92 / 125
第二章
大商人からの援護射撃入ります。
しおりを挟む
「……君、確か伯爵家の従僕になったんだったね。
生まれながらの伯爵様に下々の感覚が分からないのは致し方無い事かもしれない。
であるからこそ、君の様な者を伯爵様につける為に私は推薦状を用意したはずなのだが。
これはどういう事かな?」
店を手伝うわけでもなく、しかし私達の監視と称して近くでお茶を飲んでたアンドリューに、彼は苦言を呈す。
どうやらこのアンドリューという男は、貴族ではなく元はこの人の部下で、伯爵様の下にいわば出向している平民だそう。
一応大商人の部下で、今は伯爵様の使用人なのだから、金持ちは金持ちなんだろうけど、貴族的な特権は何一つ持っていなかったらしい。
領地経営はホワイトな伯爵様も、下々の生活を知らず、貴族感覚で無茶振りされると色々問題になる。
多少の事なら、今回のように誰も箸にも棒にもかからない。
が、頻繁に続けば話は変わってくる。
そんな事で評判を落としたくない伯爵様は、庶民感覚の分かる部下を、アンドリューの様に商人や職人の所から出向させ雇っているらしい。
だから、伯爵様の無茶振りをアンドリューが止めていれば、もっとマトモな契約になったはずだった。
と、大商人の彼――ケルト氏は言う。
「お前は、私と伯爵様の顔に泥を塗る真似をした事、理解しているか?」
上司から怒りのオーラを浴びせられるアンドリュー氏は真っ青になっている。
……ペコペコはしない。ここは日本じゃないからな。
日本じゃ土下座レベルの謝罪をする時じゃなきゃ滅多に頭は下げないんだって。
「今すぐ、伯爵様に謝罪と訂正をしに行きますよ」
ケルト氏に引きずられて行くアンドリュー氏。
……ま、ドンマイ☆
こっちはまだまだ客がキリなく来ていて忙しく、すぐに彼らの事は頭の隅に追いやられる。
「いらっしゃいませ~!」
それにしても、富裕層が多いせいか、皆食べ方が綺麗なんだよね。
貝のカラとかあって、綺麗に食べるの大変そうなのに。
私? うん、行儀悪く貝殻なんかはペイっと手で除けちゃうかな……、あはは。
だから、そこに関して感心しつつ、そろそろ死にそうな腕と足腰を叱咤しつつ、調理し続ける。
すべて売り切り、辺りがようやく静まり返る頃には、私にはもう片付けに回す余力は残されていなかった。
「……うん、お前はよくやったよ。片付けは俺がやるからちょっと横になってろ」
「ひやしたおるもってきたよー!」
冷水で濡らしたタオルを腕や足に貼り付けてないと、手足の筋肉がつりそうになる。
シートの上でだらしなく寝転がり半死体と化す私を、流石にロイスが労ってくれる。
「お陰でギリ赤字回避出来そうだ。……儲けはほぼほぼ経費に消えるけど、な」
それでも赤字回避は私達にとって大きい。
少しだけ、光明が見えた。――その、翌日。
私達はまたしても伯爵邸に呼び出されたのだった。
生まれながらの伯爵様に下々の感覚が分からないのは致し方無い事かもしれない。
であるからこそ、君の様な者を伯爵様につける為に私は推薦状を用意したはずなのだが。
これはどういう事かな?」
店を手伝うわけでもなく、しかし私達の監視と称して近くでお茶を飲んでたアンドリューに、彼は苦言を呈す。
どうやらこのアンドリューという男は、貴族ではなく元はこの人の部下で、伯爵様の下にいわば出向している平民だそう。
一応大商人の部下で、今は伯爵様の使用人なのだから、金持ちは金持ちなんだろうけど、貴族的な特権は何一つ持っていなかったらしい。
領地経営はホワイトな伯爵様も、下々の生活を知らず、貴族感覚で無茶振りされると色々問題になる。
多少の事なら、今回のように誰も箸にも棒にもかからない。
が、頻繁に続けば話は変わってくる。
そんな事で評判を落としたくない伯爵様は、庶民感覚の分かる部下を、アンドリューの様に商人や職人の所から出向させ雇っているらしい。
だから、伯爵様の無茶振りをアンドリューが止めていれば、もっとマトモな契約になったはずだった。
と、大商人の彼――ケルト氏は言う。
「お前は、私と伯爵様の顔に泥を塗る真似をした事、理解しているか?」
上司から怒りのオーラを浴びせられるアンドリュー氏は真っ青になっている。
……ペコペコはしない。ここは日本じゃないからな。
日本じゃ土下座レベルの謝罪をする時じゃなきゃ滅多に頭は下げないんだって。
「今すぐ、伯爵様に謝罪と訂正をしに行きますよ」
ケルト氏に引きずられて行くアンドリュー氏。
……ま、ドンマイ☆
こっちはまだまだ客がキリなく来ていて忙しく、すぐに彼らの事は頭の隅に追いやられる。
「いらっしゃいませ~!」
それにしても、富裕層が多いせいか、皆食べ方が綺麗なんだよね。
貝のカラとかあって、綺麗に食べるの大変そうなのに。
私? うん、行儀悪く貝殻なんかはペイっと手で除けちゃうかな……、あはは。
だから、そこに関して感心しつつ、そろそろ死にそうな腕と足腰を叱咤しつつ、調理し続ける。
すべて売り切り、辺りがようやく静まり返る頃には、私にはもう片付けに回す余力は残されていなかった。
「……うん、お前はよくやったよ。片付けは俺がやるからちょっと横になってろ」
「ひやしたおるもってきたよー!」
冷水で濡らしたタオルを腕や足に貼り付けてないと、手足の筋肉がつりそうになる。
シートの上でだらしなく寝転がり半死体と化す私を、流石にロイスが労ってくれる。
「お陰でギリ赤字回避出来そうだ。……儲けはほぼほぼ経費に消えるけど、な」
それでも赤字回避は私達にとって大きい。
少しだけ、光明が見えた。――その、翌日。
私達はまたしても伯爵邸に呼び出されたのだった。
127
お気に入りに追加
1,345
あなたにおすすめの小説
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
みおな
ファンタジー
私の名前は、瀬尾あかり。
37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。
そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。
今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。
それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。
そして、目覚めた時ー

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています
空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。
『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。
「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」
「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」
そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。
◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる