師匠はうっかり転生しちゃった伝説の陰陽師!

彩世幻夜

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第二章 不穏の気配

肆話 逃亡

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    草治さんに抱き起こされた彼女は着衣を乱されていて、着物は所々破れていた。
    私は急いで自分の上着を脱いで彼女に着せた。
    外傷は……薄くアザとかあるから殴られたりしたんだろうけど、大きな怪我は無さそうだ。
    ホッとしていると、優菜ちゃんが目を覚ました。
   「兄さん……皆……ご、ごめんなさい、ごめんなさい……!」
    だけど、彼女はホッとするより怯えたように泣き出し謝り始めた。
   「急いでこの村を離れないと……!    私が吸血鬼だってバレちゃった……」
    彼女が言うには、抵抗して暴れて殴られた時に、咄嗟に噛みついてしまったらしい。……そして運良くと言うべきか運悪くと言うべきか……うっかり出血した血が口に入り飲み込んでしまったと。
    うっすら残ったアザは、それによって急速治癒した結果だったらしい。血の量が僅かだったから完治にまでは至らなかった、と。
   「今はあの男達しか知らないけど、すぐに噂は広まるわ……」
    この暑い中で、カタカタと歯を鳴らして震える様は哀れとしか言い様がない。
    「今ならこいつらを脅せば何とか……」
    たった今連中を倒したばかりの蒼月さんがじろりとそのなれの果てを睨み下ろした。
    「やめておけ。それで村の連中と騒ぎを起こせば更に面倒な事になる。……蒼月、お前は俺たちの荷物を取りに行け。華乃は寄合所への連絡を頼む」
    それを、草治さんが冷静に止めて指示を出す。
    「村の連中より厄介な者が嗅ぎ付けて来る前に逃げるぞ」
    私達は、草治さんの指示でその日の夜に村を出て、山の中へと逃げ込んだ上で優菜ちゃんの亜空間の小屋へと落ち着いた。
   「……ちょっと数日ここで落ち着こう」
    普段は一晩過ごすだけの場所で、少々長居しようと言い出した草治さんが早々にゴロゴロとくつろぎ始めた。
    仕方ない、と苦笑しながらも、表へ出ていった華乃さんが、どこからかお布団セットを持って来た。
    「向こうに物置がある。人数分持って来るのを手伝っとくれ」
    と、落ち込み気味の優菜ちゃんを急かす。
    優菜ちゃんに案内されて私もついて行くと、倉と物置小屋とが並んで建っていた。
    物置小屋には一通りの生活用品が揃えられていて、食糧さえあれば当分ここで暮らせてしまいそうだった。
    私達は布団を抱えて戻る。
    その晩は夕飯を食べて、柔らか布団でぐっすり眠って終わったけれど。
    翌朝。
   「久々にゆっくり薬草の世話でもしようかな……」
    と優菜が出掛けて行き、草治さんは相変わらずゴロゴロしている。蒼月さんは外で素振りを始め、華乃さんは繕い物をしている。
    私は何をしようかな……?
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