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銀の剣の仲間達

2-2 職業チートの予感がします。

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    「……では、まずは職業について聞きたいのだが、それについての説明は必要か?」
    「職業と能力の関係と、それによって将来が左右される話は昨日ケント君に聞きました。――そのケント君によれば、私の職業は賢者だそうです」
    イマルさんは私の答えを飲み込む間を置き、一つ頷いて言った。
    「……情報ステータスを見た事がないのか。では食事の後で教会に行こう」
    「教会には十歳になるまでは立ち入りが禁止されてますの。十歳の鑑定式を終えた後は必要に応じてお布施を払えば何時でも鑑定して貰えるのです」
    「因みに、戦闘経験や魔法の勉強をした事はあるか?」
    「いいえ。特に魔法については私の世界ではおとぎ話の中だけのもので、実在しないものでしたので……」
    「そうか。それでケント――」
    「……はい、僕は鑑定スキルを持ってます。レベルが低いので大したことは分かりませんが、職業くらいなら大抵見えます」
    ケントの答えに、イマルさんがニヒルな笑みを浮かべた。
    「なら、賢者というのは確かか。……王家もバカなことをしたものだな」
    「ふふふ、早速元婚約者様をギャフンと言わせるネタが手に入って嬉しいですわ!」
    マリーさんも何か嬉しそうだな。
    「あの、ですね。賢者って言うのは魔術師、治療師の上級職で、ほとんどおとぎ話の中の職業なんですよ?」
    分かってなさそうな私に、ケント君が囁く。
    「そも、魔術師は魔法使いと魔道具師の上級職、治療師は聖職者と薬師の上級職ですの。その全ての職業に付随する能力を使える賢者は後衛職のエキスパートと言えるでしょう」
    「ああ、君一人居れば勇者パーティーの魔術師と治療師はお役御免だな」
    「魔法のお勉強は私にお任せ下さいね」
    マリーさんが、とってもイイ笑顔を向けてくる。
    「私、魔術師の家系であるジューク子爵家に嫁入りするため一生懸命お勉強しましたのよ?」
    ふふふふふふ、と。
    マリーは微笑んだ。
    無駄に思えた知識が役立ちそうで嬉しいわ、と。
    このタイミングで運ばれてきた大盛りの挽き肉入りオムレツにスプーンを突き立て頬張って。
    ……冒険者御用達の店の大盛りを、この元お嬢様がキレイに完食するとは、この時の私は勿論思ってもみなかった。
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