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磨いた結果は自分次第です

4-5 久方ぶりの、至福。

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    このネフシールと言う国。
    内陸に在り山に囲まれる形のヘルナイト王国と違ってこの川の河口からこちら側の国境からはちょうど反対側の国境が海に面しているらしく、交通の要所になるそこがこの国の王都らしい。
    王都へはこの港町から再び船に乗って二日。
    国境の三方を川と海に囲まれたこの国の唯一地続きの国境ラインは幾つか谷間を抜けて行く街道を除いては山々が連なる、農業に適した豊かな土地が広がり――故に、魔物も多く、冒険者が多く集う地でもあるらしい。
    その町へは乗り合い馬車を乗り継いで一月かかる。
    そしてこの港町から一番近い地方都市は王都からも、穀倉地帯からも離れたここは第二次産業が盛んな製造業の町……らしい。
    町の周囲、東西南北全て地平線まで見通せる平原で、ちょっとした野菜や薬草を栽培する農村がちらほら点在し、この港や山合の鉱山から運ばれる物を加工する工房が多く、冒険者の仕事としては家畜を食い荒らすウルフ系モンスターの討伐や、作物を荒らす小動物の駆除に採集依頼が多い。
    「……やはり無難に選ぶならここだろうな」
    馬車で三日かかるその街へ行くと決めた私達は、乗り合い馬車を探しに広場へ向かった。
    「馬車を使うんですか?」
    「ああ。慣れない異国の地だ。土地勘も危ういまま歩き回るのは良くない。先に街で落ち着いたらまた改めて探索に来れば良い」
    広場で街へ行く馬車を尋ねると、明日の朝の出発との事で。
    私達は港でまた一泊する為、宿を取った。
    ここの宿にはこれまでのどの宿にも無かったがあると聞いて私はつい小躍りして喜んだ。
    食事の前にを楽しむべく、男性陣と別れ、マリーさんと離れの小屋への渡り廊下をそそくさと急ぐ。
    「ふふふ、嬉しそうですわね?」
    「う……それは……はい。だって、私が元居た所では毎日入るのが普通だったんです。ここでは贅沢と聞いていたから耐えてましたけど……やっぱりとしてはお風呂と聞いたら入らず済ますなんてあり得ませんから!」
    そう。これまでは追加料金を払ってたらいにお湯を貰い、濡らした手拭いで体を拭くしか無かったのが、ここにお風呂があると聞いて、恥も外聞もなくイマルさんに頼み込んで追加料金を払って貰って得た入浴タイム。
    その代償としてスパルタ訓練が提示されようとも、この誘惑には勝てなかった。
    脱衣室でぽいぽい服を脱ぎ捨て、いざ行かん。
    からりと引き戸を開けると、屋根付き露天風呂がどんと待ち構えていた。
    早速掛け湯で身体を洗い、どぷんと湯船に浸かる。
    ああ~、心と身体に染み渡る至福……。
    「本当にお風呂がお好きなのですね」
    「ええ。私の元居た国では、天然の温泉があちこちにあって、それぞれ健康や美容に効果のあるお湯が湧いて……。それを売りにしたホテルや旅館も沢山あって、美味しいご飯とおもてなしでのんびり日頃の疲れを癒す……。そういう文化のある所だったんです」
    一日二日の事でもキツいのに、ずっと風呂なし生活だったのは自分でも思っていた以上に辛かったみたいだ。
    ……おかげでその晩は、スパルタ講義の後という事もあって夢も見ない程にぐっすり熟睡できたよ、うん。
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