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第三章 緋川の追っ手

参話 陽彰 in 晴明始動!

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    誰も居なくなった村で、手入れをする人間も居なくなった畑から、熟した野菜を失敬した朝。空間の中の倉庫に貯蔵して、私達はその村を後にした。
    「早く行かないと、無関係な人間にうっかり見られたら面倒な事になる」
    と草治さんが急かしたから。
    山の中を歩きながら、私は修行を続ける。――この後優菜ちゃんを助けた時の経験から、ようやくコツが掴めてきて、色々と出来る事が増えている。
    ……まだまだ意識しないと無理だけど。
    いや、どうしたらコレを無意識に出来る様になるんでしょうかね?
     なーんて考えてたんですけどね、昨日……いや、今朝までは。
    お昼休憩を終えてしばらく歩いて……今に至るんですが。なんか目の前に明らかに怪しい忍者みたいな黒装束に身を包んだ男が一人立ち塞がってくれちゃってます、はい。しかも、手には刃物持ってます。 
    お巡りさーん、不審者が居ます!    お願い助けて!
    ……って、異世界のそれもこんな山の中じゃ意味もなく。
    皆で戦闘体制をとる。
    私も大したことはできないけど、せめてサポートくらいは……と、霊力を手に集めていた。
    だけど。
    「あ、あれ?」
    ほんの一瞬、霊力制御に気をとられた隙に敵の姿が消えた。
    「なっ、ど、何処に……!?」
    慌てて辺りを見回し――
    「え……、」
    ふと気づいたら、腹から赤く染まった刃の先が生えていた。……その瞬間は痛みもなくて、本当に何が起きたか自分で理解出来ないでいた。
    「陽彰ちゃん!」
     優菜ちゃんの悲鳴が聞こえたのと同時に物凄い痛みが私を襲い、直後、私の意識は闇に落ちた。 
    
   「お、おい陽彰!    ……くそっ!」
    黒装束の怪しい男に刺されて倒れた陽彰。
    あの出血量じゃ、早く手当てしないと陽彰が死ぬ。あの村の人間の様に。
    だけどあの男がいる限り、皆陽彰の手当てどころじゃない。早くあの男を排除しなくては。
    陽彰の意識がない今なら出来る。――というかこんな時でしか使えない裏技がある。
    晴明は、そっと陽彰の中へと戻った。
    ……元々あの狐の体はこの身体が使えないから作った物だ。現在の持ち主である陽彰の意識がある内は前世の意識である晴明の出番はないのだけれど、その意識が消えれば晴明が前に出る事が可能になるのだ。
    ――これがただの睡眠時には出来ず、本当に昏倒した時でないと出来ないのが最大の難点なのだが。
    取り敢えず血止めの札を傷に貼って応急処置をする。
    ……流石、自分の生まれ変わりなだけあって、霊力量は豊富だ。
    陽彰にはまだ扱いきれていないそれも、稀代の陰陽師と言われた安倍晴明には朝飯前の事。……実際は昼食後なのだけれど。
    「そなた、覚悟せよ!」
     晴明は、陽彰の身体を使って立ち上がった。
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