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第二章

博多と言うよりは……

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 ジュッ、と賑やかな音と共に鶏肉が油の中できつね色に揚がっていく。
 使っているのは鶏もも肉。それに衣を付けて油で揚げて。
 火の通った肉をタレに漬け込み、皿に盛る。
 付け合せのキャベツや薬味を乗せて、再度タレをかけたその上から特性タルタルソースをたっぷり盛り付ければ。

 「はーい、チキン南蛮セットでーす!」

 それに鶏ガラオニオンスープとパンを添えれば完成!

 ……うん、分かってるよ。同じ九州名物とはいえ、博多というより宮崎辺りの名物じゃなかったっけ? って。
 もう、今となっちゃ調べようもないけどさ。

 でもこれなら、フォークとナイフで綺麗に食べる事は可能だし、材料も手に入りやすく、大量調理をするなら揚げ物はむしろ楽。……後片付けの事を考えないなら、と言う注釈もつくけど。

 そして。いかなエリート集団と言えど、所詮は肉体労働職。
 肉が揚がるこの音と匂いには逆らえまい……?

 「くぅっ、酒が欲しくなる味だな……」
 「鶏肉のくせにこんなに脂が……。滴る肉汁がたまらん!」
 「パンが進む……。いや、このメニューなら米にも合いそうだな」

 うんうん。好評、好評。

 港にテーブルと椅子を用意してもらっての営業はイレギュラーだけどね。

 ……このエリート集団、貴族様のご子息が多いんだそうで。
 後は継げない三男以降の人が大半らしいけど、成人するまで貴族として育てられた彼らに「行列に並んで待て」とか、狭苦しい屋台のカウンターで食べろとか言う勇気は出なかった。
 故の、この営業形態だ。

 何かフードコートみたいだけど。

 しかし、まぁ軍人だからガタイは良いけど、基本貴族のお坊ちゃんだからね、顔面偏差値高いの多くてさ。
 まぁ眼福眼福。

 何より、パエリアと違ってコレはとにかく肉に衣を付けて油に投入すれば良いだけで、実に楽ちん。
 ……まぁ、その分、無限とも思えるキャベツや薬味と格闘したり、大量のタルタルソースを作る苦労を味わう事になったけどな!

 パフォーマンス?
 ちょっと大きめの鍋で鶏肉揚げてたらそれだけで肉に目のない男たちは寄って来る。
 いや、脳筋バンザイ。

 しかもエリートって事で実入りは良いらしく、金払いも良い。
 これは売り上げ期待できそう。

 「しかし……、卵と酢と油でこのようなソースが出来るとは」
 「ああ、このタルタルソース、魚介のフライなんかにつけて食べても美味しいですよ」
 「うーん、このソースだけでも売り出したらかなり儲かりそうですね……」

 肉よりソースに興味津々な新顔二人に苦笑しつつ。

 「さぁ、日暮れまであと少し! ラストスパートいくよ!」
 発破をかけるのだった。
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