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第四章 生還

参話 式神

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    「あれ?」
    数日の療養を終え、緋川兄妹から出発のお許しが出たその日。移動しながら修行をしようといつもの様に霊力を動かそうとして……意識すると、何故か霊力が自然と身体を巡っていた。
    「……あれ?」
    試しに霊力を撃ち出してみる。
    ……いつも程集中しなくても連射が可能になっていた。
    更に属性を纏わせて撃ち出してみる。
    やっぱりいつもに比べて一気にレベルが上がった感覚があった。
    「……お前が意識を失った時、しばしわしがその身体を借りたからな。その感覚を無意識に身体が覚えたんじゃろう」
    ……成る程。良い手本を得てコツを掴んだのか。……自覚はさっぱり無いけれど。
    「ふむ。ではそろそろ術を教えたいところだが、その前に……」
    「その前に?」 
    「うむ。式神が欲しいな、と思っての」
    「式神……?」
    「そうじゃ。……聞いたことはないかの?    わしの式神、十二神将の事を」
    ……私、そもそもラノベもゲームも縁遠い生活を送っていたからね。安倍晴明についてだって、歴史で習うような基本データしか知らない。
   「ふむ。しかし、青龍、朱雀、白虎、玄武位は聞いたことがないか?」
    その程度なら私も聞いたことがある。……京都には朱雀門ってのがかつてあったらしいしね。四神相応、だっけ。陰陽や五行についてお勉強した時にもちらっと齧ったし。
    それを言うと、晴明は満足そうに頷いた。
   「それに加えて天一、六合、天后、太陰、太裳、勾陳、騰蛇、天空。全て六壬式盤と言う陰陽師が使う占術の道具に書かれた神の使いの名じゃ」
    ……占いは、それこそ陰陽術の難しい本を毎日何冊も、何年もかけて読み込んで練習して行うものだそうで。私には当分無理だと言われた。
    「しかし十二神将は無理でも、何か式神として使役出来るものが居ると何かと便利じゃぞい」
    ……本来神の使いなんて式神に出来るものじゃない。大半の陰陽師がその辺の雑魚妖怪を式神にするにも四苦八苦する中で、飄々と神の使いを屋敷のお手伝いさんにしてしまったのがこの爺であると言う。
    それってバチ当たりなんじゃないの……? 
    ああ、だけど晴明の母は狐なんだっけ。神狐か化け狐か知らないけど、何より本人が今では京都の神社で祀られる神様だ。
    「それで。何をどうすれば式神に出来るの……?」
    「うむ。基本は相手と対話をし、条件を交わして契約するのじゃ!」
    「……相手が話せない場合は?」
    「力押しで屈服させるのじゃ!」
    ――だそうだけど。
    それを聞いて草治がぽつりと呟いた。
    「ふむ。まるで精霊契約の様だな」
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