屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜

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第一章

勝負の結果は……?

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 朝方は漁から戻った腹ペコ漁師が多かった客層が、時計の短針が上向くにつれて、その漁師達が獲って来た魚を“捌く”人間と、それらを買い付けに来た商店や運送業の業者や奥方様らへと移り変わっていく。

 すると、これまであまり頼まれなかったチキンがよく出るようになる。

 「あらまぁ、梅の風味のおかげでさっぱり食べられるわ、うん、美味しい」
 「間食の罪悪感が少ないのよね、これ」
 「かき揚げも野菜たっぷりでヘルシーだわ。でもボリュームはたっぷりで食べごたえはあるわね」
 「でもやっぱりこの米が美味しいわね。米は毎日食べてるのに、こういう食べ方は思いつかなかったわぁ」
 「そうね、米って言うとどうしてもご飯のイメージが強くて。寿司はあるけど、ここまで気軽に食べられて、お腹に溜まるるオヤツやランチにピッタリなメニューがあるとはね」
 「あら、ウチの宿六はビール片手に喜んで2つ3つ食べちゃうでしょうよ!」

 時計の針が天辺に揃う頃には、荷を運んで来た商船から次々荷が下ろされ、新たな荷を運び入れてはまた去って行く、その往来が激しくなる。

 その合間に小腹を満たしに来る下級船員である水夫たちも居れば、下の作業中は手持ち無沙汰になりがちな上級船員達が噂を聞きつけやって来る。

 「なぁ、これいつまでもつ? もう1、2コ買ってって夜食にしたいんだが……」
 なんて切実な水夫さんが居たかと思えば。
 「私の地元は小麦の産地でな、米よりパン派なのだが……、これは美味いな。こんどご飯派の気に食わない野郎に自慢してやろう」
 なんて船長さんらしき、腕に何本もラインの入った上着を着た髭のオジサンも居た。

 今はまだ寒い季節だからだけど、持ち込むのは水の上に浮かぶ船。それも昔ながらの木造船。船底からはバラスト水の臭いがする、その近くに部屋を持つ下級船員の大部屋では……
 「すぐにお食べいただく方がよろしいかと……。カビてしまわぬ保証は一切できかねますので」

 水夫さんにはよ~く念押ししたから、多分航海中に食中毒なんて悲劇は起きなかった……と、思いたい。

 夕方近くになると、港は人が疎らになる。

 「……どうする? まだ少し仕込みのストックは残ってるが。飲食店街辺りにでも移動するか?」

 「いいえ、欲張りすぎるのはやめておきましょう。この厳しい街でこれだけ成果をあげられたなら快挙だと思う」

 「それじゃ、残りは俺達で美味しくいただくか。作ってる最中も匂いにやられていつ腹が鳴るかとヒヤヒヤしてたぜ。テリヤキと焼き肉は絶対外せないよな」

 こうして、私達の勝負は一先ず終了したのだった。
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