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第三章 想いのありか

肆話 生存本能

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    これだけの出血量なのだから、意識不明どころか下手したら即死だってあり得ただろうと思う。
    なのに、これだけの怪我をしてもまだ草治は辛うじて意識があった。
    そんな彼の前に蒼月が、自らの筋肉質で太い腕を差し出した。
    草治は苦しげにしながらも、その腕に噛みついた。
    「ひっ!」
    その行動で、草治の種族を悟ったらしい野次馬達があっという間に散っていった。
    聞かされてはいたけれど、吸血鬼への忌避感の根深さを垣間見た気がしてイライラしそうになるけど、今はそれどころではないと、余計な考えを頭から追い出す。
   「クソッ、やっぱ緊急時じゃ俺のじゃ駄目か……!」
    蒼月が声を荒げた。
    「……頼む陽彰、草治に血をやってくれ!」
    そんなに必死に頼まなくても、必要なら私に拒む意思はない。
    「やめろ、今の俺には加減がきかん。お前なら慣れてるしその力もあるが、陽彰では抵抗出来ないだろう」
    「俺が見張ってる。もしもの時は俺が力尽くで引き剥がすさ」
   「……?」
     二人のやり取りの意味が分からずいると、華乃がこそっと教えてくれる。
    「吸血鬼は血を飲めばあの程度の傷は自力で治せちまう力の強い種族なんだけだね。その血っていうのが人間のじゃないとダメなんだよ。普段の吸血なら問題ないんだけどねぇ……」
    ……治せるけど、その為に必要な血液の量も普段以上に必要らしい。うっかりの危険性を彼は危惧しているらしい。
   「草治、今はそんな事言ってる場合じゃ無いでしょ。死にたいんですか?    優菜を置いて?    ほら、ご託は良いからさっさと飲んで下さいよ!」
     私は苦い薬を嫌がるチビッ子相手にするように、半ば無理やり頭を捕まえ口を開けさせた。
    「お、おま……何を!」
     草治は慌てているけど、どうやら本能的な欲求に抗いきれなかったらしく、いつもより若干荒々しく噛みつかれた。……いつも通り痛くはないけど。
    痛くはないけど……あれ?    何だかいつもと違う。ふわふわするというか気持ちが良いというか……。
    「そこまでだ!」
     蒼月に引き剥がされるまで何故か夢見心地だった私はハッと我に返った。
    「よし、取り敢えず出血は止まったな。一先ずこの場をずらかるぜ!」
    蒼月が、私と草治を両脇に抱えて走り出した。
    その後ろを優菜と華乃が必死について来る。
    がくがくと揺さぶられているうちに、いつの間にか人通りの無い空き地に連れて来られていた。
    「草治、無事か?」
     だけど真っ先に安否確認されたのは草治だった。
    「……なんとか、な」
      疲れた顔で彼はそう答えた。
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