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第一章
母が亡くなりました。
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それは、ある寒い冬の日の事だった。
元々体が弱く、臥せりがちだった私の母。
秋の終わり頃の事。いつも季節の変わり目に体調を崩す母はお約束のように風邪を引いた。
……その時点では、確かに風邪だったと言う。
しかし今年は例年より冷え込み、天候不順も重なり栄養価の高い食材のみならず、食べられる物の市場価格は軒並み上がり、当然小売価格にも跳ね返る。
私の家は比較的裕福な商家だったけど、それでもお貴族様みたいに湯水の如くお金を使えばあっという間にスッテンテンになってしまう。
それも我が家だけの事ならともかく、従業員の家族を養う事を考えれば、母にばかりお金を使う訳にいかない。
そんな大人の事情に、母の体は耐えきれなかったらしい。
日に日に弱っているのは、誰の目にも明らかで。
だからその日、その事を告げられてもそんなに驚かなかった。
今日でなくても明日、明日でなくても明後日には。
近く、聞く事になっていただろうから。
覚悟はしていた。
そう、母が亡くなる、その事についての覚悟は出来ていた。
が、しかし。
「お前の弟だ」
まさか母の葬儀が終わるより早く、継母と腹違いの弟を紹介されるとは……
うん、さすがの私も二の句が継げなかった。
いや、知ってたよ?
跡継ぎを産めそうにない母への陰口は。
だけど、一夫一婦制度が貴族や王族までも当たり前なこの世界で。
まさか浮気相手と子供まで既に作っていたなんて。
最低クソ親父。
私は、その瞬間この家族に愛想を尽かし、彼らに期待する事を諦めた。
この時私は7歳になったばかりだった。
だけど私には前世の記憶と特殊能力があった。
「楽しい未来の為に頑張らなくちゃ」
私は密かに決意した。
この世界の成人は15歳。
その日までに独り立ちするのだ、と。
それまで約8年。
その間の事は、正直思い出したくもない。
まさに物語の王道を行かんと、継子いじめに精を出す継母と、甘やかされて天狗になった弟と。
そんな妻子に見て見ぬ振りをする父親と。
私が前世の記憶もない、本当にただの子供なら確実に病んでいただろう。
……前世の記憶のある、精神的には一応私ですら病みかけたし。
だけど。
それはあの日みたくある寒い冬の日に。
「――出てってくれない?」
私は春生まれ。
この冬を越えさえすれば……
そんな時の一言に私は……
「ヒャッハー、ラッキー!」
内心、飛び上がって喜ぶのだった。
表立って喜べばどうなるかは嫌と言う程分かりきっていたからね。
「さあ、いざ行かん、夢の地へ!」
元々体が弱く、臥せりがちだった私の母。
秋の終わり頃の事。いつも季節の変わり目に体調を崩す母はお約束のように風邪を引いた。
……その時点では、確かに風邪だったと言う。
しかし今年は例年より冷え込み、天候不順も重なり栄養価の高い食材のみならず、食べられる物の市場価格は軒並み上がり、当然小売価格にも跳ね返る。
私の家は比較的裕福な商家だったけど、それでもお貴族様みたいに湯水の如くお金を使えばあっという間にスッテンテンになってしまう。
それも我が家だけの事ならともかく、従業員の家族を養う事を考えれば、母にばかりお金を使う訳にいかない。
そんな大人の事情に、母の体は耐えきれなかったらしい。
日に日に弱っているのは、誰の目にも明らかで。
だからその日、その事を告げられてもそんなに驚かなかった。
今日でなくても明日、明日でなくても明後日には。
近く、聞く事になっていただろうから。
覚悟はしていた。
そう、母が亡くなる、その事についての覚悟は出来ていた。
が、しかし。
「お前の弟だ」
まさか母の葬儀が終わるより早く、継母と腹違いの弟を紹介されるとは……
うん、さすがの私も二の句が継げなかった。
いや、知ってたよ?
跡継ぎを産めそうにない母への陰口は。
だけど、一夫一婦制度が貴族や王族までも当たり前なこの世界で。
まさか浮気相手と子供まで既に作っていたなんて。
最低クソ親父。
私は、その瞬間この家族に愛想を尽かし、彼らに期待する事を諦めた。
この時私は7歳になったばかりだった。
だけど私には前世の記憶と特殊能力があった。
「楽しい未来の為に頑張らなくちゃ」
私は密かに決意した。
この世界の成人は15歳。
その日までに独り立ちするのだ、と。
それまで約8年。
その間の事は、正直思い出したくもない。
まさに物語の王道を行かんと、継子いじめに精を出す継母と、甘やかされて天狗になった弟と。
そんな妻子に見て見ぬ振りをする父親と。
私が前世の記憶もない、本当にただの子供なら確実に病んでいただろう。
……前世の記憶のある、精神的には一応私ですら病みかけたし。
だけど。
それはあの日みたくある寒い冬の日に。
「――出てってくれない?」
私は春生まれ。
この冬を越えさえすれば……
そんな時の一言に私は……
「ヒャッハー、ラッキー!」
内心、飛び上がって喜ぶのだった。
表立って喜べばどうなるかは嫌と言う程分かりきっていたからね。
「さあ、いざ行かん、夢の地へ!」
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