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第一章

農園の街

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 「ま、街だ……」
 「でも、まだ湖は見えないから、目的の街じゃないよね?」
 「ああ。まだようやく湖までの折返し地点に近い場所だな。だが、大河からも湖からも若干距離のあるここらは、この辺りじゃ年中適度に乾いた希少な土地だ」

 ほう……。
 「流石に最近野宿続きだし、今日は宿に泊まろうか」
 「おう、賛成だ」

 早速街へ入り、まずは宿を確保する。
 そして恒例の市場への視察へGO!

 「うわぁ、なんか久々に麦を見た……」
 最近は米を食べる地域ばかり巡っていたからなぁ。

 「この辺りでは貴重な小麦の他、あわやひえなどの穀物や、湿地では育たない野菜を育てられるからな。……ちなみに出来の良くないのは家畜の餌にして、そいつらの糞を肥料にして畑に撒く。
 ここらの肉は野生の物とはまた違った旨さがあると評判は悪くない」

 確かに町の外には畑や放牧地が延々と広がっていた。
 街全体が農園であるかのような、そんな街。

 そのせいか、この国に来てから珍しく無かった魚が市場にあまり並んでなく、しかも加工品ばかりで少々お高め。
 代わりに野菜や肉、牛乳に卵は豊富にお安く並んでいた。

 「これまた、嬉しいけど困るラインナップね」
 あの国境の街の品ぞろえには劣るけど、何でも作れるが故に、メニューの候補を絞るにも苦労する。

 「……取り敢えず先に食事をしましょう」
 こういうときはまず街の料理を食べてみてから。
 この街の人が好む味付けや料理の傾向を探り、その中から奇抜すぎない、でも普段は食べないような料理を考える。

 勿論大変なんだけど、それこそが商売の醍醐味だからね。

 「へぇ、煮込み料理が多いのね」
 「この季節は昼夜の寒暖差が激しいからな。昼はともかく朝晩は温かいスープや煮込みが食べたくなるのが人情ってもんさ」

 うーん、これはシチューなんかじゃありきたり過ぎて見向きもされなさそうだな。

 「あ、白菜が美味しい」
 「基本この街は野菜が美味いが、冬は白菜、春にはキャベツが特に美味いと評判だな」

 ほう。

 「あ、玉ねぎも甘い。豚肉の脂も甘いし、けど重くもしつこくもなくて美味しいわ」

 野菜も肉も美味しい。
 そして濃いめの味付けのが好まれそうな雰囲気。

 「となると……、ちょっと一工夫必要だろうけど、ここはアレで決まりかな」

 子供にも人気で、お父さんたちの麦酒のお供に最適なあれ。

 「ラードって売ってるかしらね? 無かったら作らないと……」
 「決めたのか?」
 「ええ。もう一度市場に食材を見定めに行きましょ。取り敢えず白菜と豚バラ肉は絶対確保するからね!」
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