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第二章

行商隊との交流

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 「ん、あれは……?」

 「ああ、一月か二月に一度来る行商隊さね。
 あんたらみたいな個人の行商は決まったもんしか商わないだろ?
 だがあの商隊は色んな物を商ってくれるからな、こんな辺ぴな農村じゃ立派に娯楽の一つになってるのさね」

 ある日の旅の途中、自分達で食べる分の食材を買い足すため寄った農村で、ぞろぞろと続く馬車の列を見つけた私達が村の人に問うと、彼らはそう答えてくれた。

 馬車の列は、村の広場に止まるといくつかの馬車を展開して、そこに商品を並べていく。
 後ろにまとめられた馬車はどうやら旅の間の彼らの寝床やキッチン車の様で。

 なる程、数があるとこういう事も可能なのか、と感心してしまう。

 しかも並ぶ商品は食材から惣菜、衣服に生地や糸の他に裁縫道具もある。
 ちょっとしたアクセサリーも、農具や生活雑貨や日用品。
 それに少しお高めの値段設定ながら、娯楽雑誌まである。

 実際には購入せずとも、ウィンドウショッピングしながら店を冷やかすだけで楽しい事を、勿論私はよく知っている。
 おばちゃんから若い娘まで、女性が主に馬車に群がり、商店に華を添えていた。

 その勢いに少々引きつつ、男性陣がその後方から興味のある馬車に寄っていき、じっと眺めた後で、一言二言店員と言葉を交わして欲しい物を購入する。

 男女の差が如実に出ていて見ていて面白い。

 私も食材や調理器具など良いものがあれば……、と、村人たちの集団が少し減ってきた頃を見計らって商隊に近づいた。

 まぁ、どちらも珍しい物ではなかったんだけど。
 それよりも、だ。

 「な、なに、コレ……」

 気になったのは娯楽雑誌の表紙にデカデカ書かれた見出しの文言だ。

 『勇者が絶賛、屋台飯専門の行商人!』
 『絶品肉飯、出会えたらラッキー!?』
 『店名は不明、幻の屋台飯か?』

 「………………。ねぇ、これ……」
 「……もしかしなくとも俺たちの事っぽいよな、これ」

 行商人や村人たちに聞かれないようこそこそと話し合う。

 「こないだからちょいちょい聞いてた噂って、これの事か!」
 幸い、まだ特定はされていないみたいだけど。

 「お、大事じゃない!」

 何せあの日勇者に出したのは残り物の有り合わせ飯をなのだから。

 「しかもアレ、自称じゃなく本物勇者!?」

 マジか。
 どうしても気になって、買ってしまいました……。
 思わぬ出費だよ、ぐすん。

 「あの勇者め、あの後パーティーメンバーに自慢した挙げ句所構わず喋りまくってくれたのね……?」
 勇者と似たりよったりなパーティーメンバーが羨ましがり、私達を探し始めているとのこと。

 その上あの晩の話を吟遊詩人らが好んで歌って回ってもいるらしい。

 「な、なんて事! 私は大人しく屋台営業が出来ればそれでいいのに! 勇者も魔王もノーセンキューなのに!」
 
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