36 / 125
第一章
新しい馬車
しおりを挟む
さて、同行者が増えたのは良いのですが、困った事が一つ。
「……絶対に狭いよね?」
「ああ。こないだはすぐ街だったから気にしなかったけど、数日がかりの長旅であれはキツイし、ミルフィちゃんにとっても危ないよな」
元々馬車そのものはそこまで小さくはない、のだが。
何分この馬車はお貴族様の馬車や乗り合い馬車と違って、屋台用に改造した荷馬車なのだ。
少しくらいの間なら、ミルフィちゃんくらいの子供なら中に乗せられるけど、常設のキッチンと、移動中は所狭しと調理器具が詰めてある。
調理器具は使い方を間違えれば凶器になる物も少なくない。
そもそも人の乗る場所ではないのだ。
だから、ロイスもシャリーも移動中は御者台に並んで座って交代でクロエの手綱を握ってきたのだ。
そこへガタイの良いレストさんが乗る。
……これもこないだは短時間だから耐えたけど、結構窮屈だったんだよね。
そんな訳で、だ。
「馬車の新調をしたいと思います!」
「おおー!」
「ただ、丸っと買い換える程の予算は流石に用意できません……」
「お……おぅ?」
「そこでっ、リフォームしたいと思います!」
「はーい!」
「そんな訳で……、皆さん手元に工具がありますね?」
「「「はい!」」」
「……では。設計図を公表します。これを元に、皆さん頑張って下さい、以上! 作業開始!」
レストさんの家の前庭を借り、皆でDYIに励む。
まず御者台のすぐ後ろを少しへこませ屋根付きの椅子を取り付ける。
夜には一人分の屋根付き寝台に早替りする仕様のそこには、基本ミルフィに使ってもらう予定だ。
荷台の中のキッチンにもこっそり設備を追加したり、平屋根の上に荷台を設置したりとあれこれ手を加えていく。
この作業には肉体労働専門のレストさんが大いに戦力として活躍してくれた。
「……まさか初仕事が護衛任務でなく大工仕事になるとは思わなかったな」
そのレストさん本人は苦笑いしてたけど。
「ああ、これから共に旅をする仲間だ。その“さん”てのやめて貰って良いか? 俺は冒険者だからな、あまり丁寧にされると落ち着かん」
「分かりました、『レスト』。……これで良いですか?」
「ああ」
こうして馬車に手を加えること約三日。
荷台に手を加えて重くなった分、足回りも整備し直し、頑丈かつ車輪の滑りも良くしてクロエの負担を少しでも減らす工夫を施して。
れんこんなどこの街の特産品かつ日持ちのする物を買い込み積み込んで。
「それじゃ、いよいよ明日の朝にはこの街を出るけど、忘れ物とかやり残した事はもう無い? ちゃんと今夜のうちに全部済ませてね?」
「ああ、了解した」
「はーい!」
目指すはお米の街。そこまでに今度はどんな食材と巡り会えるかな……?
「……絶対に狭いよね?」
「ああ。こないだはすぐ街だったから気にしなかったけど、数日がかりの長旅であれはキツイし、ミルフィちゃんにとっても危ないよな」
元々馬車そのものはそこまで小さくはない、のだが。
何分この馬車はお貴族様の馬車や乗り合い馬車と違って、屋台用に改造した荷馬車なのだ。
少しくらいの間なら、ミルフィちゃんくらいの子供なら中に乗せられるけど、常設のキッチンと、移動中は所狭しと調理器具が詰めてある。
調理器具は使い方を間違えれば凶器になる物も少なくない。
そもそも人の乗る場所ではないのだ。
だから、ロイスもシャリーも移動中は御者台に並んで座って交代でクロエの手綱を握ってきたのだ。
そこへガタイの良いレストさんが乗る。
……これもこないだは短時間だから耐えたけど、結構窮屈だったんだよね。
そんな訳で、だ。
「馬車の新調をしたいと思います!」
「おおー!」
「ただ、丸っと買い換える程の予算は流石に用意できません……」
「お……おぅ?」
「そこでっ、リフォームしたいと思います!」
「はーい!」
「そんな訳で……、皆さん手元に工具がありますね?」
「「「はい!」」」
「……では。設計図を公表します。これを元に、皆さん頑張って下さい、以上! 作業開始!」
レストさんの家の前庭を借り、皆でDYIに励む。
まず御者台のすぐ後ろを少しへこませ屋根付きの椅子を取り付ける。
夜には一人分の屋根付き寝台に早替りする仕様のそこには、基本ミルフィに使ってもらう予定だ。
荷台の中のキッチンにもこっそり設備を追加したり、平屋根の上に荷台を設置したりとあれこれ手を加えていく。
この作業には肉体労働専門のレストさんが大いに戦力として活躍してくれた。
「……まさか初仕事が護衛任務でなく大工仕事になるとは思わなかったな」
そのレストさん本人は苦笑いしてたけど。
「ああ、これから共に旅をする仲間だ。その“さん”てのやめて貰って良いか? 俺は冒険者だからな、あまり丁寧にされると落ち着かん」
「分かりました、『レスト』。……これで良いですか?」
「ああ」
こうして馬車に手を加えること約三日。
荷台に手を加えて重くなった分、足回りも整備し直し、頑丈かつ車輪の滑りも良くしてクロエの負担を少しでも減らす工夫を施して。
れんこんなどこの街の特産品かつ日持ちのする物を買い込み積み込んで。
「それじゃ、いよいよ明日の朝にはこの街を出るけど、忘れ物とかやり残した事はもう無い? ちゃんと今夜のうちに全部済ませてね?」
「ああ、了解した」
「はーい!」
目指すはお米の街。そこまでに今度はどんな食材と巡り会えるかな……?
