屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜

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第一章

幼馴染み

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 「ロイスー! 悪いけど計画半年前倒しするよー!」

 出てけと言われたその日のうちに、最低限の着替えや金銭さえ持たされず、猫の子を追い出すように……いや、この世界でそれをやったら大変な事になるから……、ゴミでも捨てる様に、私は生まれ育った実家を追い出された。

 ……まあ、予想はしてたけど。まさか下着の替えすら持ち出す事を許されないとは。

 「え、お前マジで身一つで放り出されたわけ?」

 放り出されたその足で向かったのは幼馴染みのロイス。
 ぴょこんと黒髪をかき分けるように頭の上にくっついた、黒い三角のお耳。
 犬の耳とは少し違う、猫のお耳。

 ロイスの外見は黒猫族の特徴が強く出ていて、頭の上のお耳と長い黒い尻尾がトレードマークの男の子。

 彼も私と同じく商家の子だ。

 私と違ってしっかり両親に愛されて育っているけれど、しかし彼には兄が二人も居る。

 跡継ぎの長男と、跡継ぎの予備の次男。娘たちは嫁がせるとして、三男ともなれば成人後は自分で食い扶持を稼ぐ手段を見つけなければならない。

 ロイスは「いつか街を出て、色んな場所を見て回りたい」と言って、その準備を着々と進めていた。

 ロイスのお母さんは、私の亡くなった母と仲良しで、私の事も気にかけてくれていて、そのロイスの準備に便乗するのを黙認してくれていた。
 たまにご飯もご馳走になったしね。

 ……下請けって訳じゃないけど、ウチの店の商品が彼らの商売に必要不可欠な取引相手で。
 他に扱ってる店が無い訳でもないけど、一から新たな取引先を見つけて商談するというのはリスクのある大仕事。
 だから、私の父に苦言を呈する以上の事は難しくて。

 その事をいつも謝られていたけど、彼女が居なければ私、もっと酷い事になってただろう。

 「うん。ある程度は予想してたけどさ、まさかここまでするとは。大事な物は先に運び出しといて本当に正解だったよ。場所を快く貸してくれてたロイスのご両親には足向けて寝られないね」

 「ま、こっちの準備はほぼシャリーの成人待ちだったからな。取り敢えずの旅支度さえすればいつでも行けるぞ」

 「うん。……半年は私、正式に商業ギルド登録が出来ないから当分はロイスのお手伝いさん扱いなのがムカつくけどそこは仕方ないと割り切って、まずは国境の街を目指そうよ」

 成人する前の子どもが、見習いとして商業ギルドに登録するのは認められても、正式に経営者や従業員として登録できるのは成人後。
 こればっかりは覆らない、この世界では各国共通のルール。

 「おう」

 そして。
 その日から一週間後の事。
 私達は生まれ育った街を出るのだった。
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