屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜

文字の大きさ
上 下
14 / 125
第一章

国境の街

しおりを挟む
 そこは、この世界に転生して以降にこれまで見た街のどこよりも栄え、多くの人が行き交い、市場にも物が溢れている。

 かつて日本の東京の、渋谷に原宿、上野のアメ横他、雑多な人混みを見慣れた目にはまだ序の口レベルながら、シャリーは流石に感心しつつその町並みに見入った。

 そんな前世の記憶の無いロイスは目をキラキラと輝かせている。

 「スゲー、今日って祭りか? え、違う? こんなに人が居るのに?」
 「ロイス、気持ちは分かるけど少し抑えて。じゃないと田舎のお上りさんそのものだよ」

 私達が元々住んでた街も別に田舎町ではなく、むしろそこそこ栄えた街ではあったけど。
 国境にあって、この国の物が集まり隣国の物も入ってくるこの街には及ばない。

 だけど、かつて私達の街に来てキョロキョロしてた本当の田舎から出て来た人というのはまぁ地元の人ならすぐ分かる。
 それを思い出したのか、ロイスはコホン、と一つ咳払いをしておすまし顔を気取った。

 「取り敢えず宿を取ろう」

 これまではすぐに市場か商業ギルドに直行していた私達だけど、うどんの時の反省から、まずは街を見て歩く事にして、まずはその日の宿を確保する。

 「やっぱ店が多いな、この街。高そうな店も勿論多いけど、庶民向けの店も少なくない。品揃えも悪くない」
 「うん、だけど今まであったような市場はあんまり見かけないね。行商の人も居るけど、営業できる場所はすごく限られてるっぽいね」

 とても整った、日本で言うオフィス街の様な街並み。
 日本の様に背の高いビル群は当然ないけど、表通りに並ぶのは高そうなブランドショップみたいな店構えの建物ばかり。

 二、三本奥へ入ると庶民的な商店街もあるのだけど、他の町には当たり前のようにあるアジアンテイストな市場はほとんどなく、せいぜい街の広場の露店をたまに見かける程度。

 他の道端で行商している姿は無い。

 試しにお昼に庶民的な食堂に立ち寄ってみる。
 「わ、肉も魚も選び放題だ!」

 海や川が遠い為鮮魚は無いが、隣国の一つが海や川、湖など水資源や魚介類の豊富な土地柄、そこから仕入れた魚介の加工品をさらに調理したメニュー。
 牧畜が盛んな国から入ってくる加工肉を調理したメニュー。

 近隣の街から運ばれてくる野菜。

 食材が豊富な分、メニューも豊富だった。

 久しぶりの魚が食べたくて、私は干物で作ったアクアパッツァもどきを食べた。
 まぁ、美味しかった……かな?
 多少違和感はあるけど、そこは異世界だし致し方なし、と。

 さて、そろそろ市場に行ってみようか?
 
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。 しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。 それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。 一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。 しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。 加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。 レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

処理中です...