40 / 65
第二章 不穏の気配
参話 暴漢退治
しおりを挟む
……考えてみれば、この暑い季節に山の中に入ればそこは虫の王国だ。いかに性欲に溺れた若い雄とは言え、そんな所で事に及びたくはないだろう。
だから、虫の少ない村の中の建物に連れ込んだ。
……だけど母屋じゃいつ人が来るか分からない。倉は窓や扉を開けておかなきゃ暗すぎるし、離れなんてある家は限られる。
だから、適度に明るく滅多に人が来ない建物の中。
「作業場か……!」
田畑の収穫時には大勢の人が集まり、採れた作物の加工をする広い小屋。先に挙げた条件を全て満たした場所。
近付けば、人の声が聞こえてくる。
「ビンゴ!」
私は急いで扉を開けようとするけど……
「開かない、流石に鍵かけてるみたい」
人が来にくいとはいえ念のための保険なのか、扉の隙間から鎖らしき金属の輪と南京錠っぽい物が見えた。
「金属……火克金……だけどこの小屋木造だし燃えちゃ不味いよね、なら……!」
金属はより固い金属で削ることが出来るし、ウォーターカッターという手もある。
――私は必死だった。
その瞬間はただ、これを何とかしなくちゃとしか考えられず、他の全ての思考が霞んでいた。
それま打ち出すしか出来なかった霊力をバーナーの炎の様に成型し、水の属性を纏わせる。そのままチェーンソーの様に刃を動かして……と必死にイメージを維持するのに集中し――。
「よし、切れた!」
カランと鎖がまず床に落ち、続けて南京錠がゴトンと落ちた――瞬間、勢いよくドアが開いた。勿論私は何も触ってない。
空いた先に見えたのは男達が並び、その中の一人がこちらに向けて拳を突きだし殴りかかってくる瞬間だった。
とてもじゃないけど避けられない、と腕で顔と頭を庇おうと反射で体が動くけど間に合わない。
これは殴られる、と痛みを想像してつい目を閉じた。
「おい馬鹿、気を付けろ!」
しかしその拳が届くより前に、蒼月が私の襟首を引いて除けて自分が前に出て逆に男を殴り飛ばした。
農作業をしていて体力はありそうな男達だが、戦闘については所詮素人。プロには敵わず吹っ飛んだ。
「優菜、大丈夫か!?」
その隙に草治さんが優菜の元へと駆け寄り、床に倒れていた彼女を抱き起こす。
その間に残りの男も順にのしていく蒼月さん。
そして私は華乃さんに庇われながら小屋の外でその一部始終を眺めていた。
一人、また一人と蒼月さんに倒されていく。全ての男達が床に伸びたのを見届けてから、私も小屋の中に入り優菜ちゃんに近付いた。
だから、虫の少ない村の中の建物に連れ込んだ。
……だけど母屋じゃいつ人が来るか分からない。倉は窓や扉を開けておかなきゃ暗すぎるし、離れなんてある家は限られる。
だから、適度に明るく滅多に人が来ない建物の中。
「作業場か……!」
田畑の収穫時には大勢の人が集まり、採れた作物の加工をする広い小屋。先に挙げた条件を全て満たした場所。
近付けば、人の声が聞こえてくる。
「ビンゴ!」
私は急いで扉を開けようとするけど……
「開かない、流石に鍵かけてるみたい」
人が来にくいとはいえ念のための保険なのか、扉の隙間から鎖らしき金属の輪と南京錠っぽい物が見えた。
「金属……火克金……だけどこの小屋木造だし燃えちゃ不味いよね、なら……!」
金属はより固い金属で削ることが出来るし、ウォーターカッターという手もある。
――私は必死だった。
その瞬間はただ、これを何とかしなくちゃとしか考えられず、他の全ての思考が霞んでいた。
それま打ち出すしか出来なかった霊力をバーナーの炎の様に成型し、水の属性を纏わせる。そのままチェーンソーの様に刃を動かして……と必死にイメージを維持するのに集中し――。
「よし、切れた!」
カランと鎖がまず床に落ち、続けて南京錠がゴトンと落ちた――瞬間、勢いよくドアが開いた。勿論私は何も触ってない。
空いた先に見えたのは男達が並び、その中の一人がこちらに向けて拳を突きだし殴りかかってくる瞬間だった。
とてもじゃないけど避けられない、と腕で顔と頭を庇おうと反射で体が動くけど間に合わない。
これは殴られる、と痛みを想像してつい目を閉じた。
「おい馬鹿、気を付けろ!」
しかしその拳が届くより前に、蒼月が私の襟首を引いて除けて自分が前に出て逆に男を殴り飛ばした。
農作業をしていて体力はありそうな男達だが、戦闘については所詮素人。プロには敵わず吹っ飛んだ。
「優菜、大丈夫か!?」
その隙に草治さんが優菜の元へと駆け寄り、床に倒れていた彼女を抱き起こす。
その間に残りの男も順にのしていく蒼月さん。
そして私は華乃さんに庇われながら小屋の外でその一部始終を眺めていた。
一人、また一人と蒼月さんに倒されていく。全ての男達が床に伸びたのを見届けてから、私も小屋の中に入り優菜ちゃんに近付いた。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった
ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」
15歳の春。
念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。
「隊長とか面倒くさいんですけど」
S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは……
「部下は美女揃いだぞ?」
「やらせていただきます!」
こうして俺は仕方なく隊長となった。
渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。
女騎士二人は17歳。
もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。
「あの……みんな年上なんですが」
「だが美人揃いだぞ?」
「がんばります!」
とは言ったものの。
俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?
と思っていた翌日の朝。
実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた!
★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。
※2023年11月25日に書籍が発売しています!
イラストレーターはiltusa先生です!
※コミカライズも進行中!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる