屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜

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第一章

おむすび弁当

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 「ここか、指定された場所って」

 その広場では、私達の他にも軽食等の飲食の屋台が幾つも並び、営業の準備を着々と進めていた。

 これまで、ある程度自由に営業場所を決められたけれど、この街ではそうはいかない。
 この居並ぶライバル達としのぎを削りながらの勝負に勝たねば儲けられない。

 私はロイスと互いに頷きあう。

 ロイスがそそくさと屋台の設営を始め、その傍らで私は早速仕込みの仕上げに入る。

 用意するのは横長の長方形の皿。……勿論簡易の使い捨ての皿だが。

 おにぎりは、そのサイズに合う俵型のおむすびを数種類、皿一つにつき三種好きな物を選べるよう、見栄えを気にしつつ種類ごとに並べ、トングを付ける。

 漬物は最初からトレーの所定の場所にきゅうりのガーリックポン酢漬けを盛り付ける。

 おかずは唐揚げ2個か筑前煮を選べるよう、それぞれ一食ずつ皿にサイズを合わせたカップに入れる。

 カップに豚汁を入れて蓋をする。

 これにフォークとスプーンを付けてワンセット。

 オペレーションが面倒臭くなるのでその他の組み合わせはナシの方向で行く。

 筑前煮は一晩置いて味もしっかり馴染んでいるし、からあげは2度揚げ用に鍋を2つ用意して。

 ……よし、豚汁もできた。

 「漬物とおかずの盛り付けはロイス、頼んだよ」
 「おう」

 そして私は、ここからひたすらおにぎりを握り、焼きおにぎりを焼く、その作業にとりかかる。

 すると、焼きおにぎりに塗った醤油が、程良く焦げた香ばしい匂いが炊いた米の、スイーツの甘さとはまた違う甘い香りと相まって何とも食欲をそそる匂いを辺りに振りまく。

 豚汁の味噌の匂いと、そして唐揚げが放つ肉の匂い。

 流石にこれまでの田舎町と違って、周囲の屋台も次第にいい匂いを放ち始める。
 匂い作戦は相乗効果で広場に人を集めるけれど、それだけでウチの店に呼び込むには少し弱い。

 あちらの串焼き肉のタレの匂いは、男性ならたまるまい。

 だからこちらは色とりどりのおむすびで目を楽しませる作戦だ。

 そのせいかな? うちに並ぶ客の大半が女性か子供。
 だけどそこは田舎町とは違って、そもそもの人数が違う。

 女子供だけだろうとそれなりに人数が並ぶ。

 むしろ男しか並ばない串焼き肉の屋台より客数は多いくらいだ。

 「何、この白い粒々……。これだけだと大して味しないのに、おかずと食べると何故か美味しいの……」
 「味はともかく食感が……、すごく食べやすい」
 「このスープも、食べたことのない味だけど、具だくさんだしあたたまるわ」

 と、女性陣の評判も上々だ。

 よしよし、このままのペースを保ってくれれば……
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