79 / 125
第二章
こってりの後はあっさりよね?
しおりを挟む
その日の日暮れ、男達に失礼ながらちょっと気持ち悪い視線を向けられながら、私達は城塞を後にした。
もう一泊勧めらたけど、そうするとなし崩し的に滞在をどんどん延ばされる気配があったからね。
城が見えなくなった辺りで今夜の野営の支度を始める。
「悪い……、けど今夜のめしは何かさっぱりしたモンにしてくれないか? 無理そうなら良いけど……」
早速食事の支度に取り掛かる私に、ロイスが注文をつけた。
「散々美味そうなにんにくの匂いの中に居て、最初はあの飯も美味そうに見えてたし、実際味見して美味かったけど、流石にあの量料理してたらもう今日はこってりしたモン見たくねぇよ……」
「――確かに。俺も普段はああいうメニューを好むが、自分はそんなに量を食ってないのに胸焼けしそうな気分だからな」
うん、まぁそれは私も同感。
だからそもそもこってり飯を作るつもりはなかったんだけど。
「チキンライスに使った出汁、少し余ったからこっそり持って帰ってきたからさ。今夜はかきたま雪見うどんだよ」
丸鶏の出汁に大根おろしと薬味に生姜のすりおろしを少々。
溶き卵をそろっと入れてかきたまにして、胃にも優しくあっさり、でもしっかりコクのある旨味たっぷりのあったかご飯。
ただしミルフィちゃんの分だけは生姜はマジに控えめで。
「おお、あったまる~!」
「大根おろしが辛くない! 生姜はちょっとピリ辛だけど、卵が相殺してくれて程よいアクセントの範囲にちゃんと収まってて美味い!」
「うどんにしてはこってりめの出汁だが、これはこれで……。大根おろしと生姜のおかげでちゃんとあっさりしてるのが凄いな」
ふふふ、好評の様ですね。
「近くの村までは、あの城塞から日帰りでお使いに出られる距離らしいが、あくまで小さな農村だそうだ。食材の買い付けは出来るかもしれんが、あまり儲けの期待できる営業は出来そうにないな」
「その前に商業ギルドの支部も期待できないだろ。レストが居てくれるとはいえ、わざわざトラブルの中に突っ込んでく真似はしたくねぇよ」
さて、食後は兵士さんたちから入手した周辺情報の整理と、今後の進路の検討会です。
王都はあくまで最終目的地ですからね。
路銀を稼ぐためにも、大幅に方向をずれるのでなければ寄り道は必須の旅なんで。
「ギルド支部が期待できる程度の規模の街までは軍の馬車で三日だそうだ」
「なら、私達は四、五日見た方がいいね」
ウチのクロエも優秀な馬だけど、流石に軍馬の馬力には敵わない。
荷物もそこそこ重いしね。
軍の馬車より日数かかるのは確実だ。
「次はどんな街かなー?」
もう一泊勧めらたけど、そうするとなし崩し的に滞在をどんどん延ばされる気配があったからね。
城が見えなくなった辺りで今夜の野営の支度を始める。
「悪い……、けど今夜のめしは何かさっぱりしたモンにしてくれないか? 無理そうなら良いけど……」
早速食事の支度に取り掛かる私に、ロイスが注文をつけた。
「散々美味そうなにんにくの匂いの中に居て、最初はあの飯も美味そうに見えてたし、実際味見して美味かったけど、流石にあの量料理してたらもう今日はこってりしたモン見たくねぇよ……」
「――確かに。俺も普段はああいうメニューを好むが、自分はそんなに量を食ってないのに胸焼けしそうな気分だからな」
うん、まぁそれは私も同感。
だからそもそもこってり飯を作るつもりはなかったんだけど。
「チキンライスに使った出汁、少し余ったからこっそり持って帰ってきたからさ。今夜はかきたま雪見うどんだよ」
丸鶏の出汁に大根おろしと薬味に生姜のすりおろしを少々。
溶き卵をそろっと入れてかきたまにして、胃にも優しくあっさり、でもしっかりコクのある旨味たっぷりのあったかご飯。
ただしミルフィちゃんの分だけは生姜はマジに控えめで。
「おお、あったまる~!」
「大根おろしが辛くない! 生姜はちょっとピリ辛だけど、卵が相殺してくれて程よいアクセントの範囲にちゃんと収まってて美味い!」
「うどんにしてはこってりめの出汁だが、これはこれで……。大根おろしと生姜のおかげでちゃんとあっさりしてるのが凄いな」
ふふふ、好評の様ですね。
「近くの村までは、あの城塞から日帰りでお使いに出られる距離らしいが、あくまで小さな農村だそうだ。食材の買い付けは出来るかもしれんが、あまり儲けの期待できる営業は出来そうにないな」
「その前に商業ギルドの支部も期待できないだろ。レストが居てくれるとはいえ、わざわざトラブルの中に突っ込んでく真似はしたくねぇよ」
さて、食後は兵士さんたちから入手した周辺情報の整理と、今後の進路の検討会です。
王都はあくまで最終目的地ですからね。
路銀を稼ぐためにも、大幅に方向をずれるのでなければ寄り道は必須の旅なんで。
「ギルド支部が期待できる程度の規模の街までは軍の馬車で三日だそうだ」
「なら、私達は四、五日見た方がいいね」
ウチのクロエも優秀な馬だけど、流石に軍馬の馬力には敵わない。