63
お気に入りに追加
921
あなたにおすすめの小説
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
公爵家の家族ができました。〜記憶を失くした少女は新たな場所で幸せに過ごす〜
月
ファンタジー
記憶を失くしたフィーは、怪我をして国境沿いの森で倒れていたところをウィスタリア公爵に助けてもらい保護される。
けれど、公爵家の次女フィーリアの大切なワンピースを意図せず着てしまい、双子のアルヴァートとリティシアを傷付けてしまう。
ウィスタリア公爵夫妻には五人の子どもがいたが、次女のフィーリアは病気で亡くなってしまっていたのだ。
大切なワンピースを着てしまったこと、フィーリアの愛称フィーと公爵夫妻から呼ばれたことなどから双子との確執ができてしまった。
子どもたちに受け入れられないまま王都にある本邸へと戻ることになってしまったフィーに、そのこじれた関係のせいでとある出来事が起きてしまう。
素性もわからないフィーに優しくしてくれるウィスタリア公爵夫妻と、心を開き始めた子どもたちにどこか後ろめたい気持ちを抱いてしまう。
それは夢の中で見た、フィーと同じ輝くような金色の髪をした男の子のことが気になっていたからだった。
夢の中で見た、金色の花びらが舞う花畑。
ペンダントの金に彫刻された花と水色の魔石。
自分のことをフィーと呼んだ、夢の中の男の子。
フィーにとって、それらは記憶を取り戻す唯一の手がかりだった。
夢で会った、金色の髪をした男の子との関係。
新たに出会う、友人たち。
再会した、大切な人。
そして成長するにつれ周りで起き始めた不可解なこと。
フィーはどのように公爵家で過ごしていくのか。
★記憶を失くした代わりに前世を思い出した、ちょっとだけ感情豊かな少女が新たな家族の優しさに触れ、信頼できる友人に出会い、助け合い、そして忘れていた大切なものを取り戻そうとするお話です。
※前世の記憶がありますが、転生のお話ではありません。
※一話あたり二千文字前後となります。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない
猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。
まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。
ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。
財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。
なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。
※このお話は、日常系のギャグです。
※小説家になろう様にも掲載しています。
※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。
7個のチート能力は貰いますが、6個は別に必要ありません
ひむよ
ファンタジー
「お詫びとしてどんな力でも与えてやろう」
目が覚めると目の前のおっさんにいきなりそんな言葉をかけられた藤城 皐月。
この言葉の意味を説明され、結果皐月は7個の能力を手に入れた。
だが、皐月にとってはこの内6個はおまけに過ぎない。皐月にとって最も必要なのは自分で考えたスキルだけだ。
だが、皐月は貰えるものはもらうという精神一応7個貰った。
そんな皐月が異世界を安全に楽しむ物語。
人気ランキング2位に載っていました。
hotランキング1位に載っていました。
ありがとうございます。
デブだからといって婚約破棄された伯爵令嬢、前世の記憶を駆使してダイエットする~自立しようと思っているのに気がついたら溺愛されてました~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
デブだからといって婚約破棄された伯爵令嬢エヴァンジェリンは、その直後に前世の記憶を思い出す。
かつてダイエットオタクだった記憶を頼りに伯爵領でダイエット。
ついでに魔法を極めて自立しちゃいます!
師匠の変人魔導師とケンカしたりイチャイチャしたりしながらのスローライフの筈がいろんなゴタゴタに巻き込まれたり。
痩せたからってよりを戻そうとする元婚約者から逃げるために偽装婚約してみたり。
波乱万丈な転生ライフです。
エブリスタにも掲載しています。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる