52 / 65
第一章 式神ゲット!
参話 精霊様に大人気?
しおりを挟む
「ふふ、ははははは!」
辺りにとても楽しそうな笑い声が響いた。
ぱちん、と彼女が指を鳴らせばそれだけで彼女を植物が覆い隠し、するりと拘束から抜け出した。
……終わった。もう他に手はない。
ついこないだ死にかけて生還したばかりだと言うのにもう死んでしまうのか……?
「……おい。いい加減にしないか」
諦めかけたその時、声がした。
「契約を望まれた時、その力量を量る為に我らは戦う。だが、先に条件も定めずのこの戦いで人を傷つければ精霊王より処罰が下されるぞ」
「わ~かってるよ! ちょっとお試ししただけだもん! いやー、楽しかった~♪」
突如現れ木の精霊を説教し始めたのは水の精霊だった。だけど、それに堪えた様子もなく木の精霊は明るく笑った。
「で、どーだった?」
彼女が突然誰ともなく尋ねた。
「「「「「?」」」」」
皆して首を捻る。――が、彼女の服の隙間から、ひょこひょこ顔を出したのは木の妖精たち。
「はーい、僕契約したい!」
肩まで伸びた髪を後ろで一つにまとめた男の子が手を挙げた。
「名前ちょーだい!」
「え? ……戦わなくていいの?」
「だって、今精霊様と戦ったじゃない。あれを見ていたからね。改めて戦わなくても契約に値するかどうかなんてすぐ分かるよ!」
「ふふ、我も気に入ったのだ。水のを真似て、我もそなたと契約したい!」
「……分かりました。じゃあ、君の名前は『ラント』だ」
「分かった! ふふふ、やったぁ! 僕の名前だ!」
木属性の子って元気な子が多いのかな?
「ああ、それと」
「はい?」
「土の精霊もそなたに興味を持っておった。近々会いに行ってやると良いぞ!」
「……ちなみにその土の精霊様は一体何処に?」
「うむ。ここからだとちと遠いの。人々が都と呼ぶ町の向こう側じゃ」
「――俺達が向かっているのは都だしな。その後で寄るんでも大丈夫か?」
「ええ、大丈夫でしょう。……彼女は精霊達の中でも特にせっかちですからこうして暴走した様ですが、件の土の精霊様は気の長い方ですから、問題はないでしょう」
「……そうか」
だけど、突然の戦闘で皆ぼろぼろだ。
「今日は早めに休むか」
「――では、私はこれで」
「ありがとう」
「あ、待った待った、私も帰るよ~! んじゃね~!」
「精霊様、またねー!」
妖精と精霊は手を振り合い、そして精霊はふっと姿を消した。
「……精霊と契約するのが大変な事は知っていたが、まさかこういう方面での大変さがあるとは……予想外だったな」
「あ、あはははは……。ウチの精霊様はいつも落ち着きがないって大精霊様に怒られてるからなぁ」
ラントが少し気不味そうに目を逸らした。
「……まあいい。これからよろしくな」
「はーい!」
辺りにとても楽しそうな笑い声が響いた。
ぱちん、と彼女が指を鳴らせばそれだけで彼女を植物が覆い隠し、するりと拘束から抜け出した。
……終わった。もう他に手はない。
ついこないだ死にかけて生還したばかりだと言うのにもう死んでしまうのか……?
「……おい。いい加減にしないか」
諦めかけたその時、声がした。
「契約を望まれた時、その力量を量る為に我らは戦う。だが、先に条件も定めずのこの戦いで人を傷つければ精霊王より処罰が下されるぞ」
「わ~かってるよ! ちょっとお試ししただけだもん! いやー、楽しかった~♪」
突如現れ木の精霊を説教し始めたのは水の精霊だった。だけど、それに堪えた様子もなく木の精霊は明るく笑った。
「で、どーだった?」
彼女が突然誰ともなく尋ねた。
「「「「「?」」」」」
皆して首を捻る。――が、彼女の服の隙間から、ひょこひょこ顔を出したのは木の妖精たち。
「はーい、僕契約したい!」
肩まで伸びた髪を後ろで一つにまとめた男の子が手を挙げた。
「名前ちょーだい!」
「え? ……戦わなくていいの?」
「だって、今精霊様と戦ったじゃない。あれを見ていたからね。改めて戦わなくても契約に値するかどうかなんてすぐ分かるよ!」
「ふふ、我も気に入ったのだ。水のを真似て、我もそなたと契約したい!」
「……分かりました。じゃあ、君の名前は『ラント』だ」
「分かった! ふふふ、やったぁ! 僕の名前だ!」
木属性の子って元気な子が多いのかな?
