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第二章

勇者参上?

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 さっと、一瞬日が陰った。
 雲でも?

 そう思ったけれど、笑い声とともに一人の男が空から降ってきて、すぐに雲じゃないと気付き見上げれば、空には巨大なワイバーンの姿が。

 そして、少し浅黒い肌の色をした黒髪の青年が、やけに派手な剣を構え、山姥姉妹に向ける。
 おでこに派手なオレンジ色のターバンを巻き、アラビアンナイトっぽい衣装に革の胸当てだけ着けた謎の人物。

 ……何者でしょう?

 「ん? 俺か? 俺はな……、聞いて驚け! 勇者だ!」

 ほー……。何か面倒臭そうなキャラだな。
 レストはほう、と僅かに感心する様子だから、強さの面では実力があるのかもしれないけど。
 勇者と聞いてキラキラと期待の眼差しを無条件に向けるロイスは……ちょっと心配だよ、お姉さんは。

 「いや、誰が姉さんだ。同い年の幼馴染みだろうが!」

 「ははは、美味そうな匂いに釣られて来てみれば、見覚えのある奴らに絡まれてる君たちを見つけたのでな。
 ……ちなみにそちらの料理の数々、誰の作かな?」

 「一応皆で協力して作りましたので、私達……って事で良いかと」
 「まぁ、主導してたのはそこのシャリーだけどな」
 「ほう! それはそれは……。……その、大変言い難いのだが、今は俺はとても腹が減っていてな。コイツ等倒した後で良い、何か飯を作ってはくれぬか?」
 「はぁ、あの人たちに料理対決と言われて作った物の余りのアレンジで良ければ作りますけど……」
 「ありがたい! では。 魔王の四天王最弱に仕える側近の部下なんてビミョーなモブは俺がパパっとやっつけてやるぜ!」

 言うが早いか、自称勇者は早速老婆たちへ斬りかかっていく。
 レストは念の為と私達を背に庇い、剣を構えて警戒している。

 が。

 未だ自称でしかないものの、成程自称するだけの実力はあるらしく、一人で六人相手に翻弄し、勇者優位で戦いが進んでいく。

 ん? 詳しい戦況?
 ……あのー、これバトル漫画じゃないんで、剣戟の解説なんて私にはできませんよ?

 あ、一人斬り伏せられた。また一人。
 「くっ、これは分が悪いね。仕方ない、今は引くよ、覚えときな!」

 捨て台詞を残して老婆シスターズは去った。
 私達の命の危機と共に。

 「あ、危ないところをありがとう御座います」
 「何、ああいう連中から善良な一般市民を助けることこそ勇者の務め。当然の事をしたまでさ! ……その、ただ礼、と言ってはなんだが……飯を頼む」

 「あっ、はい。すぐ用意しますんでちょっとだけ待ってくださいね!」

 私は早速調理に取り掛かるのだった。
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