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第三章 想いのありか

壱話 男の恋バナ

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    「ふぃ~、やっぱデケェ風呂は気持ちいいなぁ」
    宿の露天風呂で蒼月がリラックスしまくった様子で言った。
    「随分と機嫌が良いな?」
    「そりゃ、な。陽彰は無事に住民登録も終わってまた俺達と旅することが決まったんだ。嬉しいに決まってるだろ?    ――まぁそれでも俺なんてお前程じゃ無いだろうけどな」
    「……どういう意味だ?」
    「おいおい、まさか無自覚とか言うなよ?    お前、陽彰に気があるだろ」
    「……何故そう思う」
    「そりゃお前の態度見てりゃ、お前とある程度付き合いある奴ならすぐに分かるって。まぁお前の場合はその相手が殆ど居ないから、気付いてるのは俺と華乃と……優菜は……どこまで気付いているかは分からんが、少なくとも華乃と同等以上には気に入ってる事は気付いてるのは間違いないと思うぜ」
    「彼女を本当に仲間だと思っている事は間違いない……が、それ以上だと?」
    「え、お前本当に気付いてねぇのか?    優菜は
境遇や年齢もあるから色恋沙汰についての知識がどれ程あるか分からんけど、お前までか?」
    大口をあんぐり開けて呆れ返る蒼月。
    「優菜だって、陽彰に特別なついているだろう。……俺もあいつと似たようなもんだろ?」
    「いやいや、そりゃありえんよ。だってお前、陽彰にしてやる様な事、華乃にした事あったか?    ああ、責めてるんじゃないぜ。華乃だって陽彰にしてるように扱われたら怒るだろうし」
    「……俺は何か酷い事を陽彰にしていたのか?」
    「いや、むしろお前にしちゃ面倒見が良すぎるくらいに色々気ぃ回してるだろ?    華乃は構われ過ぎるのを嫌うから怒るだろうけど。……陽彰は――どうだろうな、嫌がってる様には見えないぜ。ただ俺達と違って他に対するお前の態度をあまり知らないから、どこまでお前の好意に気付いてるかは分かんねぇけどよ」
    「…………」
     蒼月に次々と指摘された草治は頭まで湯に浸かって黙りこんだ。
    ――優菜もその生い立ちからかなり人見知りで、簡単に人に気を許したりしないが、そんな彼女を守りながら出奔した自分は意図的にそれに輪をかけるように慎重になっていた。その自覚はあったけれど。
    そして異世界人だからと陽彰にはそんな他の者に比べたらかなり良い待遇だった事も認める。
    だが。蒼月が言う様な感情が彼女にあるのかどうか、草治は分からなかった。
    優菜のように怖れる事はないが、緋川の――というか吸血鬼という種族が嫌われ者なのは確かで、同種には厭われている現状、結婚なんて夢のまた夢だったから。
    「……先に上がるぞ」
    うっかり逆上せて昨日の女性陣の二の舞になるのだけは御免だと、草治は戦略的撤退を選んだのだった。
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