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磨いた結果は自分次第です

4-1 船旅は危険がいっぱい?

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    ガクン、と船が護岸を離れ、いよいよ動き出す。
    輪の半分を水中に埋めるその大きな水車の駆動音は意外と静かなものだったけど、それが巻き起こす水が暴れる音はまた別物の様で、まるで稼働中の洗濯機の側にいるみたい。
    先に汽船のイメージを抱いたこの船、どうやらこの輪を回している動力は魔道具を使っているらしく、煙突の類いは見当たらない。
    帆船のように甲板いっぱい使って帆柱を立てる必用の無いこの船は甲板下の船倉に馬車の車部分を収容している。
    ちなみに馬はあの宿場で売るか船に乗せるかを選べる仕様になっている。船に乗せる場合は車と馬は別料金を支払う必要がある。
    ちなみに、馬は餌や水に清掃代も含めて普通の車一台預けるより高い額を求められるそう。
    だから余程愛着のある愛馬でない限りは港で馬を売り、あちらの港で再び馬を買う方がお財布には優しい。
     で、肝心の私達人間のお部屋は、と言えば。
    甲板を一階と数えて三階建ての客室エリアの内、一階は共同の食堂と居間ロビー、そして三等船室という名の雑魚寝部屋。
二階は二等の六人部屋に四人部屋と二人部屋。三階は二等の個室と一等船室。
    私達は定員と予算と相談の上、四人部屋を選択した。
    「他に逃げ場の無い船の上で女だけで部屋を取るのは無用心だ」
    とは、イマルさんのご意見である。
    船に乗り込むまでは大袈裟な気もしていたその懸念。
    四方を壁に囲まれた街でも不特定多数との接触はままあったから、無警戒ではなかったけど、これまでこうもしつこくじろじろ眺め回される視線に晒された事は無かったから、認識が甘かった。
    船内という広義での密室に不特定多数の人間が詰め込まれた結果、その好奇心は自然と顔と名前の知れたイマルさんに向き、その隣のゴージャス美人なマリーに釘付けになる者、多数。
    これ、マリーさん一人なら間違えたフリして部屋に突撃かます阿呆が出ても驚かないや。……そこに私が居ても牽制にはならないどころか前菜かおまけ扱いされてついでに美味しくいただかれてしまうかも。
    大半は冒険者らしいがたいは良くても清潔感に欠け、顔面偏差値云々の前にオラオラ感丸出しの面構えでは……。
    正直、イマルさんの爪の垢でも煎じて飲んで出直して来いとしか言い様が無い。
    ロビーや食堂に居ると周囲の視線が煩いから、早々に船室に引き上げ引きこもった。
    二段ベッドが左右の両壁に作り付けられ、窓側には小規模ながらバルコニーが付いている。
    ……開けると水音がここまで響くから外に出る気は無いけど。
    港は既に見えなくなって、時折中島が点々とある以外はただ鈍色の水面が広がるだけの景色はすぐに飽きて。
    だからたまには何もせずにゴロゴロダラダラするだけの日があっても良いよね!
    ……って、思っていたのに。
    嵐はあちらの方からやって来た。
   それは、控えめなノックの音から始まり。
    それがまさかあんな騒ぎになるとは思っていなかった……。
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