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ラムレアの街で過ごす冬
5-10 猪は鍋にするに限るのです。
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噂で聞いてそれ相応の想像はしていたけど。
「成る程、これはデカいな」
イマルが感心した声を挙げる。
「ふふふ、食べごたえがありそうで嬉しいですわ!」
ゾウより大きな猪の突進を盾でいなして槍斧を振るい、その前足に傷を刻みながらウキウキとマリーがはしゃぐ。
「ははは、的が大きすぎてッ、逆に詰まらないです!」
ボアの周囲をひたすら駆け回り、左右の横腹に幾度も切りつけダメージを与えるケントとイマルのザルマ。
肉を焦がすと後が怖いので、私はタイミングを計っては脳天目掛けて雷を落とす。
……図体がでかい分頑丈だけど、脳にショックを与えるとしばらく動きが鈍くなる。……しばらく、で済む辺りその頑丈がある意味怖いんだけど。
弱り、動きが緩慢になってきたところで、氷の杭を脳天と胸に打ち込んでジ・エンド。
うん。やっとまともなパーティー戦ができるようになってきた。
「怪我はないみたいだけど、一応回復術かけていいですか?」
「うわぁ、ありがたいです! ……コレを今から解体するんで、体力回復出来たら助かります!」
「うん。……回復! ……どうですか?」
「んー、ちょっと疲れが取れた?」
「やっぱりまだ実戦で使うには足りませんか……」
「――本職は大抵が聖職者なんだ、数日お祈りしただけでそれなら十分頑張ってるよ。気にするな。事実、お前が用意したポーションの効きは確かだったからな」
「ありがとうございます。せっかく一杯お肉が手に入ったから鍋作りますね!」
夜の草原は冷える。暖かい鍋は絶対体に染み渡るよ!
皆が解体作業してるのを横目に調理を始める。
……とはいえ当然ぼたん鍋のレシピなんてなんちゃって知識すらない。
仕方ないから、テレビでみたラーメン屋の豚骨スープを参考に、ざっと水とアルコールで洗った上で火魔法で軽く炙ってやった奴の骨を寸胴でくず野菜やハーブと一緒に煮込んで出汁をとり。塩コショウで味を整えつつ煮詰めていく。
途中臭みが出る前に余計な油は別に避けて、後でゼラチンにしてやろうとこっそり収納にしまう。
スープのかさが良い感じに減ってきたところで鍋を変え、鍋の具材を綺麗に盛り付け、スープを入れる。
後はこのまま煮立てて具材が茹だるのを待つだけ……。
「うわぁー、良い匂いがしますぅ~!」
「ふふふふふ、ヒカルの料理は実家でも食べたことの無い珍しいものばかりなので毎度楽しみなのですよ」
「ありがとうございます。これ、取り皿に少しずつ自分の分を取り分けて食べて下さい」
「……これはスープが旨いな。肉の味が野菜に染みて――。こないだのポトフもそうだが、野菜をこんな風に調理した物は初めて食ったな」
「うう、こんな旨い料理があるって知ってたら故郷のショボい野菜スープももっと美味しくできたのに……」
「はぁ、暖まりますわぁ」
「皆さん、鍋物はここからが本番なんですよ?」
だって、パンがあるなら小麦はあるよね? って探したらやっぱり普通に売ってたから、ちょっとパンには向かないと安く売られていた小麦、試しにちょっと買ってみたら……ふふふ、できちゃったんだよね~。
によによしながら、その秘密兵器を残った鍋スープに投入する。
「麺……ですか?」
「はい。私の故郷でうどんと呼ばれる食べ物です」
「あら、意外と歯応えがありますのね……? でものど越しがよくて……スープと良く合って美味しいですわ!」
うん。自画自賛ながら、久々のうどん、美味しい。
――日本のプロに見せたら憤慨されるレベルのできなのは分かってるけど。やっぱり故郷の味は嬉しいもんだね。
「成る程、これはデカいな」
イマルが感心した声を挙げる。
「ふふふ、食べごたえがありそうで嬉しいですわ!」
ゾウより大きな猪の突進を盾でいなして槍斧を振るい、その前足に傷を刻みながらウキウキとマリーがはしゃぐ。
「ははは、的が大きすぎてッ、逆に詰まらないです!」
ボアの周囲をひたすら駆け回り、左右の横腹に幾度も切りつけダメージを与えるケントとイマルのザルマ。
肉を焦がすと後が怖いので、私はタイミングを計っては脳天目掛けて雷を落とす。
……図体がでかい分頑丈だけど、脳にショックを与えるとしばらく動きが鈍くなる。……しばらく、で済む辺りその頑丈がある意味怖いんだけど。
弱り、動きが緩慢になってきたところで、氷の杭を脳天と胸に打ち込んでジ・エンド。
うん。やっとまともなパーティー戦ができるようになってきた。
「怪我はないみたいだけど、一応回復術かけていいですか?」
「うわぁ、ありがたいです! ……コレを今から解体するんで、体力回復出来たら助かります!」
「うん。……回復! ……どうですか?」
「んー、ちょっと疲れが取れた?」
「やっぱりまだ実戦で使うには足りませんか……」
「――本職は大抵が聖職者なんだ、数日お祈りしただけでそれなら十分頑張ってるよ。気にするな。事実、お前が用意したポーションの効きは確かだったからな」
「ありがとうございます。せっかく一杯お肉が手に入ったから鍋作りますね!」
夜の草原は冷える。暖かい鍋は絶対体に染み渡るよ!
皆が解体作業してるのを横目に調理を始める。
……とはいえ当然ぼたん鍋のレシピなんてなんちゃって知識すらない。
仕方ないから、テレビでみたラーメン屋の豚骨スープを参考に、ざっと水とアルコールで洗った上で火魔法で軽く炙ってやった奴の骨を寸胴でくず野菜やハーブと一緒に煮込んで出汁をとり。塩コショウで味を整えつつ煮詰めていく。
途中臭みが出る前に余計な油は別に避けて、後でゼラチンにしてやろうとこっそり収納にしまう。
スープのかさが良い感じに減ってきたところで鍋を変え、鍋の具材を綺麗に盛り付け、スープを入れる。
後はこのまま煮立てて具材が茹だるのを待つだけ……。
「うわぁー、良い匂いがしますぅ~!」
「ふふふふふ、ヒカルの料理は実家でも食べたことの無い珍しいものばかりなので毎度楽しみなのですよ」
「ありがとうございます。これ、取り皿に少しずつ自分の分を取り分けて食べて下さい」
「……これはスープが旨いな。肉の味が野菜に染みて――。こないだのポトフもそうだが、野菜をこんな風に調理した物は初めて食ったな」
「うう、こんな旨い料理があるって知ってたら故郷のショボい野菜スープももっと美味しくできたのに……」
「はぁ、暖まりますわぁ」
「皆さん、鍋物はここからが本番なんですよ?」
だって、パンがあるなら小麦はあるよね? って探したらやっぱり普通に売ってたから、ちょっとパンには向かないと安く売られていた小麦、試しにちょっと買ってみたら……ふふふ、できちゃったんだよね~。
によによしながら、その秘密兵器を残った鍋スープに投入する。
「麺……ですか?」
「はい。私の故郷でうどんと呼ばれる食べ物です」
「あら、意外と歯応えがありますのね……? でものど越しがよくて……スープと良く合って美味しいですわ!」
うん。自画自賛ながら、久々のうどん、美味しい。
――日本のプロに見せたら憤慨されるレベルのできなのは分かってるけど。やっぱり故郷の味は嬉しいもんだね。
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