荷物もそこそこ重いしね。
軍の馬車より日数かかるのは確実だ。
「次はどんな街かなー?」
29
お気に入りに追加
921
あなたにおすすめの小説
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。
令嬢に転生してよかった!〜婚約者を取られても強く生きます。〜
三月べに
ファンタジー
令嬢に転生してよかった〜!!!
素朴な令嬢に婚約者である王子を取られたショックで学園を飛び出したが、前世の記憶を思い出す。
少女漫画や小説大好き人間だった前世。
転生先は、魔法溢れるファンタジーな世界だった。リディーは十分すぎるほど愛されて育ったことに喜ぶも、婚約破棄の事実を知った家族の反応と、貴族内の自分の立場の危うさを恐れる。
そして家出を決意。そのまま旅をしながら、冒険者になるリディーだったのだが?
【連載再開しました! 二章 冒険編。】
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
公爵家の家族ができました。〜記憶を失くした少女は新たな場所で幸せに過ごす〜
月
ファンタジー
記憶を失くしたフィーは、怪我をして国境沿いの森で倒れていたところをウィスタリア公爵に助けてもらい保護される。
けれど、公爵家の次女フィーリアの大切なワンピースを意図せず着てしまい、双子のアルヴァートとリティシアを傷付けてしまう。
ウィスタリア公爵夫妻には五人の子どもがいたが、次女のフィーリアは病気で亡くなってしまっていたのだ。
大切なワンピースを着てしまったこと、フィーリアの愛称フィーと公爵夫妻から呼ばれたことなどから双子との確執ができてしまった。
子どもたちに受け入れられないまま王都にある本邸へと戻ることになってしまったフィーに、そのこじれた関係のせいでとある出来事が起きてしまう。
素性もわからないフィーに優しくしてくれるウィスタリア公爵夫妻と、心を開き始めた子どもたちにどこか後ろめたい気持ちを抱いてしまう。
それは夢の中で見た、フィーと同じ輝くような金色の髪をした男の子のことが気になっていたからだった。
夢の中で見た、金色の花びらが舞う花畑。
ペンダントの金に彫刻された花と水色の魔石。
自分のことをフィーと呼んだ、夢の中の男の子。
フィーにとって、それらは記憶を取り戻す唯一の手がかりだった。
夢で会った、金色の髪をした男の子との関係。
新たに出会う、友人たち。
再会した、大切な人。
そして成長するにつれ周りで起き始めた不可解なこと。
フィーはどのように公爵家で過ごしていくのか。
★記憶を失くした代わりに前世を思い出した、ちょっとだけ感情豊かな少女が新たな家族の優しさに触れ、信頼できる友人に出会い、助け合い、そして忘れていた大切なものを取り戻そうとするお話です。
※前世の記憶がありますが、転生のお話ではありません。
※一話あたり二千文字前後となります。
スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~
白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」
マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。
そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。
だが、この世には例外というものがある。
ストロング家の次女であるアールマティだ。
実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。
そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】
戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。
「仰せのままに」
父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。
「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」
脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。
アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃
ストロング領は大飢饉となっていた。
農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。
主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。
短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる