りましょう。民の困り事を解決するのも勇者の務めにございます!」
――と。
翌日、ギルドで沢山の依頼を受け、毎日それを消化する。
依頼がなくなったら次の町へ。
そんな毎日が日常になるまでそう時間はかからなかった。
……でも。これって本当に民の為になっているのかしら?
だって冒険者ギルドに入るだけで迷惑そうに睨まれるのよ? 皆は、これに気付いてないの?
ギルドを出れば確かに少し空気は和らぐけど……。
日を追うごと、町を回るごとに少しずつ冷たくなっていく人々の目。
何が彼らの不興を買っているのか分からない。分からないから、一度聞いてみようとした事があった。
――けど。
パーティーメンバーは、私が彼ら以外と交流を持つ事を快く思わないようで、未だに回答を得られていない。
彼らは私をちやほやしてくれるけど、私はそれだけで舞い上がる程お子ちゃまじゃない。
でも、相変わらずここ以外で生きていける当てなんか無くて。
……だってどの町も王都より遥かに貧しくて、下手すると日本の江戸時代にも劣る環境で一人で暮らせなんて無理だわ!
……本当に、お金だけ持たされて追い出された子はどうしてるんだろう? まだ王都に居るのかな?
まさか王都まで追い出されたなんて事……無いよね?
私が願えば、彼女を探して、雑用係にくらいはして貰えるかもしれないのに。
――私はその提案をできなかった。
もし彼女が私より器用にこの世界に適応していたら。本当に、聖女の肩書きでしか私を見てくれなくなって、彼女をちやほやしかねない男達が信用しきれなくて。
私はそっと彼女が無事に生きている事だけ願って、勇者の旅を続けていた。
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