76 / 125
第二章
この世界では魔物の肉も食べる様です。
しおりを挟む
城の中へと招き入れられた私達がまず先に案内されたのは、城の食糧貯蔵庫だった。
「流石にこの中身の全てを使い切られては困りますが、こちらの……、この区画にある物でしたらどれをどれだけお使い頂いても構いません」
見るに、小麦にライ麦、一応米もある。
野菜も根菜から葉物まで揃ってるけど、足の早い葉物野菜等は若干萎びていて、鮮度はあまり良くなさそうな。
そして何より目を引くのが、肉。
鶏肉、豚肉、牛肉にハムや腸詰め等の加工肉。
そして何の肉かも分からない枝肉が……
「ああ、それは演習の一環として我等が狩った魔物のうち食える奴の肉だ。味はモノによるが、そいつはジャイアントディアの肉だ。美味いぞ」
……ごめんなさい、私……魔物肉の調理はしたことないのよ。扱いに困るから、悪いけど普通の家畜や家禽の肉で勘弁して下さい。
けど、こう肉ばかりの貯蔵庫を見ると、肉食系男子の多い場所なのだと改めて思い知らされる。
これはメインメニューは肉料理にしないと暴動が起きそうだ。
数ある肉の中でも一際目立って多いのは鶏肉。
鶏の羽をむしっただけの、文字通りの丸鶏がいくつも積み上げられている。
「これは……、鶏肉料理メインで決まりかしらね」
そこへふと、前世にテレビで見たとある南の島のソウルフードと紹介された鶏肉料理を思い出す。
ついでにシンガポールで有名な屋台料理も。
「あれをアレンジしたらボリューミーなご飯ができそうね」
正直、シャリー自身は自分の考えたメニューを目の前に出されたとして、完食できる自信がない。
味がどうこう言う前に、胸焼けか胃もたれのどちらか、或いは両方で苦しむ事になりそうだけど、ここの鋼の胃袋を持っていそうな男たちなら。
……食べた後の男達のニオイは悶絶ものになろうとも、美味しいは正義、だよね?
「……お食事の提供は明日で良いのですよね?」
私地が声をかけられたときにはもうだいぶ日は傾いていて、食糧貯蔵庫を見学しているうちに辺りは真っ暗になっていた。
すでに城の厨房からは賑やかな音と声が聞こえてきている。
「勿論です。今夜は城の客室にお泊り下さい。……城と言えど戦城なもので、華やかな部屋ではございませんが」
「いえ、お声がけいただかなければ今夜は野宿の予定でしたから。雨風がしのげれば十分な所、寝台があるなら言う事は御座いませんわ」
けどね。
寝る前にまず明日の用意しとかなきゃ。
城の備品である、給食室ですら見た事無いような巨大寸胴鍋を借りてきて、火にかける。
中へ鶏と根菜、香味野菜を放り込んでグツグツ煮込み、時々丁寧にアクをすくい出汁をとる。
船のかいの様な木べらで鍋をかき回すのはかなりの重労働だ。
自分たちの夕飯の支度はロイスに押し付け、私はひたすら鍋の面倒を見続けるのだった。
「流石にこの中身の全てを使い切られては困りますが、こちらの……、この区画にある物でしたらどれをどれだけお使い頂いても構いません」
見るに、小麦にライ麦、一応米もある。
野菜も根菜から葉物まで揃ってるけど、足の早い葉物野菜等は若干萎びていて、鮮度はあまり良くなさそうな。
そして何より目を引くのが、肉。
鶏肉、豚肉、牛肉にハムや腸詰め等の加工肉。
そして何の肉かも分からない枝肉が……
「ああ、それは演習の一環として我等が狩った魔物のうち食える奴の肉だ。味はモノによるが、そいつはジャイアントディアの肉だ。美味いぞ」
……ごめんなさい、私……魔物肉の調理はしたことないのよ。扱いに困るから、悪いけど普通の家畜や家禽の肉で勘弁して下さい。
けど、こう肉ばかりの貯蔵庫を見ると、肉食系男子の多い場所なのだと改めて思い知らされる。
これはメインメニューは肉料理にしないと暴動が起きそうだ。
数ある肉の中でも一際目立って多いのは鶏肉。
鶏の羽をむしっただけの、文字通りの丸鶏がいくつも積み上げられている。
「これは……、鶏肉料理メインで決まりかしらね」
そこへふと、前世にテレビで見たとある南の島のソウルフードと紹介された鶏肉料理を思い出す。
ついでにシンガポールで有名な屋台料理も。
「あれをアレンジしたらボリューミーなご飯ができそうね」
正直、シャリー自身は自分の考えたメニューを目の前に出されたとして、完食できる自信がない。
味がどうこう言う前に、胸焼けか胃もたれのどちらか、或いは両方で苦しむ事になりそうだけど、ここの鋼の胃袋を持っていそうな男たちなら。
……食べた後の男達のニオイは悶絶ものになろうとも、美味しいは正義、だよね?
