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冒険者ランクを上げましょう
3-12 イマルさんは手強いです。
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イマルさんがきらめく笑顔で喚び出したのは、氷狼のニール。
氷と名の付く魔物だけど、その身体は人間よりかは体温低くて冷んやりするけど凍るような冷たさじゃないし、その毛皮はすこぶるもふもふで、物凄く手触りが良い。
この三月の間の私の癒しタイムに一番よく付き合ってくれたのがこのニール君だ。
顔つきはハスキー犬みたいな強面だけど、面倒見の良い主に似たのかカワイイヤツだ。
……けど、いざ戦闘になると途端にオソロシイヤツになる。
戦闘職専門は他にいるから、メインで戦うことは滅多にないけど、狼らしく平原を駆ける脚力はザルマとも良い勝負。パワーはザルマより上。
あの体躯とスピードで体当たりをされるだけでも大ケガは免れない。
それでいて氷魔法を自在に操る。無論その立派な牙や爪も武器の一つ。
……ニールじゃない他の氷狼となんて絶対戦いたくないわ。と言うかこんなのテイム出来るイマルさん。……本当に死角無しなのか。
「そら、始めるぞ」
それまで機嫌良さそうに尻尾を振ってたニールがその一言で牙を剥いて唸り出す。
……本物の敵を前にした時よりはこれでトーンダウンしてるんだけど、それでもその迫力はおっさんみたいにだらけた動物園のライオンなんか比較にならない。
「――やれ」
――ニールとの距離、ほんの数メートル。ニールにとって無いも同然の距離。最近少し筋肉がついたからって、ニールとかけっこなんてそもそも成立しない。
「風刃!」
四方に風の刃を飛ばして木々の枝葉をニールの鼻面に落とし怯ませる。
「炎壁」
魔を開けず炎の壁でニールの周囲を囲い、
「煙幕!」
生木が燃えて黒煙が上がるのを風で吹き上げ煙と炎を巻き上げる。
……けど。
「ヴォウ!」
その吠え声一つで細かな氷の粒子が多数出現。キラキラ輝くそれが炎と煙を取り巻き弾けると、それらは水蒸気と化し、霧となって視界を奪う。
ニールは狼の魔物。視界が悪くともご自慢の鼻がある。
まずい、と思った次の瞬間にはニールに首根っこ咥えて持ち上げられた。
「……勝負あり、だな」
ニールの体高でこのまま落とされたら骨は折るし、放り投げられたらぺしゃんこ。……そうなる前にイマルさんの指導が入る。
「間合いの不利をどうにかしようと考えたまでは良い。場の環境も上手く取り入れられていたし、氷属性の中級モンスター相手なら有効な攻め方だったな。が、氷属性の強力な魔物相手には諸刃の剣となる事を覚えておけ」
「はいっ、ありがとうございます!」
ニールにゆっくり地面に下ろして貰いながら、次の攻め手を必死に思案する。
「では、もう一度だ」
鬼教官様が一度で終わらせてくれる訳がない。
「はいっ!」
ニールの目と鼻を潰す。
「ヒート・スチーム!」
高熱の水蒸気で視界を奪い、若干のダメージをついでに期待する。
「風壁!」
その上で私の周りの空気を支配し音と臭いを遮断する風の壁を作る。
その上で――
「雷撃!」
雷もどきを数発落としてやる。
ダメージはなくとも耳には痛いはず。
そして。
「泥沼!」
柔らかい泥で自慢の脚力を奪い、水を含んだ地面に雷を落とすことで痺れの効果も期待しちゃう。……効果は今一つかもしれないけど。
「――そこまで」
でも、どうやらイマルさんの合格基準には達したらしい。
「お前はなかなか面白い術の使い方をするな。お前の世界の学術を応用しているんだったか?」
「はい」
「相手の特徴や弱点や耐性を正しく認識できれば有効な術を即座に使い分けられるのがお前の強みだな」
微かに微笑み頭をなで回される。……まるで私がニールをモフるみたいに。
