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第二章 不穏の気配

壱話 修行の成果

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    これは……なつかれたな……。
    大人しいイメージのあった優菜ちゃんだけど、正体バレして以来、他に人目がなければ凄くお喋りな子になった。歩きながらずっとお喋りしている。
    中にはためになるお話もあったりして楽しいから良いんだけど。ちょっと……いやだいぶ当初の印象とは違う子になっていた。
    だけどやっぱり村に下りると当初の静かで大人しい少女に戻っちゃう。
    ――私はこの世界の事にはまだまだ疎いから、安易に考え過ぎだとは言えない。何より彼ら二人以外の吸血鬼を知らないから。
    せめて私は兄妹の信頼は裏切らない様にしようと思う。
   ――で、だ。
    優菜ちゃんの事は今はそれで良い事にして置いておいて、修行の進み具合はと言えば。
    元々魔法が使える組は……
    「行くよ、蒼月!    木生火!    種爆弾!」
    優菜ちゃんが魔法でヤシの実みたいなのを出して敵へと飛ばす。それに蒼月さんが火魔法を重ねると、実が弾けて、豆まきの豆サイズの大量の種が火を纏ったまま敵を連続攻撃する。
    小さな小動物の群れ相手にも有効な攻撃だ。
    「ふふふ、これで夕飯に兎肉が食べられるわ!」
    そして私は。
    「ふ、ファイヤーボール!」
     ……以前の霊力弾に属性の衣を纏わせるまでは成功したけど。まだ一つずつ、それも一つ発動させるのに時間がかかるという、何と言うか織田信長時代の火縄銃レベルに実戦投入には厳しい。
    あの鉄砲隊みたく人数がいて柵とかあって……とかならまだしも、ね。
    『ファイヤーボール』と格好つけて言ってみても、ボールのサイズがサッカーやバスケットボールみたいな迫力ある物ではなくて、ピンポン玉サイズなんだもん。……それでも優菜ちゃんの種爆弾みたく連射できるならまだしも一発ずつじゃあ……ね。
   「でも、五属性全部使えるのは陽彰だけです!    それに、毎日少しずつでも出来る事が増えてるんです。大丈夫、頑張りましょう!」
    「ははは、そうだな。火魔法しか使えない蒼月は、それ一つ使いこなすのに年単位かけたんだもんな?    そんな一日二日で出来る様になるなんて誰だって思わないよ」
   「……お前ら兄妹の出来が良すぎるんだよ、俺は平均だ!」
    草治さんに反論した蒼月さんはすかさず反論した後、「だから焦る必要なんざ全く無いからな!」と、リポDのCMに出られそうな笑みを浮かべた。
    だから。
    ――努力は続けていたけれど、ほんの少しだけ私は気を緩めた。……緩めてしまった。
    それ自体は悪いことじゃない、むしろ良い事だと思ってる。
    でも、どうしてあともう数日待てなかったんだ、とあの日の事を後から後悔することになる。
    まさに後悔先に立たず――その典型例がその数日後に起こるなんて、この時は全く考えていなかったんだから。
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