「ああ、それと」
「はい?」
「土の精霊もそなたに興味を持っておった。近々会いに行ってやると良いぞ!」
「……ちなみにその土の精霊様は一体何処に?」
「うむ。ここからだとちと遠いの。人々が都と呼ぶ町の向こう側じゃ」
「――俺達が向かっているのは都だしな。その後で寄るんでも大丈夫か?」
「ええ、大丈夫でしょう。……彼女は精霊達の中でも特にせっかちですからこうして暴走した様ですが、件の土の精霊様は気の長い方ですから、問題はないでしょう」
「……そうか」
だけど、突然の戦闘で皆ぼろぼろだ。
「今日は早めに休むか」
「――では、私はこれで」
「ありがとう」
「あ、待った待った、私も帰るよ~! んじゃね~!」
「精霊様、またねー!」
妖精と精霊は手を振り合い、そして精霊はふっと姿を消した。
「……精霊と契約するのが大変な事は知っていたが、まさかこういう方面での大変さがあるとは……予想外だったな」
「あ、あはははは……。ウチの精霊様はいつも落ち着きがないって大精霊様に怒られてるからなぁ」
ラントが少し気不味そうに目を逸らした。
「……まあいい。これからよろしくな」
「はーい!」
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
京都式神様のおでん屋さん
西門 檀
キャラ文芸
旧題:京都式神様のおでん屋さん ~巡るご縁の物語~
ここは京都——
空が留紺色に染まりきった頃、路地奥の店に暖簾がかけられて、ポッと提灯が灯る。
『おでん料理 結(むすび)』
イケメン2体(?)と看板猫がお出迎えします。
今夜の『予約席』にはどんなお客様が来られるのか。乞うご期待。
平安時代の陰陽師・安倍晴明が生前、未来を案じ2体の思業式神(木陰と日向)をこの世に残した。転生した白猫姿の安倍晴明が式神たちと令和にお送りする、心温まるストーリー。
※2022年12月24日より連載スタート 毎日仕事と両立しながら更新中!
幼馴染みの2人は魔王と勇者〜2人に挟まれて寝た俺は2人の守護者となる〜
海月 結城
ファンタジー
ストーカーが幼馴染みをナイフで殺そうとした所を庇って死んだ俺は、気が付くと異世界に転生していた。だが、目の前に見えるのは生い茂った木々、そして、赤ん坊の鳴き声が3つ。
そんな俺たちが捨てられていたのが孤児院だった。子供は俺たち3人だけ。そんな俺たちが5歳になった時、2人の片目の中に変な紋章が浮かび上がった。1人は悪の化身魔王。もう1人はそれを打ち倒す勇者だった。だけど、2人はそんなことに興味ない。
しかし、世界は2人のことを放って置かない。勇者と魔王が復活した。まだ生まれたばかりと言う事でそれぞれの組織の思惑で2人を手駒にしようと2人に襲いかかる。
けれども俺は知っている。2人の力は強力だ。一度2人が喧嘩した事があったのだが、約半径3kmのクレーターが幾つも出来た事を。俺は、2人が戦わない様に2人を守護するのだ。
京都式神様のおでん屋さん 弐
西門 檀
キャラ文芸
路地の奥にある『おでん料理 結(むすび)』ではイケメン二体(式神)と看板猫がお出迎えします。
今夜の『予約席』にはどんなお客様が来られるのか。乞うご期待。
平安時代の陰陽師・安倍晴明が生前、未来を案じ2体の思業式神(木陰と日向)をこの世に残した。転生した白猫姿の安倍晴明が式神たちと令和にお送りする、心温まるストーリー。
※一巻は第六回キャラクター文芸賞、
奨励賞を受賞し、2024年2月15日に刊行されました。皆様のおかげです、ありがとうございます✨😊
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する
平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。
しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。
だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。
そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
異世界で神様に農園を任されました! 野菜に果物を育てて動物飼って気ままにスローライフで世界を救います。
彩世幻夜
恋愛
エルフの様な超絶美形の神様アグリが管理する異世界、その神界に迷い人として異世界転移してしまった、OLユリ。
壊れかけの世界で、何も無い神界で農園を作って欲しいとお願いされ、野菜に果物を育てて料理に励む。
もふもふ達を飼い、ノアの箱舟の様に神様に保護されたアグリの世界の住人たちと恋愛したり友情を育みながら、スローライフを楽しむ。
これはそんな平穏(……?)な日常の物語。
2021/02/27 完結
最古のスキル使い―500年後の世界に降り立った元勇者―
瀬口恭介
ファンタジー
魔王を倒すも石にされてしまった勇者キール。スキルが衰退し、魔法が発達した500年後の世界に復活したキールは、今まで出来ることのなかった『仲間』という存在を知る。
一見平和に思えた500年後の世界だったが、裏では『魔王候補』という魔族たちが人間界を我がものにしようと企んでいた。
それを知ったキールたちは魔族を倒すため動き始める。強くなり、己を知るために。
こうして、長いようで短い戦いが始まる。
これは、一度勇者としての役目を終えたキールとその仲間たちが自らの心象を探し求める物語。
※この作品は小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。
※元勇者のスキル無双からタイトル変更しました。
※24日に最終話更新予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる