屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜

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第二章

久々(?)の町で

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 「見えた……、町だ!」
 「まちだー」
 「ああ、町だな」
 「ええ。そんな大きい街ではなさそうだけど、人里には違いないわね」

 ここ数日ちょっと非日常な出来事が続きすぎて、人里がいつもよりも嬉しくありがたいものに思える。
 ……実際はこの程度の日数を野宿で過ごすくらいよくあることだし。

 町住みの一般庶民からすれば、常々旅暮らしの私達の生活そのものが非日常なんだけど。
 長距離の旅行なんて、毎年暑い季節になると避暑に出掛けるお貴族様くらいで、一般庶民がになんて滅多に行かない。
 仕事で買付や仕入れの必要があってとか、少し離れた街に嫁なり婿なりに出た者が、里帰りする程度か、一般庶民の旅なんて。

 その辺りはそもそも理解した上での旅とはいえ。

 魔王軍を名乗る山姥と遭遇し絡まれるなんて全く想定していなかった事態に、私達は流石に疲弊しきっていた。

 「なぁ、俺今晩はもう何も考えず美味い飯を食って、暖かいベッドで何も考えずぐっすり眠りたいんだけど」
 「ええ、それは私も同意見よ」

 そこは、村の規模を少し上回った程度の小さな町で、宿屋も選ぶまでもなく一軒しか存在せず、そんな町だから、入るにもチェックはゆるゆるで。

 「けど、一気に町の感じが変わったわね……」

 山の向こうは和風な町に食べ物が多かった。
 ……ん、山の中の茶屋? あんなのノーカウントよ、当然でしょ?
 でも、近くで見たこの町はまるで……

 「なんつーか、綺羅びやかな町だな。キンキラとか貴族の屋敷みたいな豪華さとはまた別なんだが……。大きな街でもないし。でもこれまでが質素すぎたのか?」

 まぁ、そう思う気持ちは分かる。
 この町の装いは、まるで横浜や神戸の中華街のようで。

 「気にはなるけど、でも今夜はまずゆっくり休みましょう。色々見て回るのは明日以降でも出来るから」
 「ああ、そうだったな」

 私達は早速宿で部屋を確保し、ついでに美味しい食事処を尋ねてみた。

 「うーん、この町店も少ないですから……、食べられるお店って、飲み屋がニ軒とお茶と点心スイーツを出す店が一軒、ご飯を出す食事処は……ほら、目の前にあるあれだけですよ?」

 それは、日本のちょっとした商店街にありそうな町中華っぽい店構えの店舗だった。
 本当に、宿屋の目の前にある。

 「ウチでも有料でご飯は出してますけど、朝はともかく夜はあそこか飲み屋に行く人が大半ですから」

 各店舗の主なメニュー表を揃えているらしく、木板に書いたそれを見せてくれる。

 「あ、飲み屋のはいいです、私達はまだ未成年なので。レストはどうします?」
 「いや、今夜はやめておく。……悪酔いしそうだからな」

 そんなわけで、食事処と点心屋のメニューを見せてもらう事にした。
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