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ラムレアの街で過ごす冬

5-3 ラムレアの町

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    物件を決め、荷物を置いて旅装を解いてから、私達は再び町へと繰り出した。
    ――イマルさんからありがたくもお食事係りを任された私だけど、食材がなければ料理も何もなく。
    他、一時とはいえ定住するなら細々した日用品なども必要になる。
    ……つまり買い出しだ。
    今日は町の市場を見て回ろうと、元来た道を戻っている。
    北から東にかけて浅い森が広がり、南から西にかけて平原が広がる中に在るこの街は、東西南北に伸びる街道にあわせて四つの門がある。
    西の門の先の街道が私達が通って来た、港町へ続く道。北へ続く道が農村と鉱山帯に続く道。――途中の町でそれぞれ北西と北東とに道が分かれるそうだけど。
    南に行くと王都、東へ行くと、こちらは海の港町。
    漁港も商業港も軍港も、それぞれに街があって、海岸線沿いに並んでいるらしい。軍港が王都側、中に商業港、鉱山帯側に漁港。
    この内商業港と漁港で取れたものの三分の一分がこの街に流れてくる。
    鉱山帯で採れたものは半分、農村地帯からは三分の一。
    他は自分の土地で消費する分と、直接王都に運ぶ分。
    ――と、そんな事情でこの街に集まる人も物も多い。
    町の中央が広場になっていて、街の大店や各ギルド支部等主要な建物がそこを囲う。
    その広場を通路分の隙間だけ残して、所狭しと並ぶテントの列。
    ――港町に比べれば、上がる声の威勢の良さという点では大人しいけれど、市場の規模は比べ物にならない。食品から日用品は勿論、ありとあらゆるものが揃う。
    故に、声を荒げこそせずとも、そこここで値段交渉の真剣勝負が行われている。
    色々目移りしそうだけど、今日は食品の買い出しがメインだ。
    魚、肉、野菜。
    魚は全て加工品の様だけど、川の魚も海の魚もある。
    肉も種類の違うものが、日本のスーパーで見るような小分けにされないままの枝肉のまま陳列されている。
    野菜や果物、香辛料に至っては籠に山盛りになった色彩豊かな恵みは見ているだけで楽しい……けど。
    「……取りあえず、この辺の物の名前と主な使われ方、教えて下さい」
    パッと見は、日本でも見かけた気のする物もあるにはあるけど……。
   似ているだけで別物の可能性も捨てきれないから。
   今日のところは根菜と葉物野菜を幾つか、それと鳥の肉とパン、香辛料を購入した。
    国境を越えたから、ヘルナイト王国の現金は使えない。ギルドで両替してきた。
    この国の硬貨は全て鉄貨。
    ただし、硬貨ごとにその額面が記されている。
    1ウォル、10ウォル、100ウォル……という具合にね。勿論、ウォルと言うのはこの国のお金の単位だ。
    ジャガイモ、ニンジンに似た根菜と、キャベツみたいな葉物野菜に骨付き鶏肉で、今日はポトフモドキを作ろう。
    大丈夫、余程加減を間違えない限りは食べられないレベルの物は出来ないはずのメニューだし。
    ……ホント、井戸で水汲まなくても水が出るってありがたい。
    日本じゃ当たり前だったことが、涙が出るほどありがたい。
    ――流石のヘルナイトでも桶で組み上げるタイプの井戸ではなくポンプ式の魔道具井戸が普及してたけど。……あれはあれでしんどいんだよ。たまの体験くらいなら面白いかもしれないけど、何をするにも一々くまなきゃいけない面倒くささ。
    ……でも、日本でも昔の人はこれが当たり前だったんだよね。
   現代人に生まれて良かった……かどうかここ最近揺らいでるけど。
   ついでに私に魔力が沢山あることにも感謝しながら水を流して野菜を洗って皮を剥いて下拵え。
   鳥で出汁を取って香辛料を加えたスープに野菜を投入。
   パンを添えて出す。
    「何だ、料理出来るんじゃないか」
    「……未知の食材でどれだけ味が再現出来るか、出来上がりまでは戦々恐々でしたよ」
    「そうか、これがビギナーズラックにならんよう、まあ頑張れ」
    ……あんまり誉められた気はしないけど、きっちり完食して「まあ旨かった」とは言ってくれたから……まあ、良しとしよう。    
    
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