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第一章

米どころで考える勝負メシ

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 「……はぁ、美味しかったわぁ」

 その日の晩。宿のベッドでゴロゴロしながら、昼に食べた玉子焼きの味を思い出す。
 優しい甘さと僅かな塩味が絶妙なバランスを保った美味い出汁が、噛んだ瞬間ジュワリと溢れ――しかし共に口に入るシャリがふやけないこれまた絶妙な分量があふれる。
 計算しつくされた芸術品。

 他にもネタはいくつか食べた。
 そのどれもが素晴らしい仕事によりとても美味しかった。
 でもあの玉子は、日本の銀座の回らない超高級寿司店とでも勝負できるんじゃないか? そう思える味だった。

 他にも米に合うファーストフードが色々と店を出していて。
 流石に全部は予算的にもお腹の余裕的にも回りきれなかったけど、どれもが味のレベルがファーストフードと侮れない、そういう料理ばかりで。

 これまで、“物珍しさ”を多少なりとも武器にしてきた、それがあまり通用しなさそうな、食の――それもかつての故郷を思わせる街。

 「はぁー、どう勝負したもんかね……」

 元々は米に惹かれ、米を大量購入したいが為に目指してきた街。
 念願の米は最近はよく食べるようになったのだから、米だけ買って、商売は別の町に行ってやる?

 「勝てなくても負けないように……も、今回は難しそう……」

 だけど、全く戦わないまま不戦敗というのもちょっと情けない気がする。逃げ癖をこんな早くから、こんなところでつけたくない。

 だからこそ悩む。

 おにぎりもお寿司もこの町ではポピュラーで、味のレベルも高い。
 以前人気だったメニューを投入しても、ここでは通用するかどうか。
 丼物の種類を揃えるにしても……

 そこでふと、日本の某ファーストフード店のメニューを思い出す。

 「あれなら……!」

 とはいえ、半端に手を出すと失敗する可能性が高い。
 片方では長らく人気メニューだったものを、あとからちょっとマネした商品がボロクソに叩かれていたからね。

 「今回はもっとしっかりリサーチと試作を重ねないと……」

 翌日もロイスと街を周り買い物をし、試作に励む。
 そんな事を2、3日程続け――

 「ロイス、これならどうよ!?」
 「ん……うん、イケる。味はもちろん食感や匂い、具のバランスも悪くないし、食べ易さの面でもクリアしてると思うぜ?」

 「ああ。ミルフィもぼろぼろこぼさず綺麗に食べられてるしな、食べ易さについては満点だと思うぞ」
 「これ、おにぎりよりおいしいの!」
 「まあ、子供は好きだろうな。あと野郎どもも。年寄りの意見は……俺には予想がつかないが」

 「それじゃ、今回の勝負メシはこれに決まりね、“ご飯バーガー”!」
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