「では、明日はザルマを相手に戦って貰おう」
そして。やっぱりにっこり笑って言うんだよイマルさんは……。
氷と名の付く魔物だけど、その身体は人間よりかは体温低くて冷んやりするけど凍るような冷たさじゃないし、その毛皮はすこぶるもふもふで、物凄く手触りが良い。
この三月の間の私の癒しタイムに一番よく付き合ってくれたのがこのニール君だ。
顔つきはハスキー犬みたいな強面だけど、面倒見の良い主に似たのかカワイイヤツだ。
……けど、いざ戦闘になると途端にオソロシイヤツになる。
戦闘職専門は他にいるから、メインで戦うことは滅多にないけど、狼らしく平原を駆ける脚力はザルマとも良い勝負。パワーはザルマより上。
あの体躯とスピードで体当たりをされるだけでも大ケガは免れない。
それでいて氷魔法を自在に操る。無論その立派な牙や爪も武器の一つ。
……ニールじゃない他の氷狼となんて絶対戦いたくないわ。と言うかこんなのテイム出来るイマルさん。……本当に死角無しなのか。
「そら、始めるぞ」
それまで機嫌良さそうに尻尾を振ってたニールがその一言で牙を剥いて唸り出す。
……本物の敵を前にした時よりはこれでトーンダウンしてるんだけど、それでもその迫力はおっさんみたいにだらけた動物園のライオンなんか比較にならない。
「――やれ」
――ニールとの距離、ほんの数メートル。ニールにとって無いも同然の距離。最近少し筋肉がついたからって、ニールとかけっこなんてそもそも成立しない。
「風刃!」
四方に風の刃を飛ばして木々の枝葉をニールの鼻面に落とし怯ませる。
「炎壁」
魔を開けず炎の壁でニールの周囲を囲い、
「煙幕!」
生木が燃えて黒煙が上がるのを風で吹き上げ煙と炎を巻き上げる。
……けど。
「ヴォウ!」
その吠え声一つで細かな氷の粒子が多数出現。キラキラ輝くそれが炎と煙を取り巻き弾けると、それらは水蒸気と化し、霧となって視界を奪う。
ニールは狼の魔物。視界が悪くともご自慢の鼻がある。
まずい、と思った次の瞬間にはニールに首根っこ咥えて持ち上げられた。
「……勝負あり、だな」
ニールの体高でこのまま落とされたら骨は折るし、放り投げられたらぺしゃんこ。……そうなる前にイマルさんの指導が入る。
「間合いの不利をどうにかしようと考えたまでは良い。場の環境も上手く取り入れられていたし、氷属性の中級モンスター相手なら有効な攻め方だったな。が、氷属性の強力な魔物相手には諸刃の剣となる事を覚えておけ」
「はいっ、ありがとうございます!」
ニールにゆっくり地面に下ろして貰いながら、次の攻め手を必死に思案する。
「では、もう一度だ」
鬼教官様が一度で終わらせてくれる訳がない。
「はいっ!」
ニールの目と鼻を潰す。
「ヒート・スチーム!」
高熱の水蒸気で視界を奪い、若干のダメージをついでに期待する。
「風壁!」
その上で私の周りの空気を支配し音と臭いを遮断する風の壁を作る。
その上で――
「雷撃!」
雷もどきを数発落としてやる。
ダメージはなくとも耳には痛いはず。
そして。
「泥沼!」
柔らかい泥で自慢の脚力を奪い、水を含んだ地面に雷を落とすことで痺れの効果も期待しちゃう。……効果は今一つかもしれないけど。
「――そこまで」
でも、どうやらイマルさんの合格基準には達したらしい。
「お前はなかなか面白い術の使い方をするな。お前の世界の学術を応用しているんだったか?」
「はい」
「相手の特徴や弱点や耐性を正しく認識できれば有効な術を即座に使い分けられるのがお前の強みだな」
微かに微笑み頭をなで回される。……まるで私がニールをモフるみたいに。
「では、明日はザルマを相手に戦って貰おう」
そして。やっぱりにっこり笑って言うんだよイマルさんは……。
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