46 / 65
第四章 生還
壱話 死にたくない
しおりを挟む
「ひっ……!」
ニタッと嫌な笑いを浮かべる一つ目が、じっとこちらを見つめていた。
恐ろしくて震えるけれど、そいつが見える奴が他には居なくて。皆私を気違い扱いして笑う。
そして奴らも見えない人間には興味がないらしく、見える私ばかりをからかっていく。……奴らのそのからかいは、うっかりすれば小娘なんか簡単に死んでしまうようなイタズラもあって、私は気の休まる時が酷く限られていた。
「嘘つき!」
嘘じゃないのに。それを証明する術もなくて。
私が周囲に理解して貰うのを諦めたのはいつの頃だっただろう?
何となく何でも適当に誤魔化す癖がついた。とにかく一日無難に、目立たず過ごす術ばかり身に付けてきた。
親にも見捨てられて、この世に味方なんか誰も居ないんだと思っていた。
……だけど。
この世界に来て、優菜ちゃん達に出会って。
私のこの力を受け入れてくれる人が居る事を知って。……力の使い方が未熟すぎる私をサポートしてくれる仲間が出来て。
それが人間じゃなくても、言葉を交わして普通に一緒に生活出来る相手だったし気にならなかった。
だって、言葉でコミュニケーションも取れず突然あわやで死にそうなイタズラを仕掛けてくる連中をこれまで見てきたんだもの。
奴らに比べれば……と言うか比べるのも失礼なくらい彼らは良心的だった。
都とやらに着いたら彼らと離れなきゃいけないかも知れない事を分かっていながら、それをいつしか「嫌だ」と思い始めてもいた。
……でも。分かっていたけど、やっぱり私はただの足手まといだった。あの男を相手に何も出来なかった、どころか真っ先にやられて……皆の足を引っ張った。
生活は日本に比べてかなり不便だけど、意外とこの生活が気に入っていたのに。
流石にもう見捨てられちゃうかもしれない。
……つーか、背中から刺されて腹から刀が生えてたよね? 私、死んでませんかね?
日本なら手術で傷を縫うとか輸血とか治療方法はあるけど、この世界の文明レベルだと……あまり期待できそうにないしなぁ……。
でも、このままあの世行きは嫌だよ。
まだ二十年も生きていないのに。平均寿命が四十だが五十の時代に八十五歳まで生きた上にあの世でも神様ライフ満喫していたあの爺のせいでロクでもない幼少時代を送る羽目になったのに。
私はまだ死にたくない。生きたい。
そう強く願った。
「陽彰ちゃん……」
ふと、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた気がして、私は耳をすませた。
「陽彰ちゃん!」
ゆっくりと目を開け――
ニタッと嫌な笑いを浮かべる一つ目が、じっとこちらを見つめていた。
恐ろしくて震えるけれど、そいつが見える奴が他には居なくて。皆私を気違い扱いして笑う。
そして奴らも見えない人間には興味がないらしく、見える私ばかりをからかっていく。……奴らのそのからかいは、うっかりすれば小娘なんか簡単に死んでしまうようなイタズラもあって、私は気の休まる時が酷く限られていた。
「嘘つき!」
嘘じゃないのに。それを証明する術もなくて。
私が周囲に理解して貰うのを諦めたのはいつの頃だっただろう?
何となく何でも適当に誤魔化す癖がついた。とにかく一日無難に、目立たず過ごす術ばかり身に付けてきた。
親にも見捨てられて、この世に味方なんか誰も居ないんだと思っていた。
……だけど。
この世界に来て、優菜ちゃん達に出会って。
私のこの力を受け入れてくれる人が居る事を知って。……力の使い方が未熟すぎる私をサポートしてくれる仲間が出来て。
それが人間じゃなくても、言葉を交わして普通に一緒に生活出来る相手だったし気にならなかった。
だって、言葉でコミュニケーションも取れず突然あわやで死にそうなイタズラを仕掛けてくる連中をこれまで見てきたんだもの。
奴らに比べれば……と言うか比べるのも失礼なくらい彼らは良心的だった。
都とやらに着いたら彼らと離れなきゃいけないかも知れない事を分かっていながら、それをいつしか「嫌だ」と思い始めてもいた。
……でも。分かっていたけど、やっぱり私はただの足手まといだった。あの男を相手に何も出来なかった、どころか真っ先にやられて……皆の足を引っ張った。
生活は日本に比べてかなり不便だけど、意外とこの生活が気に入っていたのに。
流石にもう見捨てられちゃうかもしれない。
……つーか、背中から刺されて腹から刀が生えてたよね? 私、死んでませんかね?
日本なら手術で傷を縫うとか輸血とか治療方法はあるけど、この世界の文明レベルだと……あまり期待できそうにないしなぁ……。
でも、このままあの世行きは嫌だよ。
まだ二十年も生きていないのに。平均寿命が四十だが五十の時代に八十五歳まで生きた上にあの世でも神様ライフ満喫していたあの爺のせいでロクでもない幼少時代を送る羽目になったのに。
私はまだ死にたくない。生きたい。
そう強く願った。
「陽彰ちゃん……」
ふと、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた気がして、私は耳をすませた。
「陽彰ちゃん!」
ゆっくりと目を開け――
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説

前代未聞のダンジョンメーカー
黛 ちまた
ファンタジー
七歳になったアシュリーが神から授けられたスキルは"テイマー"、"魔法"、"料理"、"ダンジョンメーカー"。
けれどどれも魔力が少ない為、イマイチ。
というか、"ダンジョンメーカー"って何ですか?え?亜空間を作り出せる能力?でも弱くて使えない?
そんなアシュリーがかろうじて使える料理で自立しようとする、のんびりお料理話です。
小説家になろうでも掲載しております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
素材採取家の異世界旅行記
木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。
可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。
個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。
このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。
この度アルファポリスより書籍化致しました。
書籍化部分はレンタルしております。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる