屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜

文字の大きさ
上 下
50 / 125
第一章

勝負の結果は……?

しおりを挟む
 朝方は漁から戻った腹ペコ漁師が多かった客層が、時計の短針が上向くにつれて、その漁師達が獲って来た魚を“捌く”人間と、それらを買い付けに来た商店や運送業の業者や奥方様らへと移り変わっていく。

 すると、これまであまり頼まれなかったチキンがよく出るようになる。

 「あらまぁ、梅の風味のおかげでさっぱり食べられるわ、うん、美味しい」
 「間食の罪悪感が少ないのよね、これ」
 「かき揚げも野菜たっぷりでヘルシーだわ。でもボリュームはたっぷりで食べごたえはあるわね」
 「でもやっぱりこの米が美味しいわね。米は毎日食べてるのに、こういう食べ方は思いつかなかったわぁ」
 「そうね、米って言うとどうしてもご飯のイメージが強くて。寿司はあるけど、ここまで気軽に食べられて、お腹に溜まるるオヤツやランチにピッタリなメニューがあるとはね」
 「あら、ウチの宿六はビール片手に喜んで2つ3つ食べちゃうでしょうよ!」

 時計の針が天辺に揃う頃には、荷を運んで来た商船から次々荷が下ろされ、新たな荷を運び入れてはまた去って行く、その往来が激しくなる。

 その合間に小腹を満たしに来る下級船員である水夫たちも居れば、下の作業中は手持ち無沙汰になりがちな上級船員達が噂を聞きつけやって来る。

 「なぁ、これいつまでもつ? もう1、2コ買ってって夜食にしたいんだが……」
 なんて切実な水夫さんが居たかと思えば。
 「私の地元は小麦の産地でな、米よりパン派なのだが……、これは美味いな。こんどご飯派の気に食わない野郎に自慢してやろう」
 なんて船長さんらしき、腕に何本もラインの入った上着を着た髭のオジサンも居た。

 今はまだ寒い季節だからだけど、持ち込むのは水の上に浮かぶ船。それも昔ながらの木造船。船底からはバラスト水の臭いがする、その近くに部屋を持つ下級船員の大部屋では……
 「すぐにお食べいただく方がよろしいかと……。カビてしまわぬ保証は一切できかねますので」

 水夫さんにはよ~く念押ししたから、多分航海中に食中毒なんて悲劇は起きなかった……と、思いたい。

 夕方近くになると、港は人が疎らになる。

 「……どうする? まだ少し仕込みのストックは残ってるが。飲食店街辺りにでも移動するか?」

 「いいえ、欲張りすぎるのはやめておきましょう。この厳しい街でこれだけ成果をあげられたなら快挙だと思う」

 「それじゃ、残りは俺達で美味しくいただくか。作ってる最中も匂いにやられていつ腹が鳴るかとヒヤヒヤしてたぜ。テリヤキと焼き肉は絶対外せないよな」

 こうして、私達の勝負は一先ず終了したのだった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。 しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。 それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。 一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。 しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。 加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。 レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

処理中です...