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冒険者ランクを上げましょう

3-10 王国最東端の街へ

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    いつものように町で三日間宿をとって、休息とは名ばかりの過酷な合宿を終え、私達はいよいよこの国で一番東にある国境の街へと向けて出発した。
    「さあ、今日からはヒカルにも実戦に加わって貰う。基本スタイルとしては、マリーにヘイトを集めて盾になって貰いつつケントが牽制。ヒカルが魔法で仕留め、俺はその場の状況次第で臨機応変に動く。これが俺達が基本スタイルになる」
    ここまで平原、起伏の多い丘陵地帯に浅い森や小山と結構色々体験してきたけど、ここからは本格的な森の中の道らしい。
    まだ真っ昼間なのに夕方みたいに薄暗い、ただ上を見上げると木々の葉と葉の重なる僅かな隙間からキラキラ輝く陽光がとても綺麗だ。
    うっそうと繁る緑は実や花をつける広葉樹や蔦、苔に低木、下草といった種類が多く、薬草なども豊富に採れる。
    リスやハムスターみたいなかわいい系のネズミやウサギといった小動物もよく見かける。鳥の鳴き声も頻繁に聞こえる賑やかさが、薄暗い森でも気持ちを明るくしてくれる。
    ――が。それだけで終わらないのがこの世界のスタンダード。
   まあ日本だって熊や猪にロックオンされたら素人じゃテレビのニュースにだってなっちゃう大事だったりするけどさ……。
    少なくとも自走する木なんて植物の定義を根本からひっくり返す様な非常識なイキモノは居なかったよ!    まあゲームじゃわりとメジャーなモンスターだったけどな、トレントめ!
    倒すだけなら一気に火で燃やしちゃうのが一番なんだけど 、アレ木材としての価値は高いんだよね。だから、まずは風刃で余計な枝葉を払ってから「魔核」という魔物の心臓を、エネルギーを圧縮して高温にしたパチンコ玉サイズの火球で撃ち抜いてやった。
    ……まあ、マリーさんが前で奴らを止めてくれてるからこそこうして落ち着いて的確な魔法が撃てるんだけどさ。
    だってトレントの顔の形したうろがまんまホラーなんだもん。あんなのがまとまって目の前に押し寄せたら、私は確実にパニックを起こす。
    ああ、後衛職で本当に良かったよ。魔法の勉強は大変だけど、やっぱり魔法を使うのは楽しいから。
    「素晴らしいですね、教えたことをもう応用して……。ふふふふ、教えがいがあって楽しいですわ」
    「うむ、魔法実践訓練についてはもう自習でいいな。ただしサボるなよ?    剣の稽古と魔法理論の勉強はこれまで通りにやるからな?」
    次に出てきた大猪型の魔物相手に土壁を作って体当たりを防いでそのまま落とし穴に落としてやったら、何故かイマルさんに微笑まれた。
    ……イケメンさんの微笑みとか眩しすぎるんだけど……何でしょうね、その微笑みに含むものがありそうに思えるのは――。
    気のせい、って事にしたかったのに。
    ……自習の訓練相手として毎日誰かイマルさんの従魔さんが協力して下さる事になったよ。皆冗談抜きに本気で来るからさ……。
    ようやくチートっぽさを味わえると思ったのに~(泣)
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