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磨いた結果は自分次第です
4-2 引き抜き話
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「あの……『死角無し』魔物使いのイマルの部屋ってここであってます……?」
控えめなノックの後でそぉーっと扉を開け、隙間から覗きこむ様に顔を出したのは、金髪碧眼と色味こそ違えど、仔犬のような雰囲気がケント君とのキャラ被りする少年。
「……俺は確かに魔物使いのイマルだが、何の用だ?」
「あ、あの、ウチのリーダーが、貴方と話がしたいと。一等室を押さえているので、お招きしたいと」
どうやらパシリに使われたらしい彼はお願いしますとペコペコ必死に頭を下げている。
「悪いが、そういった誘いは受けない事にしているんだ」
が、イマルさんはあっさりきっぱりお断り。
少年は顔色を悪くしながら尚も粘ろうとする。
「あの、良ければそちらの女の子達も……」
「――行かない、と答えたのが聞こえなかったか? お前にも立場やら面子やらがあるのは理解するが、それに斟酌してやる義理はないんでな」
イマルさんが実力行使で部屋から摘まみ出して、しばらくの後。
今度は随分と乱暴なノック――ではなく足蹴にして開けたドアの向こうに先程の少年含む悪役プロレスラーみたいな男達が来訪し。
「おお、すげぇ! これが元貴族のお嬢様か、流石の上玉だな! ……なんだ、もう一人は随分貧弱だが……まあ女は女だしな。おい、お前聞いたぜ、勇者パーティーを首になったヤツが居るって王都じゃ噂になってたからな。それでもこれだけの上玉囲って気が大きくなってるのか? なあ、悪いこたぁ言わねぇからよ、黙ってこの金ランクパーティー『血霧の刃』の仲間になりゃ良いんだよ」
と無茶を喚き散らした。
……うん。やっぱりこの世界の美人基準は現代日本人と大差ないようで。
自分の容姿を貶される分にはもう今さら気にしやしないけど。
「……随分な身の程知らずも居たものね」
自分たちこそ分不相応である自覚はあるけど、でもだからってこんな不躾な輩に失礼な事を言われて黙ってはいられない。
「おほほほほ、――ここが他のお客様もいらっしゃる船の中でなければ、問答無用で黙らせて差し上げましたのに……残念ですわ」
「あーあー、何て事を言ってくれるんですか……。どうなっても自業自得、俺は知りませんからね!」
「……俺はその気はないと言って帰したつもりだったんだがな。どうやら理解力の足らない馬鹿の集いだったか」
ふぅとため息一つ吐いたイマルさんがゆっくりと立ち上がり。
「蒼夢」
彼らを指差しスライムの名を呼ぶ。
ぽんと彼の頭から跳んだ水色の塊が、突如彼らの頭上で弾けるように薄い傘のように彼らをそのボディで包み、そっくり飲み込んでつるんといつものスタイルに戻る。
その隙に喚び出したコウモリのヴァルに指示を出す。
「捨ててこい」
開け放った窓から蒼夢を掴んで飛び出して行く。
……数分後。出てった時と何ら変わり無い様子の蒼夢とヴァルが戻ったけど。
あの人達……どうしたんだろう?
