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第二章

港も色々、店も色々、人々はもっと色々

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 「おーう、安いよ安いよ!」
 「ああ? これで安いだと? あっちの港じゃ同じ魚が一カゴに5匹入って同じ値段だったぞ? こりゃ4匹しか入ってねぇじゃねぇか」
 「ああん? けっ、質より量をお求めなら向こうの港で買ったら良いじゃねえか。けどな、こっちは脂のノリは向こうとは段違いだ、同じ量同じ値段で売っちまったらこっちは大損だぜ!」
 「けっ、脂のノリなんざ捌いてみるまで分からんだろ、ぼったくりじゃねぇのか?」
 「おぅ、テメェやるかぁ?」
 「そっちこそ、返り討ちにされても文句はねぇだろうなぁ?」

 船から降りて少し歩いた魚市場。
 個々は基本この近くの漁港で捕れた魚と、川の上流から船便で運ばれてきた魚を主に商っている様だけど……、
 まず耳に飛び込んできたのが、こんな喧嘩腰のやりとりで。

 少し進むと穀物や野菜を始めとした食品市場、その奥が小物や雑貨、更に行くと貴金属を扱う店もあったが、以前訪れた商業港の様な高級店はほぼ見当たらず、庶民的なお店が多い代わりか、客層も荒っぽい人間が多そうな街だった。

 「……それはそうと。米が妙に高くて、小麦がやけに安いのには訳があるの?」
 「その……、この土地が麦より米の方がよく育つ土地柄なのですが……」
 ルイーゼさんは言いにくそうにしながら答えてくれる。
 「逆に、あちらの土地は麦がよく穫れ、逆に稲作には向かぬ土地なので、互いに米と麦を融通し合っているのですが……」

 その取引に、例の伯爵同士のライバル関係が大いに影響してしまっている為のこの価格なんだそうで。

 「相手により高く売りつけ、逆に相手から安く仕入れる、それが商人ですよね?」
 いやまぁ、そうなんだけどさ。
 「……なので、川の対岸では逆の値付けがされているかと」
 うぅん、値付けは一応ギリギリ許容範囲なんだけど。

 「何か面倒くさい事になりそうだから、今回米も麦も使いたくないなぁ……。あ、もしかして野菜もそう? いくつか微妙な値段の野菜があるけど……」
 「……おそらくは」

 わー、すごーく面倒くさい。

 「あ、でも果物はそんなに値段変わらないね?」
 「それは……、果物は一部除いて生のままではあまり長期保存出来ないもので。近場から仕入れられる物ばかりですので。……流石に川の対岸というだけではそう大きく環境は変わりませんので、穫れる果実も似たりよったりなので……」

 ふむ、なら今回は食事メニューでなく、この果物を使ったスイーツを作るか?
 けど、この港の雰囲気にあんまりオシャレなスイーツは似合わなそうだ。

 「さぁて、どんなスイーツを作るかなぁ……?」
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