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第二章

スパでの一時(男性編)

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 「へぇ、やっぱり良い身体してますね……」

 こちらは男性更衣室。

 レストの鍛え上げられた肉体に羨ましそうに視線を向けるのはジーク。
 因みに彼とて太っているわけでも痩せている訳でもないが、所詮は商人。
 冒険者という肉体が商売道具なレストと比べれば貧弱な身体だ。
 ……それを言うならロイスも似たりよったりなのだけど。

 こちらも先に風呂へ入ろうと、ざっと軽くシャワーを浴びて湯船に浸かる。
 「ふひー、気持ち良い……」

 と。入った直後は蕩けていたロイスだが。
 「……あちーな、そろそろあがるか」

 5分もしないうちに外の露天風呂へ向かう。
 彼らには面倒を見なくてはいけない小さな子も居ないため、基本単独行動と言う話が纏まっていた。

 ……まぁ、着替えてシャワー浴びるまではルーティーンから何となく一緒だったけど。
 レストはまだ気持ち良さそうに湯船に浸かっていたけれど、ロイスは露天風呂も十分も入れば十分と、さっさと浴場を出て館内着に着替える。

 アカスリにもマッサージにも興味のないロイスはさっさと食堂へ向かった。

 「うーん、一応旨そうなんだけど、なー」

 最近、外で食事をしようにも物珍しいその土地ならではのものはまだしも、ジャンクフード程度なら、幼馴染みで相棒のシャリーの作った物の方が美味しいと舌と胃袋が覚えてしまって、少し高いと思えば買う気が半減してしまうようになっていた。

 「やっぱアイツが言ってた通り、特に物珍しいものは見かけないな」
 結局肉の焼ける匂いに屈して串焼き肉を買ってみたものの。
 「……不味くはないがイマイチだな」

 先日の、ジークの上司に奢ってもらったステーキはマジで美味かったんだが。
 『当たり前でしょ、普段私達の食べてるお肉の何倍の値段すると思ってんのよ!』
 とシャリーには怒られたが。

 いつも手伝いばかり押し付けられるのが不満なのは確かだが、自分じゃシャリーほど美味い飯は作れないと分かっているから今は甘んじているけど。

 「けど、旅に出たばかりの頃よりは腕は上がっているはず」
 伊達にいつも手伝わされてる訳じゃないのだ。
 いつかは、必ず。

 「それ、人気メニューなんですがお気に召しませんでした?」
 肉をほぼ食べ終わる頃。
 肩こりがあるからとマッサージを満喫していたジークが食堂へやってきた。
 ……因みにレストは肩のみならず足腰も含め全身マッサージのフルコースを今もまだ満喫中。
 如実に年齢差が出ていた。

 「いや、美味いんだが……」
 「あはは、普段の食事があれだけ美味しいですからね。分からなくもありませんが」
 ……普段ももう少し肉料理が多ければ文句なしなんだが、シャリーは野菜や魚を使いたがる。
 健康のためらしいが、な……。

 「まだ早いですが、もうよろしいので?」
 「ああ。マッサージとか、興味ないしな」

 一応成人しているとはいえ、まだまだオコチャマなロイスにはスパ一日無料券は猫に小判だったようで。
 最後まで満喫しきった女性陣より遥かに早く施設を後にしたのだった。
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