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第四章 海の恵みを求めて

肆話 贈り物

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    色とりどりの魚介が乗った海鮮丼と、捌いた魚のアラで出汁をとったあら汁とお漬け物。
    夕食の食卓に並べたメニューに皆が目を輝かせた。
   「うお、美味そうじゃねぇか!」
   「うむ、良い味出してるじゃないか。これは美味いよ」
   「はい、お魚が美味しいです!    これならいくらでも食べられそうです!」
    「……それはお魚が美味しいんですよ。村の漁師さんに感謝して下さい」
    いや、実際魚が本当に美味しい。
    都で食べた刺身は久し振りすぎて凄く美味しく感じたけれど、今食べているこれと比べたら何て事はない。
    旨味も歯応えもこちらの方が数倍良い。あら汁も美味しいし、ご飯が美味しいのは幸せな事だ。
    こちらの世界に来てから、奴らのせいで寝込む事もなくなったし、まだ未熟ながらも自分で戦う術を手に入れた。
    自分の事情を理解して受け入れてくれる仲間も得た。
    便利な生活は遠ざかったけれど、これまで欲しくて堪らないのにどうしても得られなかったものを得た。
    ……今現在、元の世界に帰れると言われたところで本当に自分が日本に帰りたいのか、陽彰には分からなかった。
    ――この世界に居ながらにして日本の文明利器が手には入るなら。日本に帰る理由はない、とは思うけど。
    「ごちそうさま!」
    「おう、美味かったぜ!」
    「ありがとう」
    「明日は釣りだ!    もっと美味い魚を釣り上げてやる!」
    元気に盛り上がる蒼月を置いて、草治が洗い物をする私の側に寄ってきた。
    「手伝おう」
    「ありがとうございます」
    「ああ、……少し動くなよ」
    「え?」
     何か草治が私の頭の後ろをごそごそしている。……埃でも付いていたのかな? 
     すぐに草治は洗い物に手を出し始めたのでその時はそう思っていたのだけれど。
    「おや、それは……?」
     華乃が私を見て面白そうな顔をした。 
    「え?」
     するりと私の髪から抜いて私に見せたのは――
    「かんざし?」
      綺麗な貝を幾つかあしらった装飾品だ。
    「こないだの礼だ」
    「えっ、私の時は何もあげてないのに、こんな……」
    「こらこら、男が見栄張って女に贈ったもんは素直に貰っとくもんだよ。不相応な値の物じゃなきゃね。良く似合っていたよ、それ。花街の元売れっ子のアタシの見立てだ、間違いないよ」
    うわぁ、人から装飾品だを貰うなんて初めてだよ……。
    「重ね重ね、ありがとうございます」
    「それは多分こちらの台詞だと思うがな」
    「え?」
    「……まあ、当分よろしく頼むよ」
    「え、それこそ私の台詞ですが……って、あいたっ」
    何故だかデコピンを食らったんですが。
    ……うん。異世界でも何とかやっていけそうです。
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