38 / 125
第一章
農園の街
しおりを挟む
「ま、街だ……」
「でも、まだ湖は見えないから、目的の街じゃないよね?」
「ああ。まだようやく湖までの折返し地点に近い場所だな。だが、大河からも湖からも若干距離のあるここらは、この辺りじゃ年中適度に乾いた希少な土地だ」
ほう……。
「流石に最近野宿続きだし、今日は宿に泊まろうか」
「おう、賛成だ」
早速街へ入り、まずは宿を確保する。
そして恒例の市場への視察へGO!
「うわぁ、なんか久々に麦を見た……」
最近は米を食べる地域ばかり巡っていたからなぁ。
「この辺りでは貴重な小麦の他、あわやひえなどの穀物や、湿地では育たない野菜を育てられるからな。……ちなみに出来の良くないのは家畜の餌にして、そいつらの糞を肥料にして畑に撒く。
ここらの肉は野生の物とはまた違った旨さがあると評判は悪くない」
確かに町の外には畑や放牧地が延々と広がっていた。
街全体が農園であるかのような、そんな街。
そのせいか、この国に来てから珍しく無かった魚が市場にあまり並んでなく、しかも加工品ばかりで少々お高め。
代わりに野菜や肉、牛乳に卵は豊富にお安く並んでいた。
「これまた、嬉しいけど困るラインナップね」
あの国境の街の品ぞろえには劣るけど、何でも作れるが故に、メニューの候補を絞るにも苦労する。
「……取り敢えず先に食事をしましょう」
こういうときはまず街の料理を食べてみてから。
この街の人が好む味付けや料理の傾向を探り、その中から奇抜すぎない、でも普段は食べないような料理を考える。
勿論大変なんだけど、それこそが商売の醍醐味だからね。
「へぇ、煮込み料理が多いのね」
「この季節は昼夜の寒暖差が激しいからな。昼はともかく朝晩は温かいスープや煮込みが食べたくなるのが人情ってもんさ」
うーん、これはシチューなんかじゃありきたり過ぎて見向きもされなさそうだな。
「あ、白菜が美味しい」
「基本この街は野菜が美味いが、冬は白菜、春にはキャベツが特に美味いと評判だな」
ほう。
「あ、玉ねぎも甘い。豚肉の脂も甘いし、けど重くもしつこくもなくて美味しいわ」
野菜も肉も美味しい。
そして濃いめの味付けのが好まれそうな雰囲気。
「となると……、ちょっと一工夫必要だろうけど、ここはアレで決まりかな」
子供にも人気で、お父さんたちの麦酒のお供に最適なあれ。
「ラードって売ってるかしらね? 無かったら作らないと……」
「決めたのか?」
「ええ。もう一度市場に食材を見定めに行きましょ。取り敢えず白菜と豚バラ肉は絶対確保するからね!」
「でも、まだ湖は見えないから、目的の街じゃないよね?」
「ああ。まだようやく湖までの折返し地点に近い場所だな。だが、大河からも湖からも若干距離のあるここらは、この辺りじゃ年中適度に乾いた希少な土地だ」
ほう……。
「流石に最近野宿続きだし、今日は宿に泊まろうか」
「おう、賛成だ」
早速街へ入り、まずは宿を確保する。
そして恒例の市場への視察へGO!
「うわぁ、なんか久々に麦を見た……」
最近は米を食べる地域ばかり巡っていたからなぁ。
「この辺りでは貴重な小麦の他、あわやひえなどの穀物や、湿地では育たない野菜を育てられるからな。……ちなみに出来の良くないのは家畜の餌にして、そいつらの糞を肥料にして畑に撒く。
ここらの肉は野生の物とはまた違った旨さがあると評判は悪くない」
確かに町の外には畑や放牧地が延々と広がっていた。
街全体が農園であるかのような、そんな街。
そのせいか、この国に来てから珍しく無かった魚が市場にあまり並んでなく、しかも加工品ばかりで少々お高め。
代わりに野菜や肉、牛乳に卵は豊富にお安く並んでいた。
「これまた、嬉しいけど困るラインナップね」
あの国境の街の品ぞろえには劣るけど、何でも作れるが故に、メニューの候補を絞るにも苦労する。
「……取り敢えず先に食事をしましょう」
こういうときはまず街の料理を食べてみてから。
この街の人が好む味付けや料理の傾向を探り、その中から奇抜すぎない、でも普段は食べないような料理を考える。
勿論大変なんだけど、それこそが商売の醍醐味だからね。
「へぇ、煮込み料理が多いのね」
「この季節は昼夜の寒暖差が激しいからな。昼はともかく朝晩は温かいスープや煮込みが食べたくなるのが人情ってもんさ」
うーん、これはシチューなんかじゃありきたり過ぎて見向きもされなさそうだな。
「あ、白菜が美味しい」
「基本この街は野菜が美味いが、冬は白菜、春にはキャベツが特に美味いと評判だな」
ほう。
「あ、玉ねぎも甘い。豚肉の脂も甘いし、けど重くもしつこくもなくて美味しいわ」
野菜も肉も美味しい。
そして濃いめの味付けのが好まれそうな雰囲気。
「となると……、ちょっと一工夫必要だろうけど、ここはアレで決まりかな」
子供にも人気で、お父さんたちの麦酒のお供に最適なあれ。
「ラードって売ってるかしらね? 無かったら作らないと……」
「決めたのか?」
「ええ。もう一度市場に食材を見定めに行きましょ。取り敢えず白菜と豚バラ肉は絶対確保するからね!」
73
お気に入りに追加
989
あなたにおすすめの小説
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
【完結】神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました
土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。
神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。
追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。
居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。
小説家になろう、カクヨムでも公開していますが、一部内容が異なります。
【番外編】貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。
譚音アルン
ファンタジー
『貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。』の番外編です。
本編にくっつけるとスクロールが大変そうなので別にしました。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる