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第二章

峠のお茶屋さん

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 「おお、山だ……な」
 「うん、山ね」
 「お山だー!」

 「ここらじゃ一番高い山を含む長い山脈だからな。山を登る道も、谷間を抜けていく峠道も、トンネルを掘った元坑道の荷運び専用の有料道路もあるが。たぶん峠を超えていくのが一番一般的な道だろうな」

 湖の町をでて数日。
 この国の王都へ向かう事にしたシャリーの一行は、川に沿ってきたこれ迄の道程とは一転、山の中を行く街道を進んでいた。

 山が一つ二つ程度のはこれまでも見かけた事はあるからそう騒ぐこともないけれど、これは……。
 アルプスとも言いたくなる青々とした山脈が続き、特に高い山の上にはうっすら雪化粧のある迫力ある景色の前では、語彙も少なくなるというもの。

 この内のいくつかの山ではそれぞれ鉄や金銀宝石が採掘されるようで、既にいくつかは掘り尽くし廃坑になった山もあるとか。
 しかし残された廃坑が勿体ないと手を加え、定期的に管理の手を入れる事で、直線敵かつ獣の驚異のない通路として使っているというあたり、この辺りを治める領主はなかなかやり手らしい。

 まぁ、その管理費の財源としてそこそこ良いお値段の通行費を徴収されるので、私達はそのルートは選ばず、無難な峠道を選んだのだけど。

 「確かに、金さえあれば天気も気にせず行けるその道を行きたくなる気持ちも分かるぜ。
 出入り口を領主の私兵が固めているから、中で盗賊に襲われる確率も低い。獣や魔物の被害もない。
 唯一外の風や日を浴びられないのが難点だが、食糧みたいな直射日光がダメージになる品を運んでいるなら、荷運び役の気分より荷の質のが大事だもんな」

 しかし、何度も言うが私達が行くのは峠の街道。

 ここも領主の手入れが行き届き、道はしっかり整備されているけど、すぐ道の脇に山の草木が迫っている以上、獣や魔物の被害をゼロにする事は不可能で。
 一定距離ごとに兵士の駐屯所が設けられてはいるが、最低限の備えは通行者側にも求められる。

 「レストさん、頼りにしてますよ」
 「無論、それが仕事だからな。任せておけ」
 「しかし、そろそろ良い時間だろ? 昼飯どうする?」

 「この国の街道には一定区間ごとに休憩に使える広場が設けられている。
 ……一部困った領主の領地だと、整備を怠った道もあったりするが、ここは大勢が行き来する道であるし、ここの領主は領地の整備に積極的な方だ。
 次に見つけたら休憩にしよう」

 そんな会話をした直後。

 「ん……? あれ、は?」
 レストが言った休憩スペースとは基本馬車を避けておけるスペースがあるだけの何もない広場が普通、……なんだけどね?

 なーぜーか、茅葺屋根に土壁の一軒家がぽつりと一軒。
 暖簾にベンチに野点傘。
 時代劇に出てきそうな由緒正しきお茶屋さんが……

 え、何で?
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