「……お食事の提供は明日で良いのですよね?」
私地が声をかけられたときにはもうだいぶ日は傾いていて、食糧貯蔵庫を見学しているうちに辺りは真っ暗になっていた。
すでに城の厨房からは賑やかな音と声が聞こえてきている。
「勿論です。今夜は城の客室にお泊り下さい。……城と言えど戦城なもので、華やかな部屋ではございませんが」
「いえ、お声がけいただかなければ今夜は野宿の予定でしたから。雨風がしのげれば十分な所、寝台があるなら言う事は御座いませんわ」
けどね。
寝る前にまず明日の用意しとかなきゃ。
城の備品である、給食室ですら見た事無いような巨大寸胴鍋を借りてきて、火にかける。
中へ鶏と根菜、香味野菜を放り込んでグツグツ煮込み、時々丁寧にアクをすくい出汁をとる。
船のかいの様な木べらで鍋をかき回すのはかなりの重労働だ。
自分たちの夕飯の支度はロイスに押し付け、私はひたすら鍋の面倒を見続けるのだった。
36
お気に入りに追加
921
あなたにおすすめの小説
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
公爵家の家族ができました。〜記憶を失くした少女は新たな場所で幸せに過ごす〜
月
ファンタジー
記憶を失くしたフィーは、怪我をして国境沿いの森で倒れていたところをウィスタリア公爵に助けてもらい保護される。
けれど、公爵家の次女フィーリアの大切なワンピースを意図せず着てしまい、双子のアルヴァートとリティシアを傷付けてしまう。
ウィスタリア公爵夫妻には五人の子どもがいたが、次女のフィーリアは病気で亡くなってしまっていたのだ。
大切なワンピースを着てしまったこと、フィーリアの愛称フィーと公爵夫妻から呼ばれたことなどから双子との確執ができてしまった。
子どもたちに受け入れられないまま王都にある本邸へと戻ることになってしまったフィーに、そのこじれた関係のせいでとある出来事が起きてしまう。
素性もわからないフィーに優しくしてくれるウィスタリア公爵夫妻と、心を開き始めた子どもたちにどこか後ろめたい気持ちを抱いてしまう。
それは夢の中で見た、フィーと同じ輝くような金色の髪をした男の子のことが気になっていたからだった。
夢の中で見た、金色の花びらが舞う花畑。
ペンダントの金に彫刻された花と水色の魔石。
自分のことをフィーと呼んだ、夢の中の男の子。
フィーにとって、それらは記憶を取り戻す唯一の手がかりだった。
夢で会った、金色の髪をした男の子との関係。
新たに出会う、友人たち。
再会した、大切な人。
そして成長するにつれ周りで起き始めた不可解なこと。
フィーはどのように公爵家で過ごしていくのか。
★記憶を失くした代わりに前世を思い出した、ちょっとだけ感情豊かな少女が新たな家族の優しさに触れ、信頼できる友人に出会い、助け合い、そして忘れていた大切なものを取り戻そうとするお話です。
※前世の記憶がありますが、転生のお話ではありません。
※一話あたり二千文字前後となります。
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない
猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。
まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。
ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。
財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。
なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。
※このお話は、日常系のギャグです。
※小説家になろう様にも掲載しています。
※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。
7個のチート能力は貰いますが、6個は別に必要ありません
ひむよ
ファンタジー
「お詫びとしてどんな力でも与えてやろう」
目が覚めると目の前のおっさんにいきなりそんな言葉をかけられた藤城 皐月。
この言葉の意味を説明され、結果皐月は7個の能力を手に入れた。
だが、皐月にとってはこの内6個はおまけに過ぎない。皐月にとって最も必要なのは自分で考えたスキルだけだ。
だが、皐月は貰えるものはもらうという精神一応7個貰った。
そんな皐月が異世界を安全に楽しむ物語。
人気ランキング2位に載っていました。
hotランキング1位に載っていました。
ありがとうございます。
デブだからといって婚約破棄された伯爵令嬢、前世の記憶を駆使してダイエットする~自立しようと思っているのに気がついたら溺愛されてました~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
デブだからといって婚約破棄された伯爵令嬢エヴァンジェリンは、その直後に前世の記憶を思い出す。
かつてダイエットオタクだった記憶を頼りに伯爵領でダイエット。
ついでに魔法を極めて自立しちゃいます!
師匠の変人魔導師とケンカしたりイチャイチャしたりしながらのスローライフの筈がいろんなゴタゴタに巻き込まれたり。
痩せたからってよりを戻そうとする元婚約者から逃げるために偽装婚約してみたり。
波乱万丈な転生ライフです。
エブリスタにも掲載しています。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる