屋台飯！ いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

第一章

馬車の旅

　ポクポクと軽快な蹄の音を響かせのんびり車をひくのは、ロイスの実家から餞別にといただいた馬。

　名前はクロエ。女の子である。

　牝馬といえど、重たい荷物をひくのに特化した馬種だけあって体躯は大きく、足も太い。
　前世のテレビでチラリと見た事のある競馬の主役であるサラブレッドがモヤシに見えるたくましさ。
　そして、名前の通り真っ黒な毛色。

　そんか彼女がひく車の御者席に二人並んで座る。
　何でかって？

　その答えは荷台部分に人が乗るようなスペースが皆無だからだ。

　荷台は、博多の屋台を参考に改造し、テントや椅子などの荷物を満載しているから、馬車を引くのにクロエ位大きくて丈夫な馬が必要だったんだ。

　クロエはまだ小さい頃から牧場に通ってお世話をした子だし、荷台も、職人さんのアドバイスを受けつつも二人でコツコツ材料から集めて組み立てた。

　だから、この旅路も一歩ずつコツコツと……

　「腹減ったな……。そろそろ昼飯にしないか？」

　うん、腹が減ったら戦――もとい旅も出来ないよね。

　「そだね。何食べたい？　……ってもまだまともな食材仕入れてないからスープ料理しか出来ないけど、味付けのリクエストならいくらでも受け付けるよ！」

　「あ、それなら前に食べたミソスープが食べたい！」
　「ほい、了解」

　道幅のある広場に車を停め、ロイスがクロエに水と飼い葉を与るのを横目に鍋を火にかける。

　皮を剥いたジャガイモと長ネギを一口大に切り、鍋に放り込む。
　顆粒の出汁で煮込み、一度火を止め味噌を溶かし入れれば完成。

　白米や漬物があればいいけど、街を出ることを優先し、ろくな食材が無いとなれば贅沢は言えない。

　え、何で異世界なのに旅の初っ端から味噌があるのかって？

　それは、私の特殊能力スキルに理由がある。
　むしろこの能力と前世の記憶があるからこそこの旅に出るという選択をしたんだ。

　「おおーっ、うめぇ！　やっぱ具がイモとネギだけなのにこのミソスープってやつにすると美味えな！」

　まあ、それは確かに。
　ポタージュにでもしない限り芋だけのスープってちょっと……いや、だいぶ味気ないからなぁ。

　まぁ、日本では味噌汁に芋を入れるのは邪道と言う輩もいる訳だけど。

　ここは異世界、これを食すのは私とロイスだけなんだしそんな話は遠くへ放り投げとく事にして。

　「そんじゃ、行くか」

　食後の片付けをさっさと済ませ、私達は再び目的地への旅路を急ぐ。

　いくら美味しくとも、いつまでも芋のスープ料理ばかりの食事は嫌だからね。