「……あいつらはどうやら王都から最短でここまで来たらしい。どうやら勇者パーティーは王都周辺での訓練を終え、旅を始めたらしい。さっきの奴らは勇者パーティーに美味しい依頼を全部持っていかれるのを危惧して隣国を目指したらしいな」
「……悪くない判断ですわね。思った程には馬鹿じゃなかったのね、あの人達。――けど、勇者パーティーは……分かりませんわね。わざわざこれからの季節に旅など……」
「どうせ町から町へは馬車移動、片っ端から単発依頼を片付けるつもりなんだろう。奴らの個人レベルなら不可能ではないからな。だが……」
イマルさんが私を見て言葉を一瞬躊躇い。
「――聖女が、ヒカルと大差ない娘なのだとしたら……」
語尾を濁した。
「彼女がどんな能力を持っていて、今どれだけ強くなったのかは分かりませんけど、少なくとも元の戦闘経験や野宿の経験、体力なんかも私とそう変わらないはずです」
「……その後の噂が広まりきる前に国を出られるのはありがたいな」
その後、幸いなことに夕食までの間は静かなまま時が過ぎた。
控えめなノックの後でそぉーっと扉を開け、隙間から覗きこむ様に顔を出したのは、金髪碧眼と色味こそ違えど、仔犬のような雰囲気がケント君とのキャラ被りする少年。
「……俺は確かに魔物使いのイマルだが、何の用だ?」
「あ、あの、ウチのリーダーが、貴方と話がしたいと。一等室を押さえているので、お招きしたいと」
どうやらパシリに使われたらしい彼はお願いしますとペコペコ必死に頭を下げている。
「悪いが、そういった誘いは受けない事にしているんだ」
が、イマルさんはあっさりきっぱりお断り。
少年は顔色を悪くしながら尚も粘ろうとする。
「あの、良ければそちらの女の子達も……」
「――行かない、と答えたのが聞こえなかったか? お前にも立場やら面子やらがあるのは理解するが、それに斟酌してやる義理はないんでな」
イマルさんが実力行使で部屋から摘まみ出して、しばらくの後。
今度は随分と乱暴なノック――ではなく足蹴にして開けたドアの向こうに先程の少年含む悪役プロレスラーみたいな男達が来訪し。
「おお、すげぇ! これが元貴族のお嬢様か、流石の上玉だな! ……なんだ、もう一人は随分貧弱だが……まあ女は女だしな。おい、お前聞いたぜ、勇者パーティーを首になったヤツが居るって王都じゃ噂になってたからな。それでもこれだけの上玉囲って気が大きくなってるのか? なあ、悪いこたぁ言わねぇからよ、黙ってこの金ランクパーティー『血霧の刃』の仲間になりゃ良いんだよ」
と無茶を喚き散らした。
……うん。やっぱりこの世界の美人基準は現代日本人と大差ないようで。
自分の容姿を貶される分にはもう今さら気にしやしないけど。
「……随分な身の程知らずも居たものね」
自分たちこそ分不相応である自覚はあるけど、でもだからってこんな不躾な輩に失礼な事を言われて黙ってはいられない。
「おほほほほ、――ここが他のお客様もいらっしゃる船の中でなければ、問答無用で黙らせて差し上げましたのに……残念ですわ」
「あーあー、何て事を言ってくれるんですか……。どうなっても自業自得、俺は知りませんからね!」
「……俺はその気はないと言って帰したつもりだったんだがな。どうやら理解力の足らない馬鹿の集いだったか」
ふぅとため息一つ吐いたイマルさんがゆっくりと立ち上がり。
「蒼夢」
彼らを指差しスライムの名を呼ぶ。
ぽんと彼の頭から跳んだ水色の塊が、突如彼らの頭上で弾けるように薄い傘のように彼らをそのボディで包み、そっくり飲み込んでつるんといつものスタイルに戻る。
その隙に喚び出したコウモリのヴァルに指示を出す。
「捨ててこい」
開け放った窓から蒼夢を掴んで飛び出して行く。
……数分後。出てった時と何ら変わり無い様子の蒼夢とヴァルが戻ったけど。
あの人達……どうしたんだろう?
「……あいつらはどうやら王都から最短でここまで来たらしい。どうやら勇者パーティーは王都周辺での訓練を終え、旅を始めたらしい。さっきの奴らは勇者パーティーに美味しい依頼を全部持っていかれるのを危惧して隣国を目指したらしいな」
「……悪くない判断ですわね。思った程には馬鹿じゃなかったのね、あの人達。――けど、勇者パーティーは……分かりませんわね。わざわざこれからの季節に旅など……」
「どうせ町から町へは馬車移動、片っ端から単発依頼を片付けるつもりなんだろう。奴らの個人レベルなら不可能ではないからな。だが……」
イマルさんが私を見て言葉を一瞬躊躇い。
「――聖女が、ヒカルと大差ない娘なのだとしたら……」
語尾を濁した。
「彼女がどんな能力を持っていて、今どれだけ強くなったのかは分かりませんけど、少なくとも元の戦闘経験や野宿の経験、体力なんかも私とそう変わらないはずです」
「……その後の噂が広まりきる前に国を出られるのはありがたいな」
その後、幸いなことに夕食までの間は静かなまま時が過ぎた。
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