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銀の剣の仲間達

2-3 元お嬢様はとても豪快な方でした……。

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    「ところでこの店、甘いものは無いのかしら?」
    「……親父」
    「あいよ~!」
    普通盛りを何とか食べきった私をよそに、マリーさんはデザートを要求する。
    イマルさん、ちょっと引いてる……? 
    「お待ちどう!」
    運ばれて来たのは、油で揚げたパンに砂糖をまぶした所謂揚げパンにたっぷりの生クリームとフルーツを挟んだサンドイッチ。
    「………………。」
    あ、イマルさんとケント君がそっと皿から目を逸らした。
    甘いものは別腹派の私でもこれは見てるだけでキツいのだから、そりゃ男性陣には目の毒だろう。
    しかし金髪縦ロールのテンプレお嬢様は、美味しそうにかぶりつきむしゃむしゃもぐもぐしてる。
    そんな仕草でも何でかお上品に見えるんだから、お嬢様ってスゴイ。
    「あー、食ってるとこ悪いんだが、次いけるか?」
    もぐもぐごっくん。
    「ええ、いいわ。私の名前はマリー。家名は昨日失くしたから、ただのマリーよ。年齢は19歳、職業は『槍使い』から派生した『槍斧ハルバード使い』と『魔法使い』。主武器は槍斧、あと魔弾ボール系の魔法が使えるわ。盾も持つから盾職も出来る。でも先生のサポート無しの実戦経験は無いから連携の練習は必要でしょうね」
    ……え。この元お嬢は今何と言った?
    槍斧に盾?    ……こんないかにもなお嬢様が持つ装備じゃ無いよね、それ。カトラリーより重いものを持てないのがお嬢様デフォしゃないの!?
    「では攻撃パターンは?」
    けど、マリーさんの食欲に引いていたイマルさんはこれには引く気配もなく冷静に尋ねた。
    「基本は盾で攻撃を捌きつつ槍斧で直接攻撃と魔法攻撃とを使い分けますわ」
    「成る程、前衛タイプだな」
    「そうなりますわね。魔法の威力はあまり高くありませんから、敵の牽制や間合いを外された時の補助に使うくらいですもの」
    合間合間にもぐもぐごっくんしながら話すマリーさん。
    「ちなみに戦い以外でしたら、各国の地理や情勢などは貴族として学んでいますし、家を追われた今は直にお話しするのは難しくなりましたが、それでも各国の要人の顔と名前と噂や評判は全て記憶しております。特に女同士の交渉事はお任せくださいませ」
    最後の欠片を口に押し込みながら、彼女はたわわな果実をつけた胸を張った。
    「……低ランクの今は関係の無い話だが、いずれランクが上がって指名依頼を受けられる様になると、困った貴族の依頼を受ける機会も増える。……やれるか?」
    「ええ、勿論お任せ下さい♪」
    と、やはりキレイな笑顔を浮かべて彼女は自信たっぷりに請け負った。
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