48 / 65
第四章 生還
参話 式神
しおりを挟む
「あれ?」
数日の療養を終え、緋川兄妹から出発のお許しが出たその日。移動しながら修行をしようといつもの様に霊力を動かそうとして……意識すると、何故か霊力が自然と身体を巡っていた。
「……あれ?」
試しに霊力を撃ち出してみる。
……いつも程集中しなくても連射が可能になっていた。
更に属性を纏わせて撃ち出してみる。
やっぱりいつもに比べて一気にレベルが上がった感覚があった。
「……お前が意識を失った時、しばしわしがその身体を借りたからな。その感覚を無意識に身体が覚えたんじゃろう」
……成る程。良い手本を得てコツを掴んだのか。……自覚はさっぱり無いけれど。
「ふむ。ではそろそろ術を教えたいところだが、その前に……」
「その前に?」
「うむ。式神が欲しいな、と思っての」
「式神……?」
「そうじゃ。……聞いたことはないかの? わしの式神、十二神将の事を」
……私、そもそもラノベもゲームも縁遠い生活を送っていたからね。安倍晴明についてだって、歴史で習うような基本データしか知らない。
「ふむ。しかし、青龍、朱雀、白虎、玄武位は聞いたことがないか?」
その程度なら私も聞いたことがある。……京都には朱雀門ってのがかつてあったらしいしね。四神相応、だっけ。陰陽や五行についてお勉強した時にもちらっと齧ったし。
それを言うと、晴明は満足そうに頷いた。
「それに加えて天一、六合、天后、太陰、太裳、勾陳、騰蛇、天空。全て六壬式盤と言う陰陽師が使う占術の道具に書かれた神の使いの名じゃ」
……占いは、それこそ陰陽術の難しい本を毎日何冊も、何年もかけて読み込んで練習して行うものだそうで。私には当分無理だと言われた。
「しかし十二神将は無理でも、何か式神として使役出来るものが居ると何かと便利じゃぞい」
……本来神の使いなんて式神に出来るものじゃない。大半の陰陽師がその辺の雑魚妖怪を式神にするにも四苦八苦する中で、飄々と神の使いを屋敷のお手伝いさんにしてしまったのがこの爺であると言う。
それってバチ当たりなんじゃないの……?
ああ、だけど晴明の母は狐なんだっけ。神狐か化け狐か知らないけど、何より本人が今では京都の神社で祀られる神様だ。
「それで。何をどうすれば式神に出来るの……?」
「うむ。基本は相手と対話をし、条件を交わして契約するのじゃ!」
「……相手が話せない場合は?」
「力押しで屈服させるのじゃ!」
――だそうだけど。
それを聞いて草治がぽつりと呟いた。
「ふむ。まるで精霊契約の様だな」
数日の療養を終え、緋川兄妹から出発のお許しが出たその日。移動しながら修行をしようといつもの様に霊力を動かそうとして……意識すると、何故か霊力が自然と身体を巡っていた。
「……あれ?」
試しに霊力を撃ち出してみる。
……いつも程集中しなくても連射が可能になっていた。
更に属性を纏わせて撃ち出してみる。
やっぱりいつもに比べて一気にレベルが上がった感覚があった。
「……お前が意識を失った時、しばしわしがその身体を借りたからな。その感覚を無意識に身体が覚えたんじゃろう」
……成る程。良い手本を得てコツを掴んだのか。……自覚はさっぱり無いけれど。
「ふむ。ではそろそろ術を教えたいところだが、その前に……」
「その前に?」
「うむ。式神が欲しいな、と思っての」
「式神……?」
「そうじゃ。……聞いたことはないかの? わしの式神、十二神将の事を」
……私、そもそもラノベもゲームも縁遠い生活を送っていたからね。安倍晴明についてだって、歴史で習うような基本データしか知らない。
「ふむ。しかし、青龍、朱雀、白虎、玄武位は聞いたことがないか?」
その程度なら私も聞いたことがある。……京都には朱雀門ってのがかつてあったらしいしね。四神相応、だっけ。陰陽や五行についてお勉強した時にもちらっと齧ったし。
それを言うと、晴明は満足そうに頷いた。
「それに加えて天一、六合、天后、太陰、太裳、勾陳、騰蛇、天空。全て六壬式盤と言う陰陽師が使う占術の道具に書かれた神の使いの名じゃ」
……占いは、それこそ陰陽術の難しい本を毎日何冊も、何年もかけて読み込んで練習して行うものだそうで。私には当分無理だと言われた。
「しかし十二神将は無理でも、何か式神として使役出来るものが居ると何かと便利じゃぞい」
……本来神の使いなんて式神に出来るものじゃない。大半の陰陽師がその辺の雑魚妖怪を式神にするにも四苦八苦する中で、飄々と神の使いを屋敷のお手伝いさんにしてしまったのがこの爺であると言う。
それってバチ当たりなんじゃないの……?
ああ、だけど晴明の母は狐なんだっけ。神狐か化け狐か知らないけど、何より本人が今では京都の神社で祀られる神様だ。
「それで。何をどうすれば式神に出来るの……?」
「うむ。基本は相手と対話をし、条件を交わして契約するのじゃ!」
「……相手が話せない場合は?」
「力押しで屈服させるのじゃ!」
――だそうだけど。
それを聞いて草治がぽつりと呟いた。
「ふむ。まるで精霊契約の様だな」
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる