屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜

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第二章

RPGのお約束。

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 「くっ……、腹は膨れたけどまだ口の中が辛い……」

 一人だけ甘味を貰えなかったロイスは、未だグチグチと泣き言を漏らしている。
 最初こそ少しは可哀想と思っていたけど、そろそろウザくなってきた。

 何せもうそろそろ空が赤く色付き始めているんだもの。
 昼過ぎからずっとだからね……、

 「次で今日は野宿だな」
 「そうですね。夕飯、何が食べたいですか?」
 「何、と言う程でもないが温かい汁物は欲しいな」
 「ああ、それは私も同感です。なら味噌煮込みうどんにしようかな……」

 そんな会話を交わしてからしばらく。

 「「「「…………………………、」」」」

 見えてきた広場に、何やら見覚えのある建物が。
 そう、茅葺き屋根に土壁の一軒家が。赤い傘までそっくりに。

 いや、茅葺き屋根の家というだけなら、このあたりの民家なんて皆似たようなもの……なのだが。
 あの入り口の暖簾やベンチまであまりにもそっくりで……

 流石に私も背筋が少し寒くなる。

 「……、これから夕飯だし、茶も菓子も要らねぇよな? 声掛けなくていいよな?」
 ちゃっかりレストさんの背後に身を隠しながらロイスがつぶやく。

 が、それに返事をする前に、暖簾をしまいに来たらしいお婆さんが店の外に……

 「ひいぃぃぃ!」

 その顔は、一度見たらそうそう忘れられない……山姥の如き面構え。
 先程の茶屋で出会った老婆にうり二つ。

 しかし。
 「何だい、失礼な小僧だね!」
 聞き覚えのある台詞を、老婆が吐く。
 まるで昼間ロイスに会った記憶がすっぽり抜け落ちたように。

 「す、すいませんっ、ですが俺たち客じゃないんで! お構いなく!」
 「なんだい、銭落としてってくれんなら汁粉の1杯くらいごちそうしてやろうと思ったのにねぇ?」

 お汁粉、か。それがこの老婆の提案でなければ喜び勇んで乗ったんだろうけど。
 私達は自分たちで用意した煮込みうどんを食べ、交代で見張りをしつつ眠りに就いた。

 「お、俺、一番に見張る。見晴らせてくれ。真夜中の見張り番とか絶対したくねぇ!」

 と、強硬に主張するロイスを最初に、レストさん、私の順で見張りをする。
 子どものミルフィちゃんは免除で。寝る子は育つ、って言うし。

 結局その晩は特に何も起こらず無事に夜明けを迎え、私達は再び旅路を急いでいたのだけど。

 「…………なぁ、俺何か幻覚が見えるんだけど。どうしよう、昨日はたっぷり寝たつもりだったけど、やっぱり眠りが浅くて寝不足なのかな」
 「いや、もしアンタの見てるのが例の茶屋なら……、私も見えてるよ」
 「俺にも見えるな。集団で同じ夢でも見ているのでない限り。あれは現実の物だろう」

 ……私達、ちゃんと前に進めているんだよね?
 ここ、RPGゲームお約束の迷いの森とかじゃないよね?

 ちょ、いつの間にホラーな世界になっちゃったの、この